並木秀明
……指先を「ペロッ」となめる。芝生をつまみ放り投げる。ゴルフで風向きと強さを調べる動作である。こんなことをしても上空の風向きまではわかるわけがないが、未来に起こりうる事態に備え、最善の努力をするのは悪いことではない。現在は、過去となる。現在の行為が未来に影響を与えることは必然であるから、後悔しないように行動したい時期になった。
好い加減
子供だった頃、親から「好い加減にしろ」と怒られた記憶がある。何に対して「好い加減にしろ」なのかは、記憶がないが、休みの日は欠かさず釣りに行っていたからかもしれない。
話を戻そう。親の言う「好い加減にしろ」とは、度を超えた行為を「適当な程度にしろ」ということであったのであろう。国語辞典では、悪い方の意味では「無責任で、なげやりなさま」、良い意味では「ちょうどよい程度」である。受験生にとっては、5月といえば受験勉強の直前突入時期である。凝った勉強、ハマッタ論点があれば見直す時期である。今、学習している論点は「どこまでやれば十分なのか」「出題頻度の低い、または程度の高すぎる論点」に時間を掛けすぎていないか。受験勉強は、一論点の研究ではない。合格点をとれば十分なのである。この時期からは、「こだわり」は勇気を持って捨ててしまおう。「好い加減」な学習計画を練り、学習時間を合理的なものとしなければいけない。
オリンピックとギリシャ
うるう年は、オリンピックがある。2020年は、ご存知、東京でオリンピックが開催される(予定だった)。そんなことでうかつにもオリンピック発祥の地ギリシャへ行ってしまった。「うかつにも」とは、新型コロナウイルスが大きな影響を与える直前に旅立ったことである。帰国時は、パンデミック、クラスター、緊急事態宣言など普段は聞くことのない言葉が飛び交っていた。いま執筆できるのは、帰国後の潜伏期間が無事経過したからである。
ギリシャは、「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ」という太宰治の「走れメロス」の一文へのあこがれもあった。
間に合う、間に合わぬは問題でない
試験までおよそ3ヵ月となった。試験の準備に100%はない。満点(完璧)を狙うなら10年受験勉強続けても、不可能であろう。この時期は、「間に合う、間に合わぬは問題でない」のである。合格点を目指して、ひたすら勉強を続けていく継続力、信ずる力が必要であろう。
10月号では、夏から秋、秋から冬と「季節の変わり目に突入する頃、体調不良に陥りやすい」と書いた。いまは、春から夏と季節が変わり、夏の前には梅雨があり、再度の体調不良に陥りやすい季節となった。繰り返し、書いておこう。直前期の受験生活では、体調不良は要注意である。特に「風邪なんか引いたことがない」などと言っている人ほど痛い目に合う。数日の体調不良は、1ヵ月分の記憶の貯蓄を失いかねない。これから暑くなる。体力と集中力と気力を失わないように気配りしよう。
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年6月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス