税理士×社労士のWライセンス!4児のパパが働きながら難関試験を突破した方法とは?


受験生の皆さん、年末が近づき、だんだん忙しくなってきていませんか?

「帰って勉強したいのに残業が…」「これからもっと忙しくなりそう…」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。 

ただ、難関試験に合格するためには、たとえ時間がなくても勉強を続ける必要があります。

そこで今回、2021年度社労士試験に合格された藤原宗和さんにインタビューをさせていただきました。

藤原さんは2016年に税理士試験に合格され(現在、税理士登録申請中)、税理士試験・社労士試験ともに「会計事務所で働きながら」、そして「家庭をもちながら」挑戦されています。

税理士試験のときには3人だったお子さんも、社労士試験のときには4人に。

そんな働くパパ受験生の藤原さんが、時間がないなかでも難関試験を突破できた理由とは?

社労士試験に挑戦したきっかけや今後のお仕事などについても幅広くお話を伺いました。

念願かなった社労士受験! 目指したきっかけは?

――このたびは社労士試験合格おめでとうございます! 税理士試験だけではなく社労士試験にも挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

藤原さん ありがとうございます! 実は私、社労士試験を先に受験したかったんです。

資格勉強に興味をもったのがちょうど結婚した年だったのですが、結婚をきっかけに将来を強く意識するようになり、なにか資格を活かして長く続けられる仕事をしたいと思っていました。

そのときは、たまたま簿記3級をもっていて、また営業事務の仕事で給与計算の手伝いをする機会もあったので、この力を伸ばして経理職で生きていこうと考えていました。

そうはいっても、当時は給与明細を見ても何が書いてあるのかサッパリですし、社会保険についてもよくわかりません。

そこで、まずは「簿記」と「社会保険」の勉強を頑張って、簿記検定や社労士試験に挑戦しようと考えるようになりました。

当時の私にとっては、「税金」や税理士試験はもっと遠い距離にあったように思います。

順番としては税理士試験の後に社労士試験に合格しましたが、先に関心をもったのは「社労士」でした。

――そうだったんですね! それがなぜ税理士試験を先に受験することになったのでしょうか?

藤原さん それが高卒だったので、社労士試験の受験資格がなかったんですよ(参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「社会保険労務士試験の受験資格」)。

資格試験に興味をもってからは、まず職業訓練校で勉強して簿記2級に合格し、その後に転職、そこで前職と同じように営業事務の仕事に就きました。

変わらず「社会保険」に関心はあったのですが、この時点で簿記1級の勉強を始めていたので、まずは「簿記」の勉強を一通り終えることにしたんです。

簿記1級には合格まで2年近くかかりましたが、合格した頃には経理の仕事を全面的に任せられるようになっていました。

そして、その流れから顧問税理士法人の方や、関係会社で税理士試験に合格した方と話す機会も増え、とても刺激を受けたんですね。

実は、税理士試験は「簿記の延長線」感覚で一度受験していたのですが、そのような職場環境をきっかけに、もっと真剣に税理士試験の合格を目指そうと考えるようになりました。

税理士試験に合格すれば社労士試験の受験資格も得られますしね。

その後、普段から会計に携われる税理士事務所に入ったほうがいいのではないかと思い、税理士事務所に転職し、そこから税理士試験の勉強を本格化させました。

――なるほど、紆余曲折あったのですね。それでは、結果的に、社労士試験の勉強を始めたのはいつごろだったのでしょうか?

藤原さん 2018年末です。税理士試験に2016年に合格し、その後はFPの勉強をしていたのですが、FP1級とCFPに合格して落ち着いた頃に、ようやく社労士試験の勉強を始めました。

ただ、すでに2018年末の段階で第4子が生まれることがわかっていたので、2019年度の試験を受験するつもりはなく、独学で下準備をするというスタンスでした。

その後、2020年にはじめて受験し、その年は不合格だったのですが、今年リベンジして合格することができました。

――ついに念願がかなったのですね。下準備期間の2019年、勉強を本格化させた2020年以降は、それぞれどのように学習していたのでしょうか?

藤原さん 2019年の独学では、「社労士Ⅴ」という月刊誌や、『ごうかく社労士 基本テキスト』を使って地道に勉強していました。

2020年はフォーサイトの通信講座を受け、また、持ち運び用として『ごうかく社労士』シリーズの「まる覚えサブノート」を使っていました。

2021年は、前年に一通りのインプットを終えたので独学に戻り、アウトプットを重視した学習をするようにしていました。

◆中央経済グループパブリッシング発行

アウトプットに時間をかける! 今年はデジタル学習も

――2020年~2021年というとコロナ禍ですが、なにか受験勉強に影響はありましたか?

藤原さん ありました。特に不合格だった2020年ですね。

もともと平日2時間、休日6時間は勉強しようと思っていたのですが、実際は、7月~8月まで、そのペースにもっていくことができませんでした(社労士試験は例年8月第4日曜日)。

仕事で確定申告の時期がずれたり、子どもが休校になって1日中ずっと家にいたり、これまでと違う状況になったので、苦労した点が多かったように思います。

また、以前は喫茶店やコワーキングスペースなどで勉強することもあったのですが、それもコロナで難しくなりましたしね。

繁忙期に学習ペースがにぶるのは税理士受験時代からあったのですが、それでも落ち着いてくる5月以降には巻き返すことができていたので、それが直前期になるまでできなかったのには悩みました。

◆アプリ「Studyplus」で学習時間を記録。

――合格した2021年は、どのように乗り越えたのでしょうか?

藤原さん 正直なところ、今年も勉強のリズム感はそこまで変えられなかったと思います。

ただ、十分な学習時間の確保ができないぶん、勉強の中身を変えるようにしました。

というのも、去年不合格だった理由が、インプットばかりで、問題を解く量が少なかったからだとわかっていたんですね。

税理士試験もそうですが、合格できるレベルまでもっていくには、ただ覚えるだけではなく、覚えたことを頭の中から引き出すトレーニングが大切です。

全科目がマークシート方式の社労士試験でも、それは変わりません。

そのため、今年はすぐにTACの過去問題集を買って、がっつりとアウトプットに時間をかけるようにしました。


◆今年度受験用の教材棚

――なるほど、去年と今年では勉強のやり方を変えたのですね

藤原さん そうですね。また、通勤時間や昼休みなどのスキマ時間に簡単に勉強できるように、教材もスマートフォンに取り込むようにしました。

職場ならまだしも電車の中ってテキストや問題集が開きづらいんですよね。

MicrosoftのOneNoteを使い、家のパソコンで教材の画像を貼り付けたりメモを入力したりして、それをスマートフォンで見ながら勉強していました。

◆OneNoteで作成したまとめページ①

独学だったので色んな教材が手元にあったのですが、同じ科目や同じ論点の情報をまとめたり、全国模試も複数校のものを受けたので、それぞれの解説動画の一部をスクリーンショットしてまとめたりしていました。

情報を一元化し、自分専用のまとめノートを作っていったイメージです。

OneNoteは今年から使いはじめたのですが、かなり効果がありました。

◆OneNoteで作成したまとめページ②

社労士・税理士、避けては通れない「暗記」のコツは?

――社労士試験の暗記はかなり大変だと聞きます。実際どうでしたか?

藤原さん けっこう厳しかったですね。学習時間がなかったというのもありますが、税理士試験より暗記がつらかったように思います。

たとえば、税理士試験の財務諸表論などは結論の背景が見えるので頭に入りやすいのですが、社労士試験に登場する数字はどこか根拠がないというか……。

けっきょく力技で覚えるしかなかったのですが、いかんせん覚える量が多いので、あまりコストパフォーマンスがよくないんですね。

そのため、模試の解説動画や本などでいわれている情報を集め、語呂合わせを試したこともありました。

――語呂合わせ! 独学ですと、そういった情報を集めることも大切になってきますよね。

藤原さん そうですね。ほかにも、使っているテキストのサイトを見て改正があるかどうかを確認したり、自分一人で対応しきれない改正点についてはフォーサイトの単科講座を申し込んだりしました。

独学で情報を得にくいからこそ、積極的にアンテナを張っていたように思います。

というのも私、日商簿記1級に独学で合格したのですが、それまでに何回か不合格になっているんですね。

そのときにアンテナを張りきれていなかったことを反省した経験があり、その後の税理士試験でも新しい情報はしっかりキャッチするようにしていました。

特に社労士試験は改正点が多く、ちょっとした覚えまちがいも響いてくるので、ここは税理士試験よりシビアかなと個人的には思います。

――正しい情報を押さえるのは大切ですよね。ちなみに、税理士試験の暗記は社労士試験よりスムーズだったのでしょうか?

藤原さん いえいえ、社労士試験と同じく税理士試験も苦労しました。特に、最後に受験した相続税法ですね。

消費税法や法人税法は事例問題が出題されるので、完全に暗記していなくとも要旨を押さえた解答を書けばクリアできる要素があるのですが、受験当時の相続税法は基本的にベタ書き問題というか、そういった作文的な要素が少なかったんです。

そのため、テキストの内容を一言一句間違わないように覚えなければいけないというプレッシャーが強くありました。

それなのに理論をほったらかしにしてしまい、6月~7月に一気に手をつけた感じです。

ただ、結果としてはなんとか一発合格できたので、苦労はしますが、詰め込みは得意なタイプなのかもしれません。

――具体的には、どのように暗記していたのでしょうか?

藤原さん 私の場合は、これでもかというくらいにテキストに書き込んだりマーカーを引いたりして目立たせ、視覚的に覚えられるように工夫していました。

ただ、先ほどもお話したようにインプットばかりというのはよくないので、問題に応じて解答を書くトレーニングもしていました。

読んでいるだけだと、頭に入っているようで入っていないこともあります。

また、問題を読み、その意図に沿った解答を考えて書くことで自然と理解が深まり、記憶も定着するように思います。

とはいえ、税理士試験の解答量は多いので、私は理論を勉強するときには万年筆を使っていました。

計算問題を解くときはボールペンですが、税法科目の理論問題は試験でも万年筆に持ち替えていました。

力をかけなくても最低限のきれいな字が書けるので、腱鞘炎を防ぐためにも万年筆はオススメです。

◆税理士受験時代はボールペンと万年筆を常備。

本番の雰囲気に慣れ、ココ一番で実力を出す!

――社労士試験と税理士試験を振り返ってみて、共通の勉強のコツなどはありますか?

藤原さん それがあまりないんですよ。社労士試験も税理士試験も「アウトプットを重視する」という大筋は同じだったのですが、税理士試験の勉強法を社労士試験でも活かそう! みたいなことはありませんでした。

実際、本試験でも税理士試験のテクニックはどれも使えなくて厳しかったですね。

たとえば、税理士試験では問題にマーカーを引いて目立たせることができますが、社労士試験ではマーカーの使用は禁止されています。

ほかにも、税理士試験だとページを行き来して資料を見ながら解くような総合問題がありますが(簿・財の決算整理前試算表や相続税法の相続関係図など)、社労士試験は問題同士のつながりがなく、ページを行き来する必要がないので、問題の進め方もまったく違いました。

ただ、振り返ってみると私の場合は本番に強く、勉強のコツというよりは、本番で実力を発揮できたことが合格の理由だったのかなと思います。

――本番に強い……それができずに悩む受験生は多いです。

藤原さん おそらく私の場合、過去の経験から周りに人がいる環境に慣れているということがあると思います。

というのも、昔ゲーマーをしていて、今のようにプロゲーマーといったワードが主流ではない時代ですが、ゲームセンターやイベント会場などで多いときには100人くらいに見られながらゲームをしていました。

その経験が活きて、税理士試験にも社労士試験にも緊張することなく臨めたように思います。

◆ゲーマー時代。

こういった意味では、普段は1人で勉強していたとしても、周りに人がいるような環境に慣れておくのはいいかもしれませんね。

まだ外に出づらい世の中ではありますが、模試は会場受験するとか、複数回受験するなら座る席を変えてみるとか。席も場所によって寒かったり暑かったりさまざまです。

どんな環境でも本試験で実力を発揮できるようにリハーサルしておくことが大切なのかなと思います。

◆税理士試験の消費税法・法人税法に合格した年の8月の手帳。

税理士×社労士として、アプローチの幅を広げる

――最後に、税理士×社労士として、今後どのような働き方をしていきたいですか?

藤原さん 私は現在、税理士事務所で働いていますが、給与計算から年末調整まで、仕事に社会保険は密接にかかわってきます。

また、この社会保険に関する考え方を知っているか知らないかで、会計仕訳や個人の確定申告などのスムーズさも変わってくるように感じています。

税理士事務所の仕事では、単純に税務会計ではなく、もっと広い意味での「経営」について、中小企業のオーナーさんに聞かれることも多いです。

そのため、主に税理士業務を行うとしても、社会保険についても知識をもつことで、お客様への対応の幅も広がるように思います。

社会保険については、私もこれまでによく聞かれてきましたが、いかんせん資格がないので深くは踏み込めませんでした。

それが今回、ようやく社労士試験に合格できたので、今後は税務会計と社会保険を一括で担当していければと考えています。

――お客様にとっても、ワンストップで教えてくれる方がいるというのは心強いですね。

藤原さん 時代としても、今は社会保険や社労士資格のニーズは高まっていると思います。

税理士はどちらかというと、税金を計算して「払う」ことに対するアプローチが強いですが、社労士は補助金などを「受け取る」というサポートができます。

税理士試験と社労士試験の両方に合格できた今、これからは双方のアプローチができるように励んでいきたいです。

――今後のご活躍を応援しています! 貴重なお話、ありがとうございました!

【編集部がお話を聞いた人】
藤原 宗和(ふじはら むねかず)
大阪府出身。会計事務所に勤務しながら、2016年に税理士試験に合格。合格科目は簿記論・財務諸表論・消費税法・法人税法・相続税法。その後、2018年にFP1級、CFPを取得。2018年末より勉強を始めた社会保険労務士試験に、2021年合格。仕事と育児、勉強を両立させながら、徹底的な本試験対策で合格をつかむ。目標は「税務とお金と労務の専門家」。ブログ「日々是精進 ~フジハラ修練記~」で各種試験の学習記録や勉強法を発信中。


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