井上 修
(公認会計士・福岡大学講師)
〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
慶応義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻修了、会計学修士号(専門職)。研究分野はIFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究などであり、2020年度に博士号(経営学)を取得見込み。
福岡大学「会計専門職プログラム」では、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験簿記論・財務諸表論に在学中の合格を果たしている。本プログラムから平成30年度は10名、令和元年度は5名が公認会計士試験に合格。
2021年2月16日、令和2年度の公認会計士論文式試験の合格発表がありました。受験生の皆さん、本当にお疲れ様でした!
今回の発表で残念な結果となってしまった方は、これからどうするかを考えなければいけませんが、令和3年度の論文式試験にリベンジされる方も多いことでしょう。
ただ、令和3年度の公認会計士論文式試験は、ご存じのとおり、今回の合格発表から約6ヵ月後。通常より短い期間で勉強しなければなりません。
この点を不安に思う方は多いのでしょうか? 合格していると思ってまったく勉強していない。一応していたけれど結果が気になってあまり手につかなかった。そんな方は多くいらっしゃるでしょう。
しかし、不安に思う必要はありません。今回は結果が得られなかったとしても、皆さんにはとてつもなく大きなアドバンテージがあるからです。
そのアドバンテージとは、「本番」を経験しているということ。令和2年度論文式試験は、少しイレギュラーな日程ではありましたが、皆さんはすでに「本番」を経験していますよね。これは、まったく経験していない方と比べると、大きな強みになります。この点については、ぜひ自信をもちましょう。
それでは、このアドバンテージがあったうえで、次の論文式試験に合格するためには、何をすればいいのか? それは、「最終コーナーでいかに全速力で走れるか」を意識することです。
最終コーナーでいかに全速力で走れるか?
論文式試験の合格に絶対に必要なことは、本番に向けてモチベーションを上げていき、本番に最高潮のモチベーションで臨むことです。
しかし、これは令和3年度論文式試験の受験生ほぼ全員に共通すると思うのですが、おそらく「1月~6月」は、モチベーションがなかなか上がらない時期になるかと思われます。
なぜなら、答練以外では、自習の時間が圧倒的に多くなるからです。また、令和2年度で受験している場合はなおさら、新しいことをインプットするフレッシュさもないため、知らず知らずのうちに緩んでくるはずです。よく言えば「安定」ですが、悪く言うと「ダラダラ」ですね。いずれにせよ、アドレナリンがたくさん出ているとはいえません。
それならどうすればいいのか? 問題は、「1月~6月」ではありません。大事なのは、「7月~8月(本試験も含む)」で、いかに “最高潮” の状態にするかです。ここで勝負がはっきり分かれます。
まずは、下のグラフを見てください。これは、一般的に見て論文式試験に合格できると思われる人*の「モチベーション」と「時期」の関係を表したものです。
* 5月短答式試験受験者を除きます。
青い曲線を見てください。途中で中だるみしてしまう時期もありますが、本番ではグンとモチベーションを持ち直していますね。つまり、最後の最後、本番に全力で臨むことが必須といえます。(ちなみに、点線が理想ですが、このようにモチベーションを上げ続けられる方は少ないと思います。)
興味深いのは、次のグラフです。これは、実力的には合格できる人でも苦戦するケースを表したものです。
赤い線は、始まりこそモチベーションが高いですが、徐々に下がっていますね。緑の線も、一見すると高いモチベーションを維持できていますが、本試験直前にグンと下がってしまいました。
公認会計士試験は、本番一発勝負の世界なので、このような状態では、力を十分に発揮できないでしょう。
逆に考えれば、最初はモチベーションが低くても、本試験に向けてモチベーションを上げていけるのなら、合格できる確率は高いといえます。
今回の結果発表で、一気にモチベーションが下がってしまった方もいらっしゃるでしょう。こんな精神状態で次も戦えるのか……不安ですよね。しかし、今はモチベーションを立て直すのが難しくても、徐々に上げていけば大丈夫です。むしろ今がドン底であるとすれば、もう上がるしかないわけなので、決して不安に思う必要はありません。
ちなみに、「知識量にまだ自信がない」とか「解答に時間がかかる」といった勉強の遅れについては、これまで一定程度の努力を重ねてきた方なら、すぐにリカバリーできます。
何度も言いますが、大事なのは「本番に向けて上げていこうとする気持ち」です。本当にこれだけです。どうか今の自分に自信をもって、再び立ち向かっていただきたいです。
今はまだそのような気持ちになれなくても、「徐々にゆっくり気持ちを上げていけばいいんだ」と思って、もう一度頑張ってみましょう!