【連載:第3回】米国年次報告書(10-K)から学ぶ、実務で使える会計英語フレーズ〜名詞編


お絵描き会計士aki@USCPA

【編集部より】
将来は「会計×英語」を武器にキャリアを積みたいと考える人も多いのではないでしょうか。また、すでに実務で英語を使う仕事が増えてきたという受験生もいるかもしれません。
そこで、本連載では全4回にわたり、重工プラント大手企業で働くUSCPA(米国公認会計士)のakiさん(@zaku_accounting)に、米国年次報告書(10-K)を題材として「実務で使える会計英語フレーズ」を教えて頂きます。
<各回テーマ
・第1回:年次報告書(10-K)の概要
・第2回:頻出の会計英語フレーズ10選【動詞編】
・第3回:頻出の会計英語フレーズ10選【名詞編】
・第4回:頻出の会計英語フレーズ10選【形容詞・副詞編】

実務で使える会計英語フレーズ【名詞編】10選

第2回では「実務で使える会計英語フレーズ【動詞編】10選」ということで、米国年次報告書(10-K)を参考に頻出動詞に関連するフレーズをご紹介しました。

第3回は名詞編です。

「会計で扱う名詞=勘定科目」と思う方もいると思います。英語での会計実務上、勘定科目を覚えることはもちろん必要ですが、それ以外にもさまざまな名詞が出てきます。

今回は「勘定科目+αの名詞」に着目して、会計実務に役立つ英語表現を10個ピックアップしました。それでは【名詞編】をお届けします。

なお、各フレーズについては学習用に筆者にて原文を一部変更、簡略化しています。

①Revenue is measured based on the amount of consideration that we expect to receive.

‟収益は当社が受け取ると予想される対価の金額に基づいて測定される。”

会計に「金額」という表現はつきもの。勘定科目と組み合わせて「the amount(s) of 〇〇」と使うことが多いです。例えば「the amounts of assets and liabilities」という感じ。

ちなみに、amountに‟s”をつけるかの考え方は以下のとおりです。
・「amount」”一つ”あるいは”特定”の勘定科目や対象の金額を指す場合
・「amounts」”複数”の勘定科目や対象の金額を指す場合

amount「金額」

②The preparation of financial statements in conformity with GAAP requires estimates and assumptions.

‟GAAPに準拠した財務諸表の作成には見積りと仮定が必要となる。”

「財務諸表の作成」って日本語でもよく言いますよね。この「作成」は「preparation」を使うのが会計では一般的。
動詞の場合、「prepare financial statements」で「財務諸表を作成する」となります。

preparation「(財務諸表の)作成」

③All significant intercompany balances and transactions have been eliminated

‟連結会社間の重要な債権債務残高と取引はすべて消去している。”

連結財務諸表(consolidated financial statements)では必ずと言っていいほど、このような表現が使われます。

そもそも会計とは企業が行う「取引」を数値化する考え方です。「transaction」を覚えておくだけで、企業活動で発生するさまざまな事象を表すことができるので非常に便利です。

transaction「取引」

④The amount of the liability is based on our best estimate.

‟その負債の金額は当社の最善の見積りに基づいている。”

会計処理では見積りで計上することも多いですよね。見積りと同じような意味では「仮定(assumption)」もよく使われます。こちらも合わせて押さえておきましょう。

estimate「見積り」

⑤Revenue from subscription services is recognized over the subscription period.

‟サブスクリプションからの収益はサブスクリプション期間にわたって認識される。”

会計は期間損益計算を行うので、この「期間」という言葉は会計英語では頻出です。
「over ○○ period」 で「〇〇期間にわたって」、「in the period in which 〇〇 occur」で「〇〇が発生する期間で」となります。

period「期間」

⑥Actual results may differ materially from forward-looking statements.

‟実績は将来の見通しから大きく異なる場合がある。”

「実績」は「result」「actual result」「actual」などで表現されます。「results of operations and cash flows」で「損益およびキャッシュフローの実績」となります。

result「実績、成績、業績」

⑦Investment priority changes or budget cuts could result in reductions and/or delays of our investments.

‟投資の優先順位の変更や予算削減により、投資の削減や遅延が生じる可能性がある。”

実績だけでなく予算も覚えておきましょう。予算管理は英語で「budget control」です。予実分析(plan vs actual analysis)では「予算(budget)」ではなく「計画(plan)」もよく使われます。

budget「予算」

⑧COVID-19 had material impacts on our results of operations.

‟新型コロナウィルス感染症は当社の業績に重大な影響を及ぼした。”

会社の業績はインフレ、金利上昇、戦争、パンデミックなど外部要因から影響を受けますよね。リスク要因や業績の説明では「影響」という単語は頻出。
イディオムとして「have an impact on〜:〜に影響を及ぼす」で覚えてしましょう!

impact「影響」

⑨Working capital has been improved by negotiating payment terms with customers and vendors.

‟顧客およびベンダーとの支払条件の交渉により運転資本が改善している。”

どちらかというとファイナンス寄りの言葉かもしれませんが、実務では頻出です。ちなみに「支払期日」は「due date」といいます。こちらも合わせて覚えておいてください!

payment term「支払条件」

⑩Our backlog at December 31 was as follows.

‟当社の12月末時点の受注残は以下の通りです。”

「backlog」は本来「やり残し」という意味ですが、会計実務上は「受注残」を意味します。受注残とは「注文に対する未売上残高」を指し、将来の仕事量のバロメーターとなリます。
製造業や建設業などに携わる方は、頻出なのでぜひ覚えてくださいね。

backlog「受注残」

以上、会計実務で使える名詞10選でした。

勘定科目にプラスして覚えると表現の幅が広がる名詞ばかりなので、ぜひ役立ててください!

【参考】
Amazon, Form 10-K, 2022
Boeing, Form 10-K, 2022

次回は「形容詞・副詞編」をお届け予定です。どうぞお楽しみに!

【執筆者紹介】

お絵描き会計士aki@USCPA

米国公認会計士(ワシントン州)。
重工プラント大手経理にて連結決算(IFRS)、FP&A、M&Aなどに従事。「イラストの力で会計をもっと楽しく、わかりやすく」をモットーに、独自イラストを使って会計ファイナンスや英文会計を解説するブログを運営。プライベートでは3児のパパ。
・Twitter(@zaku_accounting
・ブログ「イラスト会計教室」


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