連結会計の仕訳に強くなる超基礎トレーニング【第17回】成果連結:応用論点(仕入未達取引)


関口高弘
(公認会計士)

【編集部より】
会計人コースWebの読者アンケートによると、「連結会計」をマスターしたいという声がちらほら。日商簿記2級でも定番論点の一つとなり、会計士・税理士試験など会計系資格の合格を目指す人にとって避けて通ることのできない論点です。
そこで、本連載では、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』の著者である関口高弘先生(公認会計士)に、「連結会計」の仕訳問題を週1回のペースで出題していただきます(毎週金曜日掲載予定)。
本連載で出題する問題は、連結会計に関する日商簿記2級レベルのインプット学習が一通りできた人を対象に、日商簿記1級や税理士試験・公認会計士試験にステップアップを目指す人にとって「土台」となる内容を想定しています。なお、毎回のテーマによって出題数は変動します。
もし本連載でつまずいた問題があれば、もう一度テキストでしっかり復習しましょう!

「本連載のねらい」はコチラをご覧ください。

さらに問題を解きたい方は、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』をチェック!

今回のポイントー仕入未達取引

親子会社間で商品の販売を行う場合、例えば、親会社が子会社に商品を発送したが、子会社に商品がまだ到着していないというような取引を未達取引といいます。

この取引も連結会社間の取引であるため相殺消去する必要がありますが、親会社は出荷時に売上高を計上しているものの、子会社は仕入計上していないため、このままでは相殺消去ができません。

そこで、いったん子会社側で未達取引を計上した上で、当該商品は企業集団の期末在庫として残るため、同時に商品勘定へ振り替える必要があります。

その後、内部取引の消去及び未実現損益の消去を行います。

【計算例】
×4年度末に、親会社は商品(仕入原価¥1,000)を¥1,200で子会社に掛販売し売上高を計上したが、×4年度中に子会社に商品が到着しなかったため、子会社では未計上となっている。

〔親会社の×4年度の個別財務諸表〕

(借)売掛金1,200 (貸)売上高1,200 

〔子会社の×4年度の個別財務諸表〕

(借)仕訳なし  (貸)   

〔×4年度の連結修正仕訳〕

① 子会社における未達取引の計上

(借)売上原価1,200 (貸)買掛金1,200 
 〔当期商品仕入高〕      

② 期末在庫となるため、商品勘定への振り替え

(借)商品1,200 (貸)売上原価1,200 
     〔期末商品棚卸高〕  

③ 取引高及び債権債務の相殺消去

(借)売上高1,200 (貸)売上原価1,200 
     〔当期商品仕入高〕  
(借)買掛金1,200 (貸)売掛金1,200 

④ 未実現損益の消去

(借)売上原価200 (貸)商品200 

問題(全1問)

下記の各取引について仕訳しなさい。なお、勘定科目は、設問ごとに最も適当と思われるものを選ぶこと。
(なお、スマホでご覧の方は「画面をヨコ」にすると仕訳や表が見切れないのでオススメです。)

東京商事株式会社は、大阪商事株式会社に対して売上総利益率10%で商品を販売している。東京商事株式会社は、×4年度中に大阪商事株式会社に商品を¥2,500で販売したが、×4年度末において大阪商事株式会社に商品が到着しておらず、大阪商事株式会社では仕入未計上となっている。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の80%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

売上高買掛金売上原価商品
売掛金のれん非支配株主持分非支配株主に帰属する当期純損益

解答

(1)未達取引の計上

(借)商品2,500 (貸)買掛金2,500 

(2)取引高及び債権債務の相殺消去

(借)売上高2,500 (貸)売上原価2,500 
(借)買掛金2,500 (貸)売掛金2,500 

(3)未実現損益の消去

(借)売上原価250 (貸)商品250 

東京商事株式会社から仕入れた期末商品2,500×売上総利益率10%=250

今回のトレーニングは以上です!
次回は8月25日(金)に公開予定です。それまでにしっかり今回の復習をしておきましょう!

【執筆者紹介】
関口 高弘(せきぐち・たかひろ)
1976年5月神奈川県生まれ。1998年10月公認会計士試験合格。1999年3月中央大学商学部会計学科卒業、2001年3月中央大学大学院商学研究科博士前期課程修了。公認会計士試験合格後、大手監査法人で上場企業を中心とした会計監査に従事。2002年4月公認会計士登録。日商簿記検定試験(商業簿記・会計学)、税理士試験(簿記論・財務諸表論)、公認会計士試験(財務会計論)の受験指導歴17年。現在は、中央大学経理研究所専任講師、中央大学商学部客員講師、朝日大学経営学部非常勤講師、高崎商科大学商学部特命講師他を務める。

<連載バックナンバー>
【第2回】資本連結:支配獲得日の会計処理①
【第3回】資本連結:支配獲得日の会計処理②
【第4回】資本連結:支配獲得後の会計処理①
【第5回】資本連結:支配獲得後の会計処理②
【第6回】成果連結:債権債務の相殺消去(資金取引)、期末貸倒引当金の調整
【第7回】成果連結:債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第8回】 成果連結:期末未実現損益の消去(ダウン・ストリーム)
【第9回】成果連結:債権債務の相殺消去(アップ・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第10回】 成果連結:期末未実現損益の消去(アップ・ストリーム)
【第11回】 資本連結:開始仕訳①
【第12回】 資本連結:開始仕訳②株主資本等変動計算書の勘定科目
【第13回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(ダウン・ストリーム)
【第14回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(ダウン・ストリーム)
【第15回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(アップ・ストリーム)
【第16回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(アップ・ストリーム)
【第17回】成果連結:応用論点(仕入未達取引)
【第18回・完】成果連結:応用論点(連結会社振出の手形の割引・裏書)

<もっと問題が解きたい人へオススメ問題集>

会計士・税理士・簿記検定 連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集
(関口高弘 著・中央経済社)
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