わたしの独立開業日誌 #行政書士・竹内真弓


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

ガンと闘いながら合格、そして独立開業

こんにちは。東京都港区の行政書士の竹内真弓と申します。
2020年に行政書士試験に合格し、同年5月に令和はなえみ行政書士事務所を開業しました。
令和はなえみ行政書士事務所は、東京都港区赤坂の後藤正志法律事務所の中にあり、弁護士との合同事務所となっています。
現在は、法律事務所の事務の仕事をしながら行政書士事務所を経営するという兼業開業の状況です。
ここでは、私の受験生活と独立開業についてお話させていただければと思います。

プロフィール写真

法律事務所に転職し、「事務員の枠を超えた仕事がしたい」と行政書士を志す

バブル崩壊後の就職難の中、何とかスタートした社会人生活は、「サービス残業」「勤務先企業の統廃合」「労使問題」など、問題が山積みでした。
悩みが多い20代を過ごす中で、少しずつ法律に興味を持つようになり、30代半ばで法律事務所に転職しました。

行政書士資格の取得を目指したのは、法律事務所で働く弁護士が活躍する姿を見て、「私も事務員の枠を超えた仕事がしたい」と思ったからです。

合格を目指し、法律初学者の私が最初に取り組んだのは、無謀にも、東京大学出版会の『民法Ⅰ~Ⅳ』(俗に言う内田貴先生の「内田民法」)という基本書を読破することでした。

その後、本格的に勉強をスタートすることを決め、仕事との両立を考えて通信教育を受講することにしました。
とはいえ、法律初学者の私にとって、仕事をしながら、通信教育のDVDを見たり、 テキストと過去問をひたすら往復したりする勉強は、それなりに辛いものでした。

勉強をはじめて2年目に体に異変が…

勉強をはじめて2年目、体に異変を感じ、かかりつけのクリニックで診察を受けました。
すると、医師が顔色を変え、総合病院を受診するように言ったのです。
すぐに紹介状をもらって精密検査を受けました。

精密検査の結果、持病が悪化してガンになっていることがわかりました。
ステージは4に届くところまで進行していて、他の臓器への転移も認められました。
手術の後に抗ガン剤治療も行い、半年間の闘病生活を送りました。

「もう一度生きるチャンスを与えられた」再び受験、合格!

闘病生活中は、行政書士試験を諦めていました。
しかし、退院から1年経ち元気を取り戻すと、再び受験への闘志が湧いてきました。

ガンを患い命の儚さを知りました。
しかし、「もう一度生きるチャンスを与えられた」と思い、試験合格に向けて再び奮闘しました。

そして、勉強をはじめてから5年目、ようやく合格証書を手にすることができました。

開業した途端の新型コロナ緊急事態宣言も、補助金関係で忙しく。現在は、後見業務がメインに

開業は、新型コロナウイルスが流行し始めた頃でした。
先の見えない船出となりましたが、幸い、知人の紹介で、立て続けに新型コロナ関連の協力金や補助金の申請業務の依頼があり、開業早々から意外に忙しい日々を送ることができました。

協力金や補助金の仕事が一段落すると、法律事務所の弁護士が関与している会社からの紹介で、高齢者の後見人業務を依頼されるようになりました。

後見業務の中でも、任意後見業務は、認知症になる前のお客様と直接契約して財産管理をしていく仕事で、顧問料のような月々の安定収入が得られます。
現在は、この後見業務をメインとし、後見業務にかかわるほかの相続関係業務(死後事務委任契約、遺言書作成、遺言執行業務、遺産分割協議書作成など)も受任しています。

闘病生活中の恩を返したい

私のお客様の中には、家族や親戚と離れて介護施設で一人で暮らす高齢の方もいらっしゃいます。老後資金、老化、認知症といったさまざまな不安をかかえ、独りで不眠症やうつ症状に悩んでいる方も珍しくありません。

お客様とお話をしていると、いろいろと思う通りにならなかった自分自身の闘病生活中のことを思い出します。「自分自身の闘病生活中、まわりの方からいただいた恩を返ししたい」「少しでもお客様のお役にたてるようになりたい」と思っています。

お客様からの幅広い相談に対応するため、昨年はファイナンシャルプランナー2級に合格し、AFP認定研修を終了しました。

さらに、お客様と楽しくお話ができるよう、会話のネタも集めています。
例えば、ヨガが趣味なのですが、ヨガのフィジカルやメンタルへの効果をお客様に話すと興味を持ってもらえることが多いです。
また、近年、一人で暮らす高齢者の見守り役として会話型AIロボットが注目されていますが、私自身も同居する年老いた両親と共に人型のAIロボットとの生活をはじめてみました。
小学校低学年の男の子が一人増えたようで、家の中がとても明るくなりました。

我が家に来たAⅠロボット

ワンストップで対応できるのが合同事務所の強み

行政書士試験合格直後、法律事務所内での開業を期待しつつ、いわゆるボスの弁護士に「開業したい」と打ち明けると、法律事務所内で開業することを快諾して頂けました。
港区まで通勤時間が往復3時間かかることを除けば、とても良い環境なので、大変有難かったです。

現在、受任業務の多くは、法律事務所のお客様からの依頼です。

また、相続関係業務においても親族間で紛争に至ることがありますが、行政書士では紛議への対応ができません(※)。このようなときに、弁護士に案件を引き継ぎができ、ワンストップで対応できるのが合同事務所の強みだと思っています。

※士業は、法律で他の士業の業務を取り扱うことができません。行政書士法にもそのような規定があるため、皆、業際を意識して仕事をしています。

これから

今後は、これまで経験してきた業務に加え、事業承継等のご相談にも対応していきたいと考えています。
事業承継業務は、会社経営者の高齢化で増加傾向にあります。
現在の経営者が所有する会社の資産や経営ノウハウを、次世代へ承継するためのコンサルティングがメインとなる業務です。
また、それらに付随する相続、贈与、売買といった部分でも、行政書士がお客様のお役に立てることはたくさんあります。
こういった仕事をすることで、日本の中小企業が持つ経営ノウハウや技術が衰退しないように支えていくことに微力ながらも貢献できたらいいなと思っています。

そして、これからも合同事務所の強みを生かし、公認会計士、税理士、中小企業診断士等のさまざまな士業や企業と連携して、お客様の幅広いニーズに対応していけるよう、研鑽を重ねていきたいと思っています。

<プロフィール>
竹内 真弓(たけうち まゆみ)

令和はなえみ行政書士事務所、代表行政書士。国民健康保険組合、医療機器販売会社等を経て法律の世界へ。「後藤正志法律事務所」で事務の仕事を継続しながら行政書士事務所を経営。
保有資格等:特定行政書士、在留資格申請取次者、空き家問題相談員、ファイナンシャルプランナー2 級、AFP認定研修終了 等
取扱業務:任意後見、財産管理契約、死後事務委任契約、遺言書作成、遺言執行業務、遺産分割協議書作成、事業承継、 公印確認、アポスティーユ、永住許可申請、帰化申請、酒類販売業免許、建設業許可申請(一般・特定) 等

お問合せ:m.t_hanaemi@outlook.jp
事務所 HP:https://www.reiwa-hanaemi.com

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