連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(本試験直前総復習10)ー リース会計


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。

Q1(空欄補充)
ファイナンス・リース取引については,(  ①  )に係る方法に準じて会計処理を行う。
借手は,リース取引開始日に,(  ①  )に係る方法に準じた会計処理により,リース物件とこれに係る債務を(  ②  )及び(  ③  )として計上する。
貸手は,リース取引開始日に,(  ①  )に係る方法に準じた会計処理により,所有権移転ファイナンス・リース取引については(  ④  )として,所有権移転外ファイナンス・リース取引については(  ⑤  )として計上する。

A
① 通常の売買取引
② リース資産
③ リース債務
④ リース債権
⑤ リース投資資産
*リース会計基準9項,10項,13項
『借りたら“買った”,貸したら“売った”と処理する』

Q2 ファイナンス・リース取引に該当するための要件を2つ挙げなさい。

A
(1) 解約不能(ノン・キャンセラブル)
(2) フルペイアウト
※フルペイアウトの判定には,現在価値基準と経済的耐用年数基準がある。
*リース会計基準5項
『物件の代金をリース料として長期に分割払いしているのと同じ』(桜井23版,192頁)

Q3 リース取引とはどのような取引をいうか?

A
リース取引とは,特定の物件の所有者たる貸手が,当該物件の借手に対し,合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用収益する権利を与え,借手は,合意された使用料(リース料)を貸手に支払う取引をいう。
*リース会計基準4項
『民法上の賃貸借契約に類似しているのだが…』(民法601条)

Q4 ファイナンス・リース取引とはどのようなリース取引か?

A
ファイナンス・リース取引とは,リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で,借手が,当該契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ,かつ,当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。
*リース会計基準5項
『解約不能とフルペイアウトの要件を満たした“リース取引”のこと』

Q5 なぜファイナンス・リース取引は売買処理しなければならない?

A
ファイナンス・リース取引については,それが所有権移転ファイナンス・リース取引か所有権移転外ファイナンス・リース取引かに関わらず,その経済的実態がリース契約に基づくリース物件について売買が行われたのと実質的に異ならないから。
*リース会計基準29項
『法的形式よりも経済的実質を重視する“実質優先の原則”をとる』(桜井23版,192頁)

Q6 ファイナンス・リース取引のリース資産の減価償却はどのように行うか?

A
所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は,自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する。
所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は,原則として,リース期間を耐用年数とし,残存価額をゼロとして算定する。
*リース会計基準12項
『返還するなら耐用年数はリース期間,残存価額はゼロ』(桜井23版,195頁「設例11」)

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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