令和7年度税理士試験合格発表を受けて今後の学習アドバイス【消費税法】


加藤 久也(税理士/名城大学大学院非常勤講師)

【編集部より】
さる11月28日(金)、令和7年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!

はじめに

2025年11月28日に令和7年度税理士試験の合格発表がありました。合格された712名のみなさん、おめでとうございます。

残念な結果に終わったみなさんへ、本年度の試験を振り返るとともに、来年度の試験で合格するために今後の学習についてアドバイスしたいと思います。

1.令和7年度の合格発表について

本年度、消費税法の合格率は10.1%で、昨年度より0.2%減少しました。過去10年間で最低の合格率を更新しました。最高の合格率だった平成29年度(第67回)の13.3%と比較すると、3%以上低い合格率となっています。

合格率が低いとはいえ、合格者数は712名で、税法科目の中ではいちばん多いこと、また、合格率が安定していることを考慮すると、合格しづらいということではなく、合格点に達すれば順当に合格することを意味すると考えられます。そしてこの傾向は、今後も継続するものと考えられます。

本年度の試験問題は、第一問では、基本的な項目について問われ、解答しやすい出題だったと思います。一方、第二問は、1問体制となったものの依然として問題量が多く、納付税額まで解答を終えることが困難な分量の出題でした。特に第二問において、問題文を一意に理解できない箇所があったものの、適切な時間配分により解答し、基本項目について着実に正答を重ねることができた受験生が合格したものと思われます。

2.今から始める受験対策

令和8年度税理士試験へのカウントダウンはすでに始まりました。合格発表の11月28日から来年8月5日まで250日で、残された日は、1日1日減っていきます。今日の1日も試験前日の1日も同じ1日です。さあ、気持ちを切り替えて、今から試験勉強をスタートしましょう。

(1)理論対策

条文の単なる暗記ではなく理解することが重要です。では、条文の暗記は不要かといえば、そんなことはありません。暗記していなければ、解答を正しく速く記述することができないからです。理論暗記が足りなかった、甘かったとの反省を抱いている人も多いと思います。そう思うのであれば、今すぐ理論暗記を始めてください。覚えようと思えば覚えられます。今回が最後の理論暗記となるように完璧な暗記を目指し、努力してください。消費税法の理論問題は、1日1問暗記していけば、1ヵ月で1回転できます。忘れることを恐れずガンガン覚えましょう。

また、応用理論対策については、過去問や問題集の問題文を読み、解答の骨子を書きだした後で答え合わせする方法で効率よく理解を深めるようにしてください。このトレーニングをすることで、個別理論問題についても解答のポイントがつかめるようになり、さらに計算問題を解答するときにも役立つようになります。

(2)計算対策

基本的な総合計算問題集を年内に1回転することで計算問題を解答する勘を取り戻してください。消費税法の計算項目に難しいものはありません。練習を重ねることで合格レベルに達することができますから、しっかり練習してください。満点が取れるようになったら、制限時間の8割から9割の時間(例えば、75分問題を60分で解答)でも満点が取れるように練習しましょう。

また、個別問題集の解答も早めに一回り終わらせていきましょう。そのときに、スラスラと解ける問題と解けない問題を仕分けしてください。間違ったり、迷ったりする問題があなたの弱点です。対策していくべき箇所を明らかにすることで、特に直前期において時間の節約につながります。

(3)年末年始休暇には

年末年始の比較的時間が取れる時期には、消費税法基本通達や国税庁が公表しているQ&Aなどの情報に目を通すことをお勧めします。理論問題の事例や、計算問題の出題内容の中にはこれらの中から出題されているものが多くあります。ボリュームがありますが、特にQ&Aには、条文の説明など同じことが繰り返し掲載されている箇所があるので、効率よく読みましょう。また、条文の引用など、事例問題を解答する上で参考となる言い回しもあります。

国税庁Q&Aの効果的な活用法と、読んでおきたい消費税法Q&Aベスト3

おわりに

消費税法の受験対策として大切なことは、基本的な知識を確実に身につけることです。適格請求書等保存方式導入に伴う経過措置については、実務上も判断に迷う場面が多く、令和8年度税理士試験においても出題されることが予想されます。しかし、消費税法の基本的な構造は変わりませんから、基本項目について、繰り返し訓練することで確実に解答できるようにすることが大切です。理論暗記の正確性と計算問題の解答能力をアップしていきながら、条文の意味や内容について理解を深める復習もしていくようにするとよいでしょう。

今後の試験勉強に対する心構えを最後にお話しします。今の悔しさを忘れずに挑戦を続けましょう。特にわずかな点差で不合格となった方は、合格までのあと数点をどう取るかが課題です。今年その数点を取れなかった原因について真摯に振り返ってみてください。不合格の原因は必ず自身の中にあります。この時期に反省すべきことは反省したうえで、いかに気持ちを切り替えて新たなスタートを切るかが、来年の合否を左右します。あなたの努力があなたを裏切ることはありません。あと数ヵ月消費税法の勉強時間を与えられたと思い、覚悟を決めて最善を尽くしてください。来年、あなたからの合格の報告を楽しみにしています。

<執筆者紹介>
加藤 久也
(かとう・ひさや)
税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒業。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。


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