8月18日~20日、令和3年度(第71回)税理士試験が実施されました。
手ごたえや自己採点の結果などによっては、不安や緊張で勉強が手につかないという方、これからどうしようか悩まれている方もいらっしゃると思います。
ただ、次のステップに進むためにも、まずは自分の気持ちを整えたいところですよね。
そこで、「セラピスト税理士」として活躍されている益田あゆみ先生に、受験生の「メンタル」に関するお悩みに答えていただきました。
Q 合格発表まで、どのように過ごせばよいでしょうか?
はじめて受験しましたが、手応えを感じておらず、不安で勉強が手につきません。合格発表までどのように過ごせばよいでしょうか?
はじめての税理士試験、おつかれさまでした。合否がすぐにわからないので、気になりますよね。
ただ、はじめて受験したということは、次に受験する科目が控えていると思います。手ごたえを感じていなくても、その受験科目に切り替えていきたいところですね。
まずは、これからの1年間をどう過ごせばよいのか、計画を立てると前向きになれるかもしれません。私は、受験した科目の「合格パターン」と「不合格パターン」を考えて、新しい科目に頭を切り替えて勉強を進めていました。実際は、「不合格パターン」を採用するほうが多く、勉強が途中になってしまうこともあったのですが……それでも、その科目の勉強を再開するときには、役に立ちました。
受験後の8月・9月は不安で、受験した科目に気を取られるのは私もそうでした。ただ、新しい受験科目の勉強を進めていくと徐々に忘れていきます。結果発表が近づいてくると、また思い出すのですけどね……。
なお、今回受験した科目が基礎から怪しい状態であれば、同じ科目を改めてじっくり勉強する必要があります。今までの勉強内容や培ってきた知識を振り返り、不安になっている原因を確認してみましょう。
また、試験前に追い込みをしたことで心身ともにお疲れだと思いますので、休息も忘れずにとってくださいね!
Q もう諦めたほうがいいのでしょうか?
何度も受験しているのに今回も不合格となりそうです。もう諦めたほうがいいのでしょうか?
もしかしたら、「税理士になりたい」という気持ちが揺らいでいるかもしれません。最初は「税理士になりたい」と思って始めた勉強も、目の前のことがきつく、同じ科目で不合格が続くと、もうやめようと考える……私も経験があります。ただ、諦めようと思っても、実際にはできない自分もいました。
こんなときは、いま一度「税理士になりたい」という気持ちを再確認し、不合格が続いている原因を探ってみてください。
自分は開業したいか、または勤務税理士がいいか、開業するならどんなスタイルか、税理士のSNSなどを見ることで具体的な仕事がイメージでき、自分の目標とする税理士像が見えてくるかもしれません。
一方で、不合格の原因分析ですが、私は「相続税法」は7回、「所得税法」「住民税」も3回以上受験しています。私の場合、どんな学習方法がその受験科目に合っているのか友人に聞いてみたり、基礎を徹底した勉強を行い、“理解したつもり”になっていないか確認したり、「反省」と「改善」を繰り返しました。たとえば、所得税法は、職場の先輩からのアドバイスで『実務応答集』を読み、違った視点で理解力を確認しました。また、ケアレスミスの原因も探り、私は問題の読み方を工夫することで対応していきました。
「税理士試験を諦める」という選択については、当時の私に対して、今でこそ「それもアリか」と思えます。ただ、「ここまでやってきたのにもったいない」「それでも税理士になりたい」「高卒だし大学院に行くことを考えてでもやり続けるしかない」と堂々巡りでした。
受験を続けることは、家族を巻き込むこともありますし、お金もかかります。何より、かなりの時間をつぎ込みます。もしも精神的につらい状態であれば、「税理士試験を休む」という選択肢もあると思います。または、複数科目を受験しようとしている、科目合格をしたことがないようであれば、「まずは1科目を頑張ろう」と目標を縮小してみてはいかがでしょうか。
税理士試験を諦めることは恥ずかしいことではなく、すべてが無駄になることもないと思っています。それは、私が勤務した上場企業や海外生活で経験しました。企業では、財務経理や上場準備に勉強した知識が役に立ち、海外に目を向けると簿記は世界の共通言語で、日本の税法を理解する意味は日本以外でも見つけられました。
税理士になることが人生のすべてではありません。人生を豊かにするためのツールだととらえましょう。自分を追い込みすぎず、「続ける」「諦める」に向かいあってみてください。
Q モチベーションが上がらないのですが、どうすればよいでしょうか?
受験は続けようと思うのですが、自己採点の結果があまりよくなく、税理士試験へのモチベーションが下がりつつあります。どうすればよいでしょうか?
こちらも、「税理士になりたい」という気持ちが揺らいでしまっていませんか? また、「税理士」という職業への理解が、勉強を始めたときと今とで変わってしまったことで、モチベーションが揺らいでしまうことも考えられます。まずは、「税理士になりたい」という気持ちを固めることで、モチベーションを上げていきましょう。
ほかには、勉強している科目との相性が合わないことでモチベーションが下がってしまうことも考えられます。私は、税法科目を選ぶときには「好きか・嫌いか」を大事にしていました。もし苦手な科目だったときは、モチベーションダウンの原因がわかったと考えるだけでも、受験自体を前向きにとらえられるかもしれません。
また、疲れていると悲観的になりやすいので、ゆっくり休息をとることも大切ですよ!
Q 息抜きをしても大丈夫ですか?
試験が終わったので休みたいのですが、息抜きをすることが怖いです。どうすればよいでしょうか?
よくわかります! 私も休むのが下手で、勉強効率が悪かったので「人より勉強量を増やしたほうがいい」と考えて、やみくもに机の前に座っていました。ただ、特に年内は勉強に身が入らず、ダラダラしてしまった記憶があります。勉強仲間や講師からも「年内は休みながら過ごしたほうがいい」と言われましたね。
現代は情報過多のため、ただでさえエネルギーを消耗していることが多く、疲労を蓄積していると言われています。さらに、税理士試験の受験生活では、睡眠不足に悩むこともあったでしょう。そのため、今は脳や感情までも疲労しているはずです。発散型の息抜きも時には必要ですが、まずは、しっかり栄養と睡眠をとるような「リラックス時間」を取り入れることが大切です。
税理士試験は長期戦です。疲労とストレスをコントロールすることは、勉強を頑張ることと同じくらい必要だと認識し、思いきって息抜きしてみてください。
【執筆者紹介】
益田 あゆみ(ますだ・あゆみ)
益田税理士事務所所長・税理士
東京都小金井市生まれ。商業高校卒業後、手に職をつけるため「税理士になろう」と決意し、働きながら税理士試験受験資格の簿記1級を目指す。専念や仕事を繰り返し、ニューヨーク在住中に税理士試験官報合格。帰国ののち税理士登録。独立開業後、日本で一番最初に顧客に対するメンタルサポートを業界に取り入れ、特に女性起業家から安心感と共感の声を呼んでいる。ブログ「お金も心も満タンに!」では、税務のことから趣味のことまで幅広い情報を発信中。