川上悠季(税理士)
【編集部より】
答練や模試が本格化する直前期は、難しい論点や新しい論点がつい気になるところです。しかし、どの科目においても、合否を分けるのは「基礎論点」と言われます。
そこで、本連載では、消費税の課税判定に関する○×問題を、税理士の川上悠季先生に週一ペースで出題していただきます(全8回)。各回、全5問なので、スキマ時間での基礎固めにぜひご活用ください!
こんにちは!税理士の川上悠季です。
消費税課税判定クイズも残すところあと2回となりました!
それでは、今週の5問に挑戦してみてください!
問題(全5問)
解答・解説
問1.〇
委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であり、委託者が受託者に自己が適格請求書発行事業者である旨を取引前までに通知している場合は、媒介者交付特例の適用があり、受託者である当社の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書等を交付することができます。
問2.×
キャンセル料は、予約がキャンセルされたことにより生じた損害や逸失利益を補填するために収受するものであり、資産の譲渡等の対価として収受するものではないため、消費税の課税の対象の4要件のうち「対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため、課税の対象外(不課税取引)となります。
問3.〇
自社の役員に対して棚卸資産を譲渡した場合において、次のいずれかに該当するときは「低額譲渡」に該当し、通常の販売価額を課税標準額に算入する必要があります。
① 仕入価額>譲渡金額
② 通常の販売価額×50%>譲渡金額
本問の場合、仕入価額40万円>譲渡金額35万円であるため、低額譲渡に該当し、通常の販売価額60万円が課税標準額に算入されます。
問4.×
法人が資産を自社の役員に贈与した場合は、「みなし譲渡」として一定額を課税標準の計算上算入する必要がありますが、自社役員に対する無償による資産の貸付けや役務の提供については「みなし譲渡」に該当せず、対価性のない取引として課税対象外(不課税取引)となります。
問5.×
著作権等の譲渡又は貸付けに係る国内取引の判定は、その著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の「住所地」が国内にあるかどうかにより行います。「事務所等の所在地」ではなく「住所地」であることに注意しましょう。
学習到達度とアドバイス
いかがでしたか?
今回の問題は、問1は媒介者交付特例、問2は対価性の判定、問3は低額譲渡、問4はみなし譲渡、問5は国内取引の判定の論点から出題しました。
問1については、インボイス制度の論点から媒介者交付特例について出題しました。やや応用的な論点なので理解があやふやな方もいたのではないでしょうか。また、問5については理論暗記を正確にできていないと引っかかってしまう問題だったかもしれません。
今回は、できれば4点以上、最低でも3点以上は得点してほしいところです。間違えてしまったところはしっかり復習するようにしましょう!
次回(8月2日掲載予定)が最終回となります。
最後の回の問題も、ぜひ挑戦してください!
第5回の正答率とフィードバック
「消費税課税判定クイズ」第5回の集計結果が出ました。
正答率は次のとおりです。
問1(本社修繕費の課税仕入れの区分):97.9%
問2(国外取引に係る課税仕入れの区分):96.9%
問3(事業者向け電気通信利用役務の提供の意義):66.3%
問4(確定申告書の提出期限):94.8%
問5(課税期間特例):48.5%
今回は問5の正答率が非常に低くなっていました。
課税期間を短縮する場合は一月ごと又は三月ごとのいずれかのみで、六月ごとの期間に短縮することはできません。
中間申告は一月、三月、六月の3種類があるので、課税期間特例で短縮できる期間も一月、三月、六月の3種類があるものと混同してしまった方が多かったのかもしれません。
間違えてしまった方はこれを機にしっかり復習するようにしましょう!
<連載「基礎力チェック! 消費税課税判定クイズ」バックナンバー>
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回(最終回)
【執筆者紹介】
川上 悠季(かわかみ・ゆうき)
慶應義塾大学卒業。
23歳で税理士試験官報合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、事業税)。
2022年日税研究賞入選。2024年新日本法規財団奨励賞(会計・税制分野 優秀)受賞。
自身が税理士受験生だったときにスマホアプリ「消費税法 無敵の一問一答」を開発。「楽しく学ぶ」をモットーに、アプリやウェブサイト、SNSなどを通じて消費税法の知識を広く発信している。
・X(@YukiKawa_Tax 本人アカウント)
・X(@mutekishouhizei 消費税法一問一答アプリアカウント)
・「消費税法 一問一答アプリ」公式ホームページ