渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)
この連載講座では、「日商簿記では学ばないけれど、税理士試験の簿記論・財務諸表論では必要になる論点」を学習します。
簿記論・財務諸表論の学習は広範囲にわたるため、日商簿記では深く学んでいない論点も対策しなければなりません。
税理士を目指して簿記論・財務諸表論の学習を始めた方、「いずれは税理士に」と考えている方は、この連載講座を使って効率的に学習を進めていきましょう。
まずはじめに…
日商簿記での未学習項目
引出金・大陸式決算法
税理士試験での出題傾向
英米式決算法・大陸式決算法の帳簿の締切り方法を理解していることが前提の個別問題が出題される可能性があります。本試験ではないですが、学習初期の段階で市販の問題集などから問われることがあります
引出金勘定
個人企業または商店では、店主が経営者であり出資者であるため、自社の商品や現金を生活費などの私用で使う場合があります。
これを「資本の引出し」といい、資本を引き出すと元入れした資本金が減るため、資本金勘定を減少させます。
しかし、資本の引出しが頻繁に行われる場合、資本金勘定の記帳が煩雑になるため、資本金勘定とは別に引出金勘定(評価勘定、純資産のマイナス勘定)を設けて処理する方法もあります。
引出金勘定で処理し、決算において引出金勘定に残高がある場合には、資本金勘定へ振り替える決算整理仕訳を行います。
設 例
次の連続する取引を仕訳しなさい。なお、資本の引出しには引出金勘定を用いる方法で処理すること。(決算日:12月31日)
① 店主は、生活費と子供の学費の支払いのため、店から現金100,000円を引き出した。
② 店主は家賃300,000円を現金で支払った。このうち40%が店主個人の住居分である。
③ 12月31日 決算にあたり、引出金を整理する。