【他資格に学ぶヒント】司法試験講師石橋侑大先生×東大在学中司法試験一発合格者(後編)


<編集部より>
会計人コースWebでは、会計士・税理士・簿記検定を中心に勉強法を取り上げていますが、「どんなやり方が自分に合っているの?」とまだまだ模索中の人も多いハズ。そこで、今回は「他資格から勉強法のヒントを学ぼう」ということで、司法試験講師石橋侑大先生(アガルート)と令和3年度予備試験と令和4年度司法試験に一発合格した東京大学4年生のM.Sさんに対談をしていただきました(前編・後編)。
後編では、勉強の無駄の省き方と、予備試験・司法試験一発合格につながったルーティンについてお話いただいています。(前編はこちら

勉強の無駄を省くには?

石橋先生 Sさんが見ていて、無駄だと思う勉強法はある?

Sさん 論証集を勝手に修正しまくる勉強法ですね。もちろん、依拠したりして不正確だから修正するのはいいけど、「覚えやすいかそうでないか」で修正するのは間違いのもとだと思います。

石橋先生 修正理由が合理的かどうか検証する必要がありますね。「書きやすそう」「覚えやすそう」でプロが作ったものを加工するのは、ある程度レベルが高い方じゃないと危険ですね。

Sさん 私自身は、論証集の使い方として、「これは判例通説じゃなくて特定の学説だな」と思ったら付箋を付けたり、「出題趣旨」「採点実感」にある規範だなと思ったら欄外に書き込んだりして、根拠を持って修正していました。

石橋先生 根拠を持って修正するのは大事ですね。ちなみに、「出題趣旨」「採点実感」に関してまとめた本が出ます!

新刊!好評発売中

Sさん 私の時に欲しかったです。

石橋先生 間に合わなくて、ごめんなさい(笑)。この本を読むと、効率的に論文対策ができますね。ぜひ、後輩にすすめてください。

他に、無駄だと思うのは?

Sさん 基本をちゃんとやらずに、すぐに難しいことに走る勉強法ですね。基本が疎かだとどうにもならないので。あと、わからないとすぐにインプットに戻るのもダメだと思います。講義を見直したりテキストを読んだりするのではなくて、問題を解きながらインプットしていく方法が効率的だと思います。

石橋先生 それ、サッカーやるのにマニュアル本ばかり読んでいるような状況ね。もっとボール蹴れよ!走れよ!と言う感じですね。

たしかに論文答案を書いてみて、出来なくてインプットに戻りたがる受験生は多いね。Sさんのいうとおり、「インプットが足りないんじゃないか」と言う相談がたくさんあります。

Sさん 私も、勉強を始めたころは、本当に書けなくて、「向いていないんじゃないか」と途方にくれました。

それを先生に相談したら「そういうもん、さあ行こう!」と次の課題を渡されて必死にやりました。

後輩の受験生からよく「どういうインプットすればよいですか」と聞かれるのですが、インプットのせいとは限らないんだよな…と思います。

勉強のルーティン

時間

石橋先生 Sさんは1日何時間くらい集中して勉強できる?

Sさん 普段は「何時間やる」を意識はあまりしていません。やるべきことを決めて、それをこなす感じです。

時間で言うと、大体8時間だと「今日はあまり勉強していないな」と思います。大学の授業を含めると平均12時間くらいでしょうか。

石橋先生 すごいね。大学の授業なで寝ているような学生も多い中…

Sさん 全部の授業じゃないんですけど、ちゃんと勉強しています。

他方で、12時間以上勉強すると次の日コンディションが悪くなるのが経験則としてわかっているので、1日の勉強時間の上限はそれくらいにしていました。

メンタル

石橋先生 まったく勉強できない日はあった?

Sさん モチベが出ない、メンタル的にやられる日もありましたね。丸一日勉強しないことはないけれども、半日くらいやる気が起きない日はありました。

石橋先生 Sさんでもそういう日があるのね。

Sさん 私はモチベーションを維持するのがあまり得意でないタイプです。もちろん、モチベある日に頑張るんじゃなくて、モチベない日も勉強する人が強いと知っています。でも、わかっていても心が追いつかない日はありました。

特に、予備試験の短答後は燃え尽きましたね。論文対策やりたくない、となりました。予備試験の論文後も燃え尽きましたね。

石橋先生 メンタルの調整は難しいね。

Sさん できない自分が嫌でしたね。それで、勉強が滞るとやるべきことがあるのにできないという罪悪感がありました。1番強く覚えているのは、司法試験の1か月前あたりです。

民法の答案がどうしても時間内に書ききれず途中答案になってしまう状況に陥ってしまいました。それが行政法など他の科目にも影響して。

石橋先生 途中答案スランプだね。

Sさん その時は、半日くらいかけていろいろな人のブログを読んだり、自分の過去の途中答案を検証する「時間がなくならない方法だけを考える日」を作りました。そしたら、途中答案がなくなりました。真正面からスランプの原因と向き合ったのが良かったと思います。解決策は常に視界に入る位置に時計を置くとか、些細なことなのですが…。

石橋先生 1か月前は焦るよな。

Sさん もっと勉強したいのに、法律以外の問題で悩みました。「もっと早く手が動けば」と思いましたが、そういうわけにはいかないですし。

石橋先生 自分で解決を試みるところが素晴らしいね。自分で考えずに、何でも人に聞いてしまう人は多いですが、Sさんのように自分と向き合うことは大事ですね。相談されたら、アドバイスはしますが、それがフィットするかは他人だからどうにもわからないですね。

勉強場所

石橋先生 いつもどこで勉強している?

Sさん アガルートの自習室です。開館から閉館までずっといました。アガルートは予備試験までで、司法試験は最寄りの図書館や大学図書館に行っていました。大学受験のころから、基本的に家で勉強しないのがマイルールです。家ではリラックスを心がけていました。

石橋先生 マイルールを徹底しているのね。

Sさん これは、大学受験のときに高校の先生におすすめされた方法です。家でさぼったりすると罪悪感があると言ったら、「勉強は家以外でやるといい」とアドバイスされました。それが私には嵌りましたね。コロナ禍のときは、会員制の自習室を借りました。月額1万円くらいで出費は痛かったですが…。

石橋先生 私は気分やタイミング次第なのですが、自習室、家、マック等々色々な場所で勉強していました。昔は渋谷のヤマダ電機のベンチで勉強していて怒られたなぁ。

Sさん さすが元ギャル男ですね。

勉強の友

石橋先生 勉強の友、1つ挙げるとすれば?

Sさん タリーズのコーヒーですね。350mlの。カフェインを取り入れて朝から頑張ります。夜はお風呂に入って、その後はしっかり休みたいので、その分朝早くから勉強します。それを助けてくれるのがタリーズのコーヒーでした。

石橋先生 なるほど。夜を見越した上での朝のタリーズ。本試験にこれ持っていく!とか他にルーティンはある?

Sさん 予備の短答から司法試験口述まで「森永のラムネ」は必ず持って行っていました。こまめに糖分を補給したかったので。本試験系のルーティンって忘れると怖いので、どこでも再現できないといけないと考えているのですが、この森永のラムネはどこのコンビニでも売っているので忘れても何とかなるのがいいですね。

座右の銘

石橋先生 座右の銘ってある?

Sさん 野村克也監督の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」ですね。調子がいいときには常にこの言葉を思い返しました。昔からこのスタンスを大事に勉強しています。

もっと勉強して自分の強みを尖らせたい!

石橋先生 これからどんな法曹をめざしたい?

Sさん 最近は司法修習が実務修習に入り、いろいろな事件を見ています。法律だけに詳しくてもいい法律の適用、あるべき法律の適用は難しいと感じています。むしろ、法律以外のことをやってはじめてできること、わかることもあるなと。だからこそ、いろいろなことを知りたいです。商法が好きなので、税務や会計など隣接するところも勉強していきたいですね。

石橋先生 まさにそうだよね。法律だけ知っていても、いい法曹になれない。

Sさん 最近会計もちょっとかじっています。

石橋先生 CPAの国見先生も喜ぶね。

Sさん 自分の強みを考えたときに、小学生の頃から算数が得意だったのを思い出したんです。数字に強かったり、理屈をパズルのように操作するのが得意なのはまさにその延長線上だと思います。それを伸ばしていきたいですね。

さらに、法律の適用それ自体だけでなく、「こういうルールがいいんじゃないか」という少し上の視点から考えられる仕事がしたいなと思っています。

石橋先生 対企業だったらコンサルティングとかかな?

Sさん 法律ができるコンサルみたいな立ち位置には、興味がありますね。

石橋先生 向いていそう。将来が本当に楽しみ!

難関試験受験生へのメッセージ

石橋先生 難関資格受験生へのメッセージをお願いします。

Sさん 資格をとると今までの環境とはガラッと変わります。まずは周囲からの見られ方、特に自分の発言の説得力とかも変わってきます。それをモチベーションにぜひ頑張ってください。

また、難関試験もあくまでも資格試験です。法律学と会計学を学ぶこととはまた違うと思うんです。知的好奇心と関係なく、「やるべきことをやる」人が合格できるので、そこは区別した方がいいと思います。

石橋先生 やりたいこととやるべきことを区別する、大事ですね。

Sさん 私は、勉強していてだんだん法律が面白くなったので、単純な暗記はストレスでした。でも、試験の間は諦めて耐えていました。合格することが最優先です。

石橋先生 非常に重要ですね。暗記が嫌いでも合格のためには暗記を頑張るしかない。それは試験の本質だと思います。刺さりますね。ありがとうございました。

【プロフィール】
石橋侑大(いしばし・ゆうだい)

元ギャル男にして,現司法試験予備校専任講師。慶應義塾大学法学部法律学科卒。中央大学法科大学院在学中に予備試験に合格して中退,司法試験合格後,司法修習を経て,弁護士登録をすることなく司法試験予備校専任講師となる。「俺の生徒にとってオンリーワンでナンバーワン」をモットーに,個別指導を中心に,年間約2,400通の添削指導を行う。この他,受験生同士の交流会や学生,社会人向けの勉強会を実施するなど,イベンターとしても活躍。著書に,『司法試験・予備試験Q&A50 論文答案ってどう書くの?』(中央経済社)がある。
Twitter:@yudai1122yudai
YouTube:元ぎゃるお先生のちゃんねる


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