どこ(ワシントン州USCPA)
<編集部より>
「英語」×「会計」を強みにしてスキルアップを目指したいと考えている人も多いのではないでしょうか。日本語では知っている簿記や会計の用語でも、英語では何と言うのか意外と知らないかもしれません。
そこで、本連載では、『USCPAになりたいと思ったら読む本』(中央経済社)の著者でワシントン州USCPA(米国公認会計士)のどこ先生に、英文会計をゼロから始めるときに知っておきたいことを超入門レベルから教えていただきます(全10回予定)。英語に抵抗がある人も、本連載で登場する「困った君」と「どこ先生」との会話を楽しみながら気軽に始めてみませんか。
「仕訳」の会計用語、英語で何と言う?
どこ:
前回は、簿記(Bookkeeping)という技術で取引(Transactions)を記録し、最終的に財務諸表(Financial Statements)という報告書を作るという話をしたよ。
困った君:
簿記(Bookkeeping)での取引(Transactions)となるものを記録していくんだよね。
どこ:
そうだね、簿記(Bookkeeping)での取引(Transactions)は、資産(Assets)・負債(Liabilities)・資本(Equity)のどれかが動くものだよ。
困った君:
この記録って仕訳をするってことだと思うけど、仕訳ってどんなのだっけ?
どこ:
仕訳は取引(Transactions)に名前を付けて分類することだね。
英語で仕訳は「Journal Entry」や「Journalizing」と言うよ。
困った君:
そもそも仕訳(Journal Entry)ってどうやるんだっけ?
どこ:
仕訳(Journal Entry)は大きく分けると3つのステップがあるよ。
取引(Transactions)を2つの側面からとらえて2つに分けて、取引(Transactions)の内容を表す勘定科目を決めて、勘定の左右に分けて金額を記入するよ。
仕訳(Journal Entry)の3ステップ
1.取引(Transactions)を2つに分ける。
2.勘定科目(Account Title)を決める。
3.勘定(Account)の左(Debit)と右(Credit)に分け、金額を記入する。
困った君:
取引(Transactions)は2つに分けるんだね。
どこ:
たとえば建物を現金で買ったときは、「建物の増加」と「現金の減少」という2つの側面があるよね。だから2つに分けることになるよ。
困った君:
それから勘定科目を決めるというけど、勘定科目って何だっけ?
どこ:
勘定科目は、誰が見てもわかるようにするための簿記(Bookkeeping)での共通言語だと思うといいね。
英語で勘定科目は「Account Title」だよ。
困った君:
勘定科目(Account Title)ってたくさんあって、英語で覚えるのが大変そう。
どこ:
勘定科目(Account Title)は現金(Cash)、売掛金(Accounts Receivable)、売上(Sales)などたくさんあるけど、よく使うものは決まってくるから、何度も見ていれば覚えると思うよ。
また後の回で勘定科目(Account Title)について詳しく見ていくから、今のところは心配しないで大丈夫。
困った君:
さらに、2つに分けた取引(Transactions)を勘定の左右に分けて金額を記入するわけだね。
どこ:
勘定の左側が借方、右側が貸方だね。
英語で勘定は「Account」、借方は「Debit」、貸方は「Credit」と言うよ。
困った君:
DebitとCreditの読み方は?
どこ:
Debitは‟デビット”、Creditは‟クレジット”だよ。
困った君:
‟借方の金額の合計と貸方の金額の合計は必ず一致する”って簿記3級で習ったけど、英文会計でも同じかな?
どこ:
複式簿記の原理(Double-entry System)だね。
これは世界共通で、英文会計でも同じだよ。
英語で借方記入は「Debit Entry」、貸方記入は「Credit Entry」と言うよ。
仕訳(Journal Entry)のポイント
1.取引(Transactions)は、必ず借方(Debit)と貸方(Credit)の両方に記入される。
2.借方記入(Debit Entry)の合計額と貸方記入(Credit Entry)の合計額は、必ず同額になる。
困った君:
ところでDebitとCreditってどんな意味があるのかな?
どこ:
英語では日常的にはDebitは悪い意味、Creditは良い意味で使われることが多いよね。
でも、英文会計の用語としては、単に‟左”と‟右”の意味で考えればいいよ。
困った君:
そういえば簿記3級でも、‟借方は左、貸方は右と思っておけばよくて、意味はあまり気にしないでいい”と習った気がする。
それで、借方(かりかた)は‟かり”の‟り”が左を向いているから‟左”、貸方(かしかた)は‟かし”の‟し”が右を向いているから‟右”と覚えたよ。
どこ:
英文会計の場合はDebitとCreditを並べて‟デビクレ”と唱えていれば、Debit(デビット)が‟左”、Credit(クレジット)が‟右”と反射的に言えるようになるんじゃないかな。
ちなみに、日本の外資系企業の経理部でも‟デビクレ”という言い方はよくしていて、‟借方と貸方が逆”と言うとき‟デビクレが逆”と言ったりするよ。
借方(Debit)と貸方(Credit)
左 | 右 | 覚え方 | |
日本の簿記 | 借方(かりかた) | 貸方(かしかた) | ‟り”が左向きだから左 ‟し”が右向きだから右 |
英文会計 | Debit(デビット) | Credit(クレジット) | ‟デビクレ”と 何度か唱える。 |
どこ:
略語でDebitは「Dr.」、Creditは「Cr.」と書くのも覚えておいてね。
困った君:
Debitは「De.」じゃないんだね、これは注意だ!
どこ:
あと、仕訳(Journal Entry)の書き方は、日本の簿記と英文会計では違うよ。
日本の簿記では借方(Debit)と貸方(Credit)を横に並べるよね。
でも、英文会計では縦に並べるんだよ。
借方(Debit)が上で貸方(Credit)が下、貸方(Credit)は少し右にずらして書くんだよ。
仕訳(Journal Entry)の書き方
例)10,000ドルの建物(Building)を現金(Cash)で買った場合
<日本の簿記>
(借)建物 10,000 (貸)現金10,000
<英文会計>
Dr. Building 10,000
Cr. Cash 10,000
*Dr.とCr.という記号は省略可能です。
困った君:
英文会計の仕訳(Journal Entry)の形式は、日本の簿記の形式に慣れてるからか、ちょっと違和感があるなあ。
どこ:
英文会計の仕訳(Journal Entry)について見てきたけど、仕訳(Journal Entry)の書き方が日本の簿記と違うのが新鮮だったかもね。
でも考え方は同じだから安心してね。
‟デビクレ”と唱えて、左の借方がDebit、右の貸方がCreditだと覚えておいてね。
困った君:
‟デビクレ”、‟デビクレ”、‟デビクレ”、‟左右”、‟左右”、‟左右”、もう覚えられたよ!
仕訳(Journal Entry)の書き方は、これから英文会計の勉強を進める中で慣れていくことにするね。
<執筆者紹介>
どこ
ワシントン州USCPA(米国公認会計士)
USCPA試験全科目合格後、大手監査法人に転職し、東京事務所の国際部にて、外資系企業をメインのクライアントとする会計監査人になる。
その後タイのバンコクに移住し、米国企業のタイ子会社にて、親会社への会計レポーティングを担当し、さらに帰国後、日系グローバル企業の東京本社にて、連結決算に携わる。
著書に『USCPAになりたいと思ったら読む本』(中央経済社)がある。
・ブログ:USCPAどこのブログ
・Twitter:dokoblog
【バックナンバー】
英文会計「超」入門 ‟この会計用語、英語で何と言う?”(第1回)