Ⅲ 資産会計⑥
※ 本連載では「通常の販売目的で保有する棚卸資産」を前提とする。
4.棚卸資産(棚卸資産評価に関する会計基準)
27.通常の販売目的で保有する棚卸資産の(1)評価基準と(2)その根拠 ★★★
(1) 通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は,①取得原価をもって貸借対照表価額とし,期末における②正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には,当該③正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。
(2) 取得原価基準は,④将来の収益を生み出すという意味においての⑤有用な原価,すなわち回収可能な原価だけを繰り越そうとする考え方であるとみることができる。したがって,⑥棚卸資産の収益性が当初の予想より低下し,投資額の回収が見込めなくなった場合には,⑦取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように,⑧過大な帳簿価額を減額し,将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を切り下げる会計処理が適切である。これにより,⑨財務諸表利用者に的確な情報を提供することができるものと考えられる。
28.棚卸資産の収益性の低下の判断基準 ★★★
棚卸資産の場合には,通常,①販売によってのみ資金の回収を図る点に特徴がある。よって,②評価時点における資金回収額を示す棚卸資産の正味売却価額が,その帳簿価額を下回っているときには,収益性が低下していると考え,帳簿価額の切下げを行うことが適当である。
29.棚卸資産の収益性の低下に係る損益の表示とその根拠 ★★
企業が通常の販売目的で保有する棚卸資産について,収益性が低下した場合の簿価切下額は,①販売活動を行う上で不可避的に発生したものであるため,②売上高に対応する売上原価として扱うことが適当と考えられる。
*自宅学習などで音読可能であれば、ぜひ音読しましょう!