【他資格に学ぶヒント】司法試験講師石橋侑大先生×東大在学中司法試験一発合格者(前編)


<編集部より>
会計人コースWebでは、会計士・税理士・簿記検定を中心に勉強法を取り上げていますが、「どんなやり方が自分に合っているの?」とまだまだ模索中の人も多いハズ。
そこで、今回は「他資格から勉強法のヒントを学ぼう」ということで、司法試験講師である石橋侑大先生(アガルート)と令和3年度予備試験・令和4年度司法試験に一発合格した東京大学4年生のM.Sさんに対談をしていただきました(前編・後編)。
前編では、勉強が得意になる3つのコツについてお話いただいています。

東大在学中に司法試験・予備試験に合格!

石橋先生 久しぶり! 司法修習の忙しいときにありがとう。

Sさん お久しぶりです。今、千葉で司法修習中(76期)です。先生は2冊目の書籍、おめでとうございます。

石橋先生 ありがとう!受験生の「こんな本が欲しい」という声から生まれた書籍です。

さて、Sさんは今、東京大学4年生ですね。東大在学中の司法修習生か!大学2年生の2019年6月から勉強を始めて翌年2020年予備試験に合格、さらに2021年司法試験に合格。両方一発合格。改めてすごいね…。なぜ司法試験の勉強を始めたの?

Sさん 手に職を付けたいなと思って資格試験を受けることを決めました。東大の法学部にいて、周りに司法試験に挑戦している人が周りに多い環境でしたし、当時はほかの学問、例えば会計学には興味がなかったので、司法試験を受けてみようかなという感じです。

石橋先生 どうしても弁護士になりたい!という感じではないのね。例えば、周りが会計士試験に挑戦するような環境だったらそっちに流れてた可能性はある?

Sさん 商学部だったら会計士を目指していたかもしれませんね。

石橋先生 案外、きっかけってそういうものだよね。もちろん、明確なきっかけがある人は強いけれど、明確なきっかけが絶対必要かと言われるとそうではないという。

Sさん やっているうちに法律が好きになったというのはありますね。

石橋先生 大学生だと周りにつられて遊びたくならなかった?

Sさん 1年で受かると決めて周囲にも宣言して友達も理解してくれましたし、コロナ禍で遊ぼうにも遊べない時期でもあったので、それほど遊びたくはならずに試験に集中できました。

石橋先生 周囲に宣言した理由は?

Sさん 言ったほうが頑張れるからです。受からなかったら恥ずかしいのであえて宣言しました。

石橋先生 私も同じタイプなのでわかります。コロナ禍だったことが遊べなくても辛くならない不幸中の幸いでしたね。

Sさん でも、私は1人でずっと勉強していると精神的にまいってくるので、自分から誘ってご飯に行くことはありました。飲み会で二日酔いとかは論外ですが…。

石橋先生 受験仲間やコミュニティを持つことは大事ですよね。

Sさん アガルートの仲間とは、勉強の愚痴を言ったりできて、よい息抜きになりました。

勉強が得意になる3つのコツ

石橋先生 東大生だし、小さいころから勉強が得意だった?

Sさん 正直得意ですね。地元の小学校に通っていましたが、30分の算数のテストで私が1分くらいで終わってしまって。「答えを見たのだろう」とカンニングと疑われたのが印象に残っています。そういったことがあって、「私立にいったほうがいいかもね」と両親に言われ、中学受験しました。

石橋先生 どちらかというと算数が得意だったの?

Sさん 断然算数ですね。高校の先生にも「理系がいいんじゃないかな」と言われました。でも、勉強している感覚として文系のほうが自分に合っている気がしましたし、友達も文系が多かったため、法学部を選択しました。

石橋先生 勉強が得意になるまでの過程ってあった? 

Sさん 小さいころから自分の頭で考えて、「こうなんじゃないかな」と先生に質問に行ったりするのが好きだったことでしょうか。本もよく読んでいました。そういうので培われてきたと思います。

石橋先生 確かに、アガルートのマネオプ(個別指導)でもよく質問してくれましたね。勉強のコツはそういうところにあるのかな。

Sさん 私は、勉強のコツは3つあると思っています。

第1に、自分の頭で考えることです。先生が言っていることや教科書に書いてあることを丸暗記するのではなくて、理解することです。

第2に、暗記とか地味な作業を面倒くさがらずにしっかりやることですね。

第3に、良い質問をすることです。司法試験の勉強となると良い質問をすることは、とても難しいのですが、だからこそ、良い質問をしようと頑張ることはとても勉強になります。

丸暗記ではなく理解

石橋先生 1つ目の「丸暗記ではなく理解」を重視するのは、東大生はみんなそうですか?

Sさん みんなではないですね。「覚えちゃう」だけで点が取れてしまう人もいますし、それが悪いことではないと思います。ただ、司法試験や会計士試験など範囲が膨大な試験をそれで乗り切るのは限られた人にしかできなくて、多くの方は理解しないと正確に覚えられないと思います。

私自身は、「もしかしたらこの教科書は間違っているのではないか」という勢いで理解するまで考えて、納得して初めて覚えるように意識してます。もちろん、範囲が広いのである程度割り切る部分はありますが、重要度に応じてメリハリをつけていました。

石橋先生 「覚えちゃう」で司法試験まで通るのはなかなかレアケースだろうと思います。大学受験までの経験で「丸覚え」の癖がついていて、司法試験の論文対策で伸び悩んで相談に来る東大生はいますね。わかっていないことを無理やり頭に詰めこんだ後に理解しなおす作業は大変です。

地味な作業をちゃんとやる

石橋先生 2つ目の地味な作業をちゃんとやると言うのは?

Sさん 1つ目の理解重視と逆の話になるのですが、司法試験でも最低限覚えなくてはどうにもならない部分があります。私は暗記があまり得意ではないのですが、そういった覚えなくてはならいことを地道に覚える作業をするのは大事だと思います。

石橋先生 その通りだと思います。理論と暗記は車の両輪なのに、暗記を軽視しがちですね。英語の勉強をするときに英単語を覚えずに英作文が書けますか?大学受験のころは当たり前のように赤シートで隠しながら英単語を覚えませんでしたか?みたいな。

どういった方法で暗記をしていましたか?

Sさん 石橋先生に頂いた「定義集」が元ネタなのですが、絶対に覚えなければいけない定義だけをまとめたWordファイルを全科目作成していました。それを、電車の中でひたすら覚えていました。

石橋先生 記述が多い東大の入試対策と司法試験の勉強法に共通する部分はある?

Sさん 例えば、世界史における人名や出来事の名前など正確に覚えていないといけないキーワードがある点では共通していると感じます。

ちなみに、私は、論証集(司法試験の論文答案の解答例を集めたもの)に赤シートを使おうとしたんですが、それはあまり意味がなかったです(笑)。論証集は論理展開を理解して状況に応じて再現できることが大事で、1つのパターンを丸覚えしても意味がないのです。

石橋先生 なるほど。別に赤シートでなくてもいいけれども、暗記は軽視できないということですね。論証をどう覚えていた?

Sさん 問題を解いて解答解説を読んで、答案の流れを見たときのどの部分で論証が出てくるのかを1つにまとめていました。答案の全体像を見越して、同じページに、問題となる条文の要件や当てはめの流れを集約します。

Sさんの書き込んだ論証集

石橋先生 これはすごい!すごく参考になるね。

Sさん 予備試験対策の時に作ったものは、ボロボロになったので、司法試験対策の時はまたゼロから作り直しました。それくらい、1つのものに知識をまとめて、それを使い込むという勉強法はおすすめです。

質問をする

石橋先生 3つ目の質問に関して、すべき質問とすべきでない質問の線引きはどう考えていますか?

Sさん 先生から「いい質問だね」と言われる質問を心がけていました。「調べればわかる」「条文に書いてあるよ」というような質問は、なるべくしないようにしていました。もちろん、そういうこともあったのですが、トライ・アンド・エラーで、次からはもっと良い質問をしようと意識していました。例えば、自分の頭では解決しない「テキストには書いていない暗黙の前提」や「実務感覚からくる理屈」などについて質問するのが、良い質問だと思います。

石橋先生 そこまで考え抜いて質問してくれる受験生はすごいね。講師も気合が入ります。

合格するのに必要な「素直さ」とバランス感覚

石橋先生 一発合格に大事なことって何だと思う?

Sさん 素直さですかね。素直じゃないタイプの人は、合格から遠ざかりがちだと思いますね。過去問を解かないとか。プロである先生がやったほうがいいと言っていることを試さずに自己流を貫くのはナンセンスだと思います。

石橋先生 あまり素直すぎると依存ぽくなるので、塩梅は大事ですが…。講師が言ったことがその受験生にフィットするか否かはわからないけれど、素直に試してくれる受験生は確かに伸びますね。

Sさん チャレンジして合わなかったら修正すればいいだけだと思うんです。私もやってみたけど合わなかったことはあります。ただ、講師の言うことはやはりプロだから、初めから取り入れようともしないのは良くないと思うんです。

それから、素直になる対象を選ぶことも大事ですね。Twitterの良く知らない合格者のやったことを鵜呑みにするのは危険だと思います。

石橋先生 情報の取捨選択は大事ですね。

Sさん 私は予備試験の時はTwitterをよく見ていました。でも、あまり参考になることはなかったかな…。Twitter上の合格者の「○○の時期に○○をこれだけやっていました」というTweetに焦ったりしていました。「こんなこともできていない」「私は合格できないんじゃないか」とストレスになりましたし、振り返ってそういったTweetには誇張が入っていることも多かったなと感じたので、予備試験後はアカウントを消しました。疑問はSNSではなく、直に講師に相談するようにしました。

石橋先生 僕のアカウントから除隊してたのね(笑)

後編へ続く

【プロフィール】
石橋侑大(いしばし・ゆうだい)

元ギャル男にして,現司法試験予備校専任講師。慶應義塾大学法学部法律学科卒。中央大学法科大学院在学中に予備試験に合格して中退,司法試験合格後,司法修習を経て,弁護士登録をすることなく司法試験予備校専任講師となる。「俺の生徒にとってオンリーワンでナンバーワン」をモットーに,個別指導を中心に,年間約2,400通の添削指導を行う。この他,受験生同士の交流会や学生,社会人向けの勉強会を実施するなど,イベンターとしても活躍。著書に,『司法試験・予備試験Q&A50 論文答案ってどう書くの?』(中央経済社)がある。
Twitter:@yudai1122yudai
YouTube:元ぎゃるお先生のちゃんねる


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