まずはココだけ押さえたい! 経理・財務の業務フロー【第4回】経費①(全般的な管理)


菅 信浩

【編集部より】
「簿記や財務諸表論などの問題は解けるけれど、実際の業務はどう進むの?」、「監査のために、仕事の流れが知りたい」という方も少なくないはず。本連載では、受験勉強だけでは得られない現場の経理・財務の業務プロセスについて、『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』の著者、菅信浩氏に解説してもらいます(全5回予定)。
本連載を読めば、まだ働いたことのない受験生や各試験合格者も、「入社前に知ることができてよかった」、「業務プロセスのイメージがついた」と自信がつくはず!
もちろん、すでに業務についていて、より理解を深めたい経理・財務パーソンにもおすすめです♪

経費の管理ってなんのためにするの?

経費管理は、第一義的には従業員の経費使用を管理して不正な経費使用を防止するのが主な目的です。申請された経費の正当性(本当に必要な経費であるか、会社の経費としてふさわしいかを判断し承認)と正確性(適切なエビデンスに基づいて計上)を確保します。

なお、交際費、会議費および旅費交通費は、私的利用のリスクが高いため個別に注意が必要であり、別途ルールを制定するのが一般的です。

経費精算の時にチェックすべきポイントってなに?

経費精算の承認・検証をするときには以下をチェックします。

✓事前申請がある場合は事前申請項目との整合性
✓事前申請がない場合は、必要な経費か、金額が常識的な範囲か(交通費なら場所・
 移動距離、交際費なら店の内容・相手方の性質・人数など)
✓金額・内容に応じた必要な承認が取得されているか
✓経費精算書と証憑(請求書、領収書、レシート等)の金額・日付・相手先の照合※
✓金額の集計等の計算誤りがないか計算チェック※
✓交際費・会議費の場合、会議等の実在性の確認(会議内容、出席者)
✓交際費・会議費の場合、税務上の損金算入の検討

※については、赤字等でチェックマーク(「✓」「〇」「×」「Φ」「T」「W」など何でも構いません)を付けて照合・計算チェックが漏れなく行われた証跡を残しましょう。

業務フローチャート

具体的な業務処理をフローチャートと比較しつつ確認していきましょう。

事前承認

支出が一定金額以上となる場合や交際費などについては、「経費事前申請書」(図表2)により上長の承認を取得します。

なお、公務員・政府関係者を含む交際費の支出については、コンプライアンス(贈収賄)の観点から別途法務部の事前承認を必要とします。

経費精算

経費使用者が立替払いした経費について「経費精算書」(図表3)を作成し、支払先から受け取った領収書と承認済みの「経費事前申請書」を証憑として、上長承認を取得し、経理部門に経費精算の依頼を行います。

経費使用者が立替払いを行わない場合は、相手先から入手した請求書を証憑として添付します。

なお、従来は紙で社内に回付していた申請書類について、申請等に必要な情報をデジタル情報にしてシステム上で申請・承認を行うシステム(「ワークフローシステム」ないし「電子承認システム」と呼ばれます)を採用している会社が増えています。従来の紙での仕組みをシステムに載せただけでポイントは同じなので、本連載では理解しやすい紙の申請書類の前提で解説しています。

今回は経費について全般的にどのような管理が行われているかを紹介しました。次回は経費のうち特にリスクが高い交際費、会議費および旅費交通費の業務フローについて個別に紹介していきます。

【執筆者紹介】
菅 信浩(すが・のぶひろ)
上場準備中の不動産デベロッパー(現在は東証プライム上場)にて営業経験を積んだのち、当該会社の上場を契機に公認会計士を目指す。合格後に朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)へ入所し、100社超の監査業務、IPO支援、JSOXアドバイザリー等を担当。その後、大手総合商社へ転職後、数多くのM&AやPMI、内部統制構築に携わり、現在は台湾の海外子会社にCAOとして駐在。著書に、『チェックリストでリスクが見える 内部統制構築ガイド』『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』(いずれも中央経済社刊)。

【バックナンバー】まずはココだけ押さえたい! 経理・財務の業務フロー
【第1回】業務フローを理解するのが大切なワケ
【第2回】現金預金の残高管理①
【第3回】現金預金の残高管理②


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