大野修平(公認会計士・税理士)
【編集部より】
ChatGPTの登場以来、ビジネス誌などでも頻繁に特集が組まれ、仕事への活かし方や注意点、課題などが取り上げられるようになるにつれ、得体の知れない未知のものではなくなってきているのではないでしょうか。その一方で、やはりまだどことなく活用しきれず、距離を感じたままということもあるでしょう。特に、新しい技術ゆえにアップデートも早く、追いつくことさえ難しい面もあります。
そこで、本連載では、税理士・会計士・会計事務所でどのようにChatGPTを活用すればよいかについて、ChatGPTに関する情報発信も多くされている大野修平先生(公認会計士・税理士)にご紹介いただきます!(毎月1回掲載予定)
みなさん、こんにちは。セブンセンス税理士法人の大野修平(公認会計士・税理士)と申します。
この連載では、ChatGPTなどの生成AIに興味がありながらも、まだ使ったことがない方や、使ってはいるけどより良い使い方を知りたいという方に向けて、少しでもそのヒントになるようなことをお話できればと思います。
大きな注目を集めるChatGPT
あらためてお伝えするまでもありませんが、ChatGPTが大きな注目を集めています。
プログラミングなどの知識がなくても、普段我々が話している言葉(自然言語)で動かすことができるこのAIは、無料公開後2ヶ月で1億人を超えるユーザーを獲得し、大きな話題になりました。
アメリカの金融系企業であるゴールドマン・サックスは「ChatGPTは、3億人のフルタイムの仕事を自動化できる」との報告書を発表し、ビル・ゲイツは「ChatGPTは、インターネットや携帯電話と同レベルの発明」と言っています。
特に、2023年3月15日にリリースされたGPT-4には、私自身も非常に驚かされ、大きな興奮とともに危機感を覚えました。
ChatGPTの底力
ChatGPTは汎用的でありながら、専門的な知識も持ち合わせています。
例えば、GPT-4はアメリカの司法試験で上位10%に入る成績を出すだけでなく、公認会計士を含む4つの難関試験にも合格しています。
また日本の医師国家試験にも合格したと報道されています。
その威力は凄まじく、既存のサービスがChatGPTに代替されるという懸念から株価が暴落した企業も出てきました。
避けては通れない潮流の中で
さて、このようなChatGPTの能力には、みなさんも大きな不安を抱えていらっしゃるかもしれません。
しかしながら、この大きな流れを止めることは誰にもできないのです。
AIに仕事を奪われる日が近づいて来ていることを感じるかもしれません。
ただ、よく考えてみると「AIが仕事を奪う」という表現は正しくありません。
AIを使っているのはあくまで人間ですから、正しくは「AIを上手に使う人間に仕事を奪われる」ということになるでしょう。
そうであれば、我々もそちら側、すなわちAIを上手に使う側になる必要があります。
そうすれば、仕事を奪われるどころか、AIと協働しながら新しい仕事を生み出していけるのだと思います。
検索ではなく、やりとりをしよう
さて、ChatGPTをどのように業務に活かしていくかは、次回から少しずつお話していきますが、今日はその大前提となることをお伝えして終わりにしたいと思います。
それは、
「ChatGPTで検索するな。ChatGPTとはやりとりをしよう」
というものです。
私の周りではChatGPTに対する評価は賛否両論です。おそらく皆さんの周りもそうではないでしょうか。
もしかすると皆さん自身が「ChatGPTって使えないよね」と思っているかもしれません。
私の周りでChatGPTが使えないと言っている人に共通するのは、「ChatGPTで検索している」ということです。
例えば、
「大野修平(自分自身)について教えて」とか「セブンセンス税理士法人(自分が所属する会社)について教えて」のような形です。
ChatGPTは自分でも詳しく知らない特定のトピックについても、それっぽい回答を試みます。
もっとはっきりと言えば、詳しく知らない事項についてもデタラメの回答をするということです(これを「ハルシネーション」といいます。最近はハルシネーションが起こらないように、ChatGPTの回答もかなり改善されていますが)。
実は、ChatGPTに対して「◯◯について教えて」といったように、検索ツールとして使うのは適切ではない使い方なのです。
そもそも今回のケースでは、自分自身についてChatGPTを使って検索しているのですが、自分自身のことはChatGPTより自分が知っているはずです。
自分自身でなくても、自分が詳しい事柄(例えば自分が所属する会社など)についての検索も同様です。
つまり、わざわざChatGPTで調べるようなことではないのです。
また、逆に自分が全く知らない分野についてChatGPTで検索するのも間違った使い方です。
例えば「量子力学におけるシュレーディンガー方程式について教えて」といってChatGPTが何か回答したとしても、その分野に知識がなければ、ChatGPTの答えが正しいのか間違っているのかを判断することができません。
あくまで現時点での話ですが、検索をしたいのであればGoogleなどのそれに特化したツールを使うほうが良いでしょう。
ChatGPTで何かを検索することはやめて、「やりとり」をしていただきたいのです。
みなさんが同僚や部下などとやりとりしているように、ChatGPTともやり取りをするのです。
では、具体的にどうやってやりとりをすればよいのか。どんなやりとりが望ましいのか。
次回以降、少しずつお話していけたらと思います。
<執筆者紹介>
大野修平(おおの・しゅうへい)
公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験がある。また、スタートアップ企業の育成・支援にも力を入れており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。
・Xアカウント(@Shuhei_Ohno)
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