【税理士試験】はじめての税法科目の学び方Q&A


東京CPA会計学院 志水 大介

2022年を迎えて日も経ち、皆様いかがお過ごしでしょうか。

結果発表を受け、2022年より新たに税法科目にチャレンジしている方もいることと思いますが、今回は、そういった方を対象に、税法科目にチャレンジするうえでのポイントをQ&A形式でお伝えしたいと思います。

私自身の経験を皆様にお伝えし、はじめて税法科目にチャレンジする方のお力添えすることができれば幸いです。

※ 私が学習経験のある「法人税法」・「所得税法」・「相続税法」・「消費税法」を前提に記事を執筆しております。ご了承ください。

試験問題はどのように出題される?

税法科目の試験問題はどのような形で出題されますか?

税法科目の理論問題には、様々な出題形式があります。各税法の規定を解答する問題、具体的な事例に対して考えられる取扱いを解答する問題、各規定に共通するワードに関連する規定を列挙する問題、各規定の相違点を解答する問題など様々です。

また、解答にあたっては、根拠規定(条文)に沿った解答が評価されやすいこともあり、どの受験生も理論対策のテキスト集などを使用し、根拠規定に近い解答が作成できるようにしています。

税法科目の計算問題も、理論問題と同様に様々な出題形式がありますが、基本的には税額を求めることが中心となります。どの税法科目もボリュームの多い問題が多く、また、細かな取扱いも出題されます。作問者によっても難易度にバラつきがありますので、どの受験生もまずは、基本的な内容を正確に解答することを心掛けています。

税法科目と会計科目の違いは?

税法科目と会計科目の違いは何ですか?

税法科目は、実社会で多くの方に適用のある「法律」を学ぶため、どうしても会計科目とは違いが出てきます。

たとえば理論問題は、会計科目の場合、取扱いの背景(理由)をキーワードとともに解答するため、「考え方」に比重が置かれている印象です。

対して税法科目の場合、規定そのものを解答する場合や、与えられた事例に対して結果としてどう取り扱うか、根拠規定等を踏まえて解答していくことから、「内容の理解」はもちろん、「取扱いを規定にあてはめて正確に解答する力」や「各規定間の横断的な理解力」が試されます。

また、会計科目の場合、出題者が解答範囲の指定を細かくしている印象ですが、税法科目の場合は、問題から制限時間の中でどのくらいの量を解答すべきか考えて解答作成を行わなければならないため、「解答作成能力」が会計科目に比べてより一層試される印象があります。

その他にも、税法科目は、「法律」である以上、「数値基準」が細かく設定され、選択制の規定は「納税者にとって有利となるような計算」を行わなければならないなど、会計科目にない「知識量」や「判断力」が必要となります。

税法は、政策的な配慮から規定が創設されることも多々あり、そういった点も会計科目にはない違いです。

理論学習と計算学習のポイントは?

ズバリ、理論学習と計算学習のポイントは何ですか?

理論学習は、どうしても根拠規定を解答することに意識が行き過ぎてしまい、単に覚えるだけになってしまいがちの方が多くいらっしゃいます。

しかし、膨大な量がある根拠規定を覚えることは不可能であり、仮に覚えたとしても、問われていることがわかるほどに内容を理解していなければ、解答を作成することができません。

解答作成能力が問われる理論問題であるからこそ、下記の手順で理論学習をしていただき、「理解」→「定着」→「応用」と発展させていくことをおすすめします。

「理解重視で各内容を作文できるようにする」
 ↓
「条文に近い形に近づける」
 ↓
「反復練習する」
 ↓
「計算問題とリンクさせて規定間のつながりを意識する」

計算学習は、まずは正確に基本計算をできるようにすることが第一優先です。

ただ、その基本計算も、ただやみくもに練習するだけでは忘れてしまうので、常に全体像を意識しながら、取扱いの背景(理由)を考えて学習することをおすすめします。

そうすることで、基本計算を忘れてしまったときでも、意識したことがキッカケとなって思い出すことができます。

そして、基本計算が正確にできるようになったら、総合問題などを通して、横断的な学習及び反復練習をすることで、税法の実力を養うことができます。

税法科目は会計科目と異なり、理論問題で取扱いそのものが問われるわけですから、計算学習の内容が、そのまま理論学習にも活きてきます。

ですから、「理論学習」と「計算学習」は決して切り離さず、常に両側から意識することで効率よく学習することができます。

学習スケジュールのイメージは?

学習スケジュールのイメージを教えてください。

税法科目は、学習量が膨大であるため、税理士試験終了後の9月から講義をスタートする場合が多いです。

その場合には、下記のようなスケジュールで学習を進めていきます。

9月~12月:税額の基本的な計算方法(全体像)の学習

1月~4月:9月~12月の学習項目を前提とした応用論点の学習

5月:細目論点、税制改正の学習

6月~:答案練習、直前対策

9月~12月の基本的な計算方法の学習が一番大事ではありますが、1月~5月も重要なところは多くあり、なかなか息の抜けない形で学習は進んでいきます。

また、税制改正は、チェックしていないと「流行遅れ」の状態になってしまうため、常にアンテナを張り、「流行遅れ」にならないようにしてほしいところです。

序盤は計算学習が中心となっていきますが、ある程度の実力がついてきたら、その土台を生かして理論学習にも力をいれ、6月から追い込みをかけ、8月2日(火)から始まる税理士試験に臨める状態を作ることが理想です。

さいごに

税法科目の学び方の最大のポイントは、知的好奇心を働かせ、楽しみながら考えて学習することです。

長丁場の税理士試験で、モチベーションを保つことは大変ですが、そのなかでいかに税法の学びを楽しむことができるか、そして税法をものにしようとする気持ちが強いかどうかが合否にも表れてきます。

今回の記事が税法科目にはじめてチャレンジする方のお力になれば幸いです。

【執筆者紹介】
志水 大介(しみず・だいすけ)
東京CPA会計学院講師(所得税法)
平成5年長野県飯田市生まれ。商業高校を卒業後、東京CPA会計学院で「なぜ?」「どうして?」を考える楽しさを知り、平成26年に税理士試験合格(簿・財・所・法・消)。
背景を大切にした「暗記に頼らない」楽しい所得税法の講義がモットー。

※本記事は「会計人コース」2020年2月号掲載「はじめての税法科目の学び方Q&A」の一部を再編集したものです。


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