【連載】<税理士試験簿記論&財務諸表論> 敏腕講師・かえる先生の独学合格ロードマップ2023(第6回)


諸角 崇順

【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!

繁忙期は、仕事を頑張っている自分を褒める!

みなさん、こんにちは! この記事が配信されるこの時期、特に会計事務所にお勤めの方は、ありえないぐらいの業務量になっていると思います。

長年、大手資格学校で講師を務めた経験から言うと、この時期にドロップアウト(受験からの撤退)する方が非常に多くなります。
仕事が繁忙期を迎え、日々の勉強時間が減る。それは、遊んだから減ったのではありません。
仕事(残業や休日出勤)で勉強時間が減ったにもかかわらず、当初の勉強スケジュールをほとんどこなせなかった自分を責めてしまうからです。

もし、今、この瞬間にも、気持ちが切れかかっている方がいれば、受験を諦めるのは少し待ってください。世の中の道理として、お給料をいただいている以上、そちら(仕事)を優先するのは当たり前です。決して、遊んで勉強時間を減らしてしまったわけではありません。
社会人として当たり前の義務を果たした結果、それが時期的に繁忙期であったというだけで、勉強時間が減ってしまったことは、なんら責められることではありません。
とにかく、この時期は、体調に気をつけて受験に対する気持ちだけは切らさない。これが重要です。

「残業でヘトヘトになって、今日は1分も勉強できなかった・・・」
別にいいじゃないですか。繁忙期は、仕事をがんばっている自分を褒めてあげてください。なので、たとえ勉強時間が激減しても、自分を責めず、だけど、受験への気持ちは切らさないようにすることだけお願いします。

また、この時期は環境の大きな変化(就職・転職など)を控えている受験生もいると思います。そのような方は、新しい環境下でどれぐらいの勉強時間が確保できるのか、なかなか先が見通せず不安になることでしょう。

ただ、こればかりは皆さんが悩んでもどうなるものでもありません。新しい職場にある程度の希望を伝えてあるのであれば、環境の変化に対する漫然とした不安はいったん脇に置いて、日々を過ごしていただければと思います。

それでは、科目別のアドバイスをします。

簿記論・財務諸表論共通―過去問は勉強の進捗度を測るツール

先月の記事で過去問について触れたところ、「過去問の活用方法」についてご質問があったので、ここで回答しようと思います。
ただし、以下は完全に主観です。もし考え方が合わないなと感じたら無視していただいて結構です。

私は、過去問を新しい知識を仕入れるために利用したり、何回も解き直して解答のスピードアップをはかったりするために利用するものではないと考えています。つまり、「教材」として捉える必要はないということです。

資格学校の教材や市販教材は、過去問を徹底的に分析し、何度も繰り返し問われている、いわゆる良問をアレンジして活用しています。逆に言えば、繰り返し問われることのなかった論点や問題文の解釈に複数の見解が出てしまうようないわゆる悪問は除外しています。なので、資格学校の教材や市販教材を利用して学習してさえいれば、膨大な年数分の過去問の重要な論点は全て網羅できてしまうのです。

しかし、過去問を「教材」として利用すると、いわゆる悪問の解説や、今後おそらく出題されないような特殊論点の解説までも、膨大な時間をかけて理解するという作業を行うことになります。

ところが、上述したように、資格学校の教材や市販教材は、このような悪問等は基本的に収録していません。それがどういう意味かというと、独学の方が過去問における悪問等の解説を理解できなかった場合、それを調べる手段がない、ということです。
受験生として、触れた問題については理解して克服したい、と思うはずですが、それが適わない。そして、それが重なると不安だけが増えていく・・・。

私のオススメする過去問の活用法は、「この時期からの勉強の進捗度を測るツール」として利用することです。具体的には、3月は5年前の過去問を、4月は4年前の過去問を、そして7月は昨年の過去問をというように、月イチのペースで過去問を解くことで、過去問の解説に載っているボーダー点まで、あとどれぐらいの得点力が必要なのかを測るツールとして利用するのです。徐々に本試験合格レベルの実力がついていっていることが実感できますよ!

簿記論―繁忙期の今は、勉強できたことを事後報告

学生の受験生などはこの時期、比較的時間があるかもしれませんが、社会人で特に繁忙期の方は、とにかく気持ちを切らさないことだけを優先してください。簿記論はどうしても勉強するにあたり『机』が必要となるので、繁忙期の勉強時間が激減してしまうことになります(財務諸表論は理論があるので、行き帰りの電車内などで多少は勉強時間を確保できます)。

なので、簿記論に関して、繁忙期だけは勉強『時間』のノルマは不要です。「今日はこれだけやるぞ」と事前に計画を立てるのではなく、就寝前に「今日はこれだけだけどちゃんとやったよ」というような、自分自身に対する事後報告の形で大丈夫です。

そして、まとまった勉強時間の確保が望めない以上、新しい問題には手をつけないこと(特に新しい総合問題)。出来が悪かったときの復習時間が確保できない可能性が高くなります。今までに解いてきた個別問題の復習を中心に取り組みましょう。

1週間あたりの勉強時間の目安:16時間前後 
 ※ただし、繁忙期の方は自由に設定してください。

財務諸表論(計算)―解くなら個別問題を中心に復習!

財務諸表論(計算)も簿記論と同じく『机』を必要としますので、繁忙期を迎えている方は、この時期は理論中心にやっていきましょう。もし、計算問題を解くにしても、総合問題は極力避け、すでに解いたことのある個別問題を中心にやっていただければOKです(簿記論と同じく復習時間の確保すらままならないことが多いため)。

1週間あたりの勉強時間の目安:8時間前後
 ※ただし、繁忙期の方は自由に設定してください。

財務諸表論(理論)―少しのスキマ時間でも眺めて復習!

理論に関しては『机』を必要としないので、この時期は少しでもスキマ時間があれば理論を眺めてみてください。無理に覚えようとする必要はありません。今まで覚えた理論の確認程度で大丈夫です(新しい理論を暗記しても、暗記の定着を確認する時間まで確保できないことが多いため)。

また、10月の記事でお伝えした、毎月の基本書の通読だけは繁忙期であっても欠かさないようにしてくださいね(まさかサボっていたりしないですよね???)。がんばって!!

1週間あたりの勉強時間の目安:12時間前後
 ※ただし、繁忙期の方は自由に設定してください。

第7回は4月1日(土)にUP予定です。
ご期待ください!

<執筆者紹介>
諸角 崇順
(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」

【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
第11回(8月の学習ナビ)

【書籍紹介】

『次こそ!税理士試験に合格する方法』(中央経済社)
本記事の執筆者である諸角崇順先生の学習アドバイスをはじめ、合格体験記や独立開業日誌など会計人コースWebの記事に加筆・編集をしてまとめた1冊です。
ぜひご覧ください!

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