春から始めて、今年の税理士試験「消費税法」に合格する勉強法


【編集部より】
新年度を目前に、「資格を取りたい!」と考える人も増える季節。「春から始めて、なんとか今年8月の税理士試験に間に合わせたい!」と思う人もいるのではないでしょうか。しかし、税理士試験の場合、一般的には受験予定の前年9月や受験年1月がスタンダードな学習スタート時期だと思われます。
では、3月開講のように春から始めて短期合格を目指す場合には、どういった点を工夫して勉強する必要があるでしょうか。
そこで、資格の大原講師の服部真史先生(消費税法担当)にお話を伺いました。春から始めた人も、これから追い上げる人も、ぜひ参考にしてください。

8月本試験まで約5カ月、間に合う?

編集部 今から今年8月の本試験を目指すとなると、学習期間がかなり短期になりますね。初学者でも合格を目指せるものでしょうか。

服部先生 春から始めて今年の本試験を目指す講座として、資格の大原では3月開講講座があります。科目は消費税法と国税徴収法で、これらは初学者の方が合格を目指すという前提でカリキュラムを構成しています。

本試験までは約5カ月。文字通り、短期で合格を目指すことになるので、「粘り強さ」と「継続力」がとても大切になりますね。

編集部 消費税法は税法科目の中でも受験者数が多い人気科目ですね。はじめて税法を学ぶという人も多いのではないでしょうか。

服部先生 そうですね。消費税は私たちの日常生活において身近な税金なので、消費税法の受験生には、「税の学習をすること自体がはじめて」という方もいらっしゃいます。

教室講義は授業時間が「3時間」ですが、短期合格を目指す3月開講の講座では同じ内容を、時間の達人シリーズ(WEB)にて「1時間」で受講していただくようになっています。講義時間は3分の1ですが、学習内容に差はありません。視聴時間をコンパクトにすることで、復習時間を多くとっていただける学習方法です。

授業を週2回分のペースで受けて、宿題や復習を確実に行うという、学習ペースをきちんと守ることができれば十分に本試験で戦える実力が身につくはずです。

編集部 目安として、1日どれくらいの勉強時間を確保できると理想的でしょうか。

服部先生 受講生の皆様のお話を聞いていると、平日は大体2~3時間、土・日曜日が5~7時間程度の学習時間をとれるという方が多いですね。

働きながら勉強をする方がほとんどなので、たとえば、平日の通勤時間や昼休憩などのスキマ時間を活用して税法の理論暗記を行い、休日は机に向かえるまとまった学習時間を確保して、計算問題を解くような学習をするという取り組み方をよくアドバイスしています。

編集部 スキマ時間を活用すれば意外とできそうな気もしますね。

服部先生 とくに、理論暗記は必ず毎日行う必要があり、どうしても「忘れては覚え直し、忘れては覚え直し」という地道な学習の繰り返しになります。なので、それだけは絶対に10分でも20分でもいいので、「継続すること」を最優先にしてほしいです。
そういった意味では、税理士試験の受験生の方に一番求められる素質は、「継続力」ではないかとも思います。

短期合格を目指すには、どうする?

編集部 消費税法における短期合格のコツは何でしょうか。

服部先生 消費税法の場合、計算対策のインプット量が理論対策に比べると比較的少ないので、計算は早い段階で合格レベルに到達する方も多いです。

一方で、理論対策では、法律用語を何も見ずに書けるようになるまで道のりが長く、どうしても合格レベルに間に合わない方がいらっしゃいます。

とくに短期合格を目指す場合、「宿題自体が回せない」というお悩みが多いので、完全に消化してから次に進もうとすると、いつまでたっても出だしでつまずいたままになってしまいます。

すると、復習や回転ができず、良くない循環に陥ってしまうので、そこは割り切って、1回1回の精度は粗くて、たとえフワフワした状態でも、まずは「全体を必ず回転する、ひたすら繰り返すこと」を意識するとよいでしょう。

たとえば、消費税法の場合、理論で52題(『消費税 理論サブノート』)あるうち、1週間で2題覚えるなら、完全に覚えきれなくてもよいので、必ず最初から最後までざっと全体を確認して、「どのような内容か、規定の適用に必要な要件は何か」などの内容把握をしてほしいと、よく受講生の皆様にもお伝えしています。

編集部 全体を見ることが大切なのですね。

服部先生 とくに短期合格を目指すなら、ある程度は割り切って「次に進もう!」という馬力やパワーが必要です。学習を進めるなかで、不安なところには付せんをつけるなどして、最後の最後でそれらをもう一度固め直すようにするとよいと思います。

もし講義についてこられなくなってしまうと、不安が募ったり、やる気自体がなくなったりしてしまうので、学習量に体を慣らしていくようなスタンスで取り組むイメージがよいのではないでしょうか。

編集部 学習期間が短いから論点が絞られているのではと淡い期待をしてしまいますが、そういうわけではないんですね。

服部先生 そうですね。どうしても学習論点を絞って合格できるような試験ではないので…。自分の力で多少無理にでも進めてみる、転がしてみるというところがあってもよいと思います。

3月開講の消費税法を受講する方は、会計科目からのステップアップの方や、「とにかく1科目でも合格科目を増やしたい」という方が多い印象があります。

基本的に、消費税法は、日商簿記3級程度の知識があれば始められるので、前提知識の有無で勉強法が変わるということもありません。一方で、会計科目の学習経験者の方が消費税法の学習を始めた場合、「覚えなければいけないものが多い」と率直に感じるでしょう。何回もひたすら同じ文章を読んで、少しずつ頭の中に入れていく、という地道な暗記に対してギャップを感じる方もいると思います。

だからこそ、「全体を万遍なく見る、なるべく得意・不得意の偏りが生じないようにする」ということを心がける必要性は、最近の試験傾向を見ていても強く感じます。

編集部 少し脱線しますが、ちょうど今、会計業界で働く人は超繁忙期で、9月や1月から学習スタートした方も勉強時間がなかなか確保できていないと思います。そういった場合に、3月からリセットして受け直すというやり方もあるのでしょうか。

服部先生 それはあまりオススメしていません。というのも、今、目の前に現在進行中の講義があるはずなので、まずはそこに合流することを優先したほうがよいです。自分の中で学習ペースが確立できていなければ、もし仮に講座を振り替えたとしても同じことの繰り返しになる可能性が高いからです。

大抵の場合、学習が遅れている原因の一つとして、学習ペースが曖昧になっていることが考えられます。なので、まずは授業を受ける、継続するという学習ペースを作ることに、自分自身の体を慣らしていくことから始めるとよいのではないかと思います。遅れている方こそ、授業を受けるという1歩を、勇気をもって踏み出してほしいですね。

インプット・アウトプット、理論・計算のバランスは?

編集部 春からスタートした場合、インプットとアウトプットはどういったバランスで取り組むといいでしょうか。

服部先生 とくに短期合格を目指す場合は、学習のインプット期にどれだけ知識を確実に吸収できるかが大事になります。カリキュラムとしては、3~5月いっぱいまでがインプット、本試験前2ヵ月の6~7月に総復習中心の計画で、答練や模試をどんどん受けてアウトプットをするという形になります。なので、今から5月末までの2カ月間でどれだけ消費税の知識を確実に定着できるかが勝負どころです。

学習ペースを早い段階で決めて、できれば授業を視聴する曜日・時間帯まで決めて、とくに5月末までは絶対にそのペースを崩さないということを強く意識していただきたいですね。

アウトプットについても、答案提出などを目安に学習ペースを必ず守ることです。たとえ答案が書けなくても、思い切って提出して、添削を受け、そのうえで自分ができていない部分を把握するというのが、短期合格のためには必要なことだと思います。

「学習ペースを守る」ことは3月開講に限ったことではありませんが、とくに短期合格を目指すからには、強い覚悟と勇気をもって取り組んでほしいです。

編集部 理論と計算はどういった比率で勉強するとよいでしょうか。

服部先生 試験問題自体は単純な点数だけみれば理論50:計算50が満点なので半々ですが、学習では、法律用語を覚えることに大半の時間を費やすことになるので、初めは理論8:計算2が目安です。この配分でも、計算のインプットは比較的早い段階の5月頃には一通り終わるので、復習時間を2ヵ月確保できます。

それに比べて、理論のインプットは6月もまだ続くので、「どれだけペースを落とさないようにするか」がポイントになります。

そして、最後の7月頃に、ようやく理論6:計算4になって、覚える・考える・理解するということに慣れてくる時期になります。この残り1カ月で本試験に向けて仕上げていくことになりますね。

「諦めないこと」を人一倍強く意識する

編集部 3月開講クラスの場合、9月から勉強を始めている受験生に追いつくことを目指して勉強を進めるのでしょうか。

服部先生 カリキュラム上、3月開講クラスは完全に独立しています。なので、実は、最後の最後まで他の受講生の方々と同じになるようなタイミングはありません。

模試中心になるタイミングが6月中旬頃ですが、模試の難易度としては、年内や1月に学習をスタートした受講生の皆様のほうが難しい内容にチャレンジしているので、最終ゴールである本試験を見据えて3月開講クラス独自のペースで進めていくことになります。

なので、本試験会場で、試験監督の方から「参考教材をしまいなさい」という指示が入るその瞬間まで一生懸命に覚え続けて、あきらめずに問題を解き続ければ、必ず経験値が蓄積されて、最後の最後まで伸び続けるはずです。

だからこそ、授業を受けることを「諦めない」。
答練の答案を出すことを「諦めない」。
問題を最後まで読むことを「諦めない」。

これらをどの受験生の方よりも人一倍強く意識をしてほしいですね。

編集部 短期合格を目指すからこその向き合い方があるということですね。

服部先生 「短い期間で、年内や1月から学習を始めている方々を追い抜かすぞ!」という勢いはやはり必要だと思います。実際、受講生の皆様からのパワーや覇気というのは、答案用紙からも非常に強く感じます。

実際に同じくらいの知識でも、空欄を安易に作ってしまう方と、結論と理由を端的にでも一生懸命に答えようとしている方とでは2~3点は違ってきますし、それが最後の最後には1~2点で合格ラインを越えられるかという結果に影響することにもなります。

法律用語を覚えて記述する問題は、どんなにわからなくても、結論と理由くらいは最低限頑張って何か書こうということはよく受講生の皆様にもお伝えしています。

短期合格を目指す方こそ、安直に諦めてしまわないというところは強く意識していただきたいですね。働きながら勉強する方が多いので、どうしても時間がなくて、言い訳を簡単に作ることができてしまいますが、そこに逃げ込まないように心がけてほしいです。

より高く、強く、モチベーションを保ち続けよう!

編集部 短期間だからこそ、モチベーションをより高く、強く、継続して維持する必要があるように思います。そのあたりはいかがでしょうか。

服部先生 私がよくお話しするのが、モチベーションが下がってきたときには、必ず「今、自分のできるところは何か。長所は何か」を見つけるということです。

たとえば、「理論はわりと覚えられている」、「計算はわりと時間内に解けている、スピードはそんなに遅いほうではないな」、ということや、他にも消費税法の場合は事例問題という作文の要素が絡むものがあるので、「作文の問題は端的に書くくらいだったらできているな」といったようなことです。

落ち込んでいると、どうしても自分のダメなところばかりを考えてしまうことが多いので、「最低限これはできている」という純粋な自分の努力を確認して、「この論点ならできる」というテリトリーを広げるイメージです。

そうして、自分の成長を感じながら、短期合格を目指していただきたいなと考えています。

編集部 短期合格を目指すからこそ、できるだけ高くモチベーションを保ち続けなければならない、気が抜けないんですね。

服部先生 1年で勉強する内容を、本当に短い期間で、早いペースで進み、詰め込むような形にはなってしまうので、正直なところ、気持ち的には一番負担が大きいのではないかと思います。

その分、メンタルケアも心がけて、もし落ち込んできてしまったときは、「できているもの」「あるもの」を探すということを意識して、本試験まで駆け抜けていただきたいです!

【お話を聞いた人】
服部 真史(はっとり・まさし)

資格の大原 税理士講座講師
税法のプロフェッショナルとしての仕事に魅力を感じ、講師業を志す。入社後は消費税法担当として、講義及び教材作成を中心に従事。現在は令和5年10月1日より導入のインボイス制度について、本校研究チームの中心メンバーとしても活躍中。一人一人に寄り添った受験指導で受講生様からの信頼も厚く、緻密な過去問研究から裏付けされた受験対策に定評がある。
資格の大原 税理士講座ホームページ


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