アカウンティングスクールってどんなところ?―会計大学院協会理事長・山地範明先生にきく


アカウンティングスクール(会計大学院)は、約20年前に主に公認会計士を養成するために設置されましたが、近年はさまざまな学生がさまざまな目的で進学しているとのことです。
そこで、会計大学院協会理事長の山地範明先生(関西学院大学大学院経営戦略研究科長・教授)に、あらためてアカウンティングスクールの今を伺いました。

アカウンティングスクールで何が学べるの?

―アカウンティングスクールで学べるのは公認会計士試験科目の内容でしょうか。専門学校とは何が違うのでしょうか。

山地 アカウンティングスクールは、主に公認会計士を養成するため約20年前に開校しました。ですので、公認会計士試験に対応する科目については当然十分な科目・教育内容を設けています。

しかし、これにとどまらず試験合格の先を見据えた教育を提供している点が大きな特徴です。

すなわち、グローバルスタンダードである「職業会計士のための国際教育基準(IES)」に基づくカリキュラムが提供されて、ここでは単に専門知識を暗記するのではなく、本質的・体系的な学習をすることで思考力を身につけることができます。

いわば「考える会計学」が身につくといえます。

また、アカウンティングスクールを修了すれば、会計、監査、企業法のみならず、経済学、経営学、ICTなどの周辺領域の専門知識や高い倫理観を持つことができ、さらに問題解決能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力等も鍛えられます。

日本人がこれからグローバルなビジネスの世界で戦っていくには、国際的に認められた教育基準であるIESに準拠した教育内容で学ぶことは、大きな武器になると思います。

そして、グローバルで活躍するビジネスパーソンの多くは修士の学位を取得していることが多いですが、アカウンティングスクールを修了すれば、会計修士の学位も取得できます。

これらの点が、専門学校と異なる大きな特徴といえるでしょう。

設置されている特徴的な講義科目は?

―そうした教育を行うためにどのような講義科目が設置されているのでしょうか。

山地 アカウンティングスクールの大きな特徴の1つは、いわゆる大学教員だけでなく実務家出身の教員も多数所属していて、理論と実務をバランスよく習得することができる点です。

そして、実務家教員を中心とした実務に関する実践的な科目も多数設置されており、さらに大手監査法人などで現場体験ができるなどのキャリア教育が充実していることから、進路に対するさまざまな選択肢が検討でき、そして明確な動機づけが得られる点は、アカウンティングスクールに進学する大きなメリットの1つといえるでしょう。

誰がどのような目的で進学している?

―アカウンティングスクールに進学する学生は、どのような人たちがどのような目的で進学しているのでしょうか。

山地 先ほど申し上げたようにアカウンティングスクール設立当初は公認会計士試験合格を目指して進学する学生が多かったのですが、現在は学生の進学目的はかなり多様化しています。

新卒の学生は、公認会計士・税理士志望者だけでなく、企業の経理・財務担当者、国税専門官などの公務員を目指して進学する学生もいます。

近年、企業の職種別採用により、修了生が上場企業の経理・財務担当者として活躍している人もかなり増えてきました。企業サイドも、学部卒の人をゼロからOJTで教育していくよりも、国際的な高い水準で活躍するための知識・スキルを身につけている修了生のニーズは非常に高いと感じます。

また、企業の経理・財務担当者をはじめとするビジネスパーソン、地方自治体職員などの社会人が、リスキリング(学び直し)の目的で進学するケースもありますね。

学生が取得目標とする資格については、これまで公認会計士・税理士が圧倒的に多かったのですが、近年は国税専門官、USCPA、アクチュアリー、中小企業診断士などを目指す方もいます。

さらに、出身学部も多様化してきています。

これまで多くは商学部、経営学部などのビジネス系学部出身者の学生が多かったのですが、近年理工系学部の学生もすこしずつ増えてきました。これは、アカウンティングスクールによっては書類選考+面接のみで入試をクリアができるところもある点も大きいかもしれません。

ほとんど知識がない学生にも、1から学習できるカリキュラムが用意されているので、修了後、会計士試験に合格したり、企業の経理・財務担当者として活躍している方もいます。

このようにアカウンティングスクールは、公認会計士・税理士志望者だけでなく、多様なニーズにこたえられる教育内容を提供していますので、ぜひ進学して一生モノの学びを得ていただければと思います。

<お話を伺った先生>

山地 範明(やまじ のりあき)

関西学院大学大学院経営戦略研究科長・教授
会計大学院協会理事長
関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。京都産業大学経営学部教授を経て2005年より現職。英国ウォリック大学ウォリックビジネススクール客員研究員(1997年~1998年)、客員教授(2011年~2012年)。イタリア・パルマ大学客員教授(2019年~2020年)
主要著書に、『連結会計の生成と発展(増補改訂版)』(中央経済社、2000年)、 『会計制度(五訂版)』(同文舘出版、2011年)、『エッセンシャル連結会計(第2版)』(中央経済社、2021年)、 『エッセンシャル財務会計(第4版)』(中央経済社、2021年:共著)などがある。


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