加藤大吾
(公認会計士・税理士)
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
【問い】
次の〔資料〕に基づき、当期末(X2年3月31日)の貸借対照表のその他資本剰余金はいくらか、求めなさい。
〔資料〕
1.当期首(X1年4月1日)に保有する自己株式は2,000株であり、1株当たりの帳簿価額は500円である。また、当期首におけるその他資本剰余金残高は、ゼロである。
2.X1年8月12日に、自己株式3,000株を、1株当たり600円で取得し、自己株式の取得に係る手数料15,000円とともに、普通預金口座より支払った。
3.X2年2月1日に、自己株式4,000株を、1株当たり700円で処分し、自己株式の処分に係る手数料20,000円を差し引き、普通預金口座へ入金された。
なお、自己株式の処分原価は、移動平均法により算定すること。
【解説】 ※誤りを含みます!
1.自己株式の取得
(借) 自己株式 1,815,000
(貸) 普通預金 1,815,000
(注1) 自己株式:
3,000株×600円+15,000円(手数料)=1,815,000円
(注2) 自己株式の1株当たりの帳簿価額:
1,000,000円(期首)+1,815,000円(取得)/2,000株(期首)+3,000株(取得)=563円
2.自己株式の処分
(借) 普通預金 2,780,000 (貸) 自己株式 2,252,000
支払手数料 20,000 その他資本剰余金 548,000
(注1) 自己株式:
4,000株×563円(1株当たりの帳簿価額)=2,252,000円
(注2) 普通預金:
4,000株×700円-20,000円(手数料)=2,780,000円
(注3) 支払手数料(営業外費用):
20,000円(処分に係る手数料)
(注4) その他資本剰余金(解答の金額):
4,000株×(700円-563円)=548,000円