【編集部より】
会計士試験の場合、多くのスクールで春開講と秋開講が提供されていることが多いようです。つまり、今の時期から始める人もたくさんいます。そこで、秋スタートならではの学習ポイントを、TAC講師の平林先生に教えて頂きました。
今から始める場合のスケジュール、春から勉強を始めている人をどう追いかけるかなど、初めに知っておきたいヒントが満載です!
平林 黎(TAC会計士講座講師)
受験勉強をやり遂げるための3つのポイント
秋から会計士受験をスタートする方は、これから始まる受験生活にわくわくする気持ちと、既に春・夏から開始している方を追いかける形となるため、最後までやり遂げられるのだろうかという不安の双方を強く感じていらっしゃると思います。
私は今でこそ講師として学習相談を受けたりホームルームを実施していますが、当初学習ペースをうまく作れず、一度受験を断念した経験があります。
そこで、私の失敗談も踏まえ、これから学習をスタートさせる方へ向けて、学習ペースを掴み受験勉強をやり遂げるためのポイントを3つご紹介します。進捗がずれており立て直したい、という方にも参考となれば幸いです。
私の失敗談
私は大学の一般教養と市販問題集で簿記2級を取得してから、卒業論文を始める時期にDVD通信で勉強を開始しました。
最初のほうの講義を見て「あーこれは知ってるな、大丈夫そうだな」とのんびり構えてしまい、卒業論文などに時間を充て、会計士試験の勉強を1月頃までほぼ放置しました。気が付くと、大量のDVDが積み上がっていました。
その後、講義を消化することが目的となってしまい、自宅で倍速受講を断続的に続けました。問題演習やテスト受験を進められず、12月短答はほぼ1日座っているだけの試し受験となりました。
翌年に体調も崩して受験を断念し、数年置いてから再チャレンジして、合格に至りました。
ポイント1.ゴールを知り、逆算する
私が当初失敗した大きな原因として、受験までに必要な道のりをよく知らないままに学習を進めていたことが挙げられます。最後までやり遂げるために、まずはゴールである本試験の問題形式や配点・合格基準、必要な講義回数や定期的なテストの時期、自習時間数の総量等の全体像を把握しましょう。
ゴールがわかれば、いつまでに講義を見るか・どれぐらい自習が必要かなど、逆算して具体的な短期/中期目標を立てることができます。資格試験のスクールに所属されている方は、ガイダンス・ホームルームや前年度の日程表等を参考にしましょう。
大まかなスケジュール
大体の目安として、短答式試験の2・3ヵ月前頃までに、インプット講義受講や基本のテキスト/問題集について復習が不完全でも一通り終えることと、計算科目は1週間に受講した講義の概ね1〜3倍の復習時間を必要とするイメージです(理論科目は0.5~2倍など)。
大学生の方の場合、大学の講義と同じ扱いで、会計士受験の講義・復習をあらかじめ時間割に入れてしまうという方も多いですね。一度、曜日・時間帯を決めてしまえば、予定管理が楽です。
復習のペースについて
数週間前に取り組んだ内容について、自習時間の15~40%など充てましょう。復習がメインの曜日を決めるのもおすすめです。
私の場合、再チャレンジして合格した際は、少し前の内容復習として、毎日午後の数時間と土曜日を充てていました。
想起・言語化
社会人の方の場合には、平日はまとまった自習時間が確保できないことも多いはずです。計算科目について、会計処理を場合分けで想起したり、解法プロセスを言語化すると効果的です。
時間を取れない分だけ、思い出す頻度や負荷を若干高めに設定しましょう。
ポイント2. 学習環境を整える
私が当初失敗した原因として、自分の「やる気」に左右されながら、慣れない自宅学習を一人きりで進めていた点も大きかったと感じます。会計士試験に合格した際は、片道1時間かけて校舎へ毎日通学し、勉強しかやることがない環境に身を置くようにしました。
自宅学習に自信が無い方は、勉強場所や時間帯等をリストアップして試し、特にしっくりくる環境を定番化していきましょう。
短期合格者の方を拝見していると、いい意味で自分の「やる気」「モチベーション」を当てにしない方が多いです。「やる気がなくても自然と取り組める」環境を作ると、自然と学習サイクルが回り始めます。
また、物理的な勉強場所・時間帯と併せて、学習に全力投球できるように、各種環境を整えていきましょう。
■場所
…自習室/図書館/カフェ/大学/電車/自宅(リビング/自室/ベランダ/風呂など)
■時間帯
… 朝/午前/昼/午後/夕方/夜/移動時
■相談環境
…講師、チューター、大学等の先輩、合格者(対面/ネット上)
■ネットとの付き合い方
…スマホは移動時やリラックスタイムに/自習室に着いたらロッカーに入れる/自宅に置いて外出/リビングに置く/箱に入れて鍵を閉める
■体調・メンタル面
…睡眠/定期的な運動/前に進んでいる感覚を作る/就職サポートで相談
通信生の方の場合
可能であれば定期的に校舎で自習・テスト受験を行い、他の受験生の様子を知りましょう。また、最近は対面だけでなくオンラインでの質問環境も整っていますので、そちらをペースメーカーとして活用するのもよいでしょう。
最近だと、Twitterで講師や勉強仲間と緩く繋がるという方も増えてきていますね。
社会人の方の場合
前述した想起・言語化による復習方法を活用するほか、環境を大きく変えて、監査法人の短答合格前採用や会計事務所への転職や、週あたりの勤務日数を減らしたり休職・退職して受験に専念するという道もあります。
30代半ば以上の方は年齢面の不安も有るかと思いますので、会計士講座の就職サポート窓口等で一度ご相談ください。
体調・メンタル面について
会計士試験は、ハードかつ長い闘いです。体調・メンタル調整も受験科目の一つと捉え、特に睡眠は重視しましょう。
また、途中段階のテスト・答練の点数では成果を感じにくいことも多いです。「今日何ページ進んだ」「今日は〇〇ができるようになった」「自信を持って解けて、解答時間が以前の2/3に減った」など、毎日前に進んでいる感覚を意識的に作りましょう。
一日の終わりに、嬉しかったことを振り返るのも効果的です。
ポイント3.定期的な問題演習・分析・相談を行う
私が失敗した大きな原因として、問題演習や定期的なテストを実施せず、自分の立ち位置を把握していませんでした。「とにかく講義を進めよう」と放置したため、いざ問題集を開いて、あまりにもわからず呆然としたことを覚えています。
程良い難易度の問題を解き、分析
問題演習のポイントは、今の自分にとって「少し背伸びしたら解けるレベルの問題」を解くことです。筋トレでいうと、突然100kgの重りにチャレンジのではなく、まずは軽い重りから正しい姿勢で上げ下げして、少しずつ様子を見て負荷を上げていくイメージです。
もしも自分にとって難易度が高過ぎると感じたら、テキスト例題に戻ったり、補助としてテキストを見ながら問題にあてはめる意識で取り組むと、徐々に力が付いてきます。ある程度学習が進んだらテキストを横に置いて過去問を見てみると、ゴールとの距離感が掴めます。
解けなかった計算問題については、テキストのどこか覚えられていなかったのか?など分析して、言語化しましょう。具体的な分析については、こちらの記事も参考にどうぞ。
3つの「ミス分析」で”計算力”を高めよう! | 会計人コースWeb
定期的なフィードバックを受ける
分析した結果、具体的な伸ばし方がわからない場合や、自分が立てた今後の方針で問題なさそうか確認したい場合は、講師などに質問・相談しましょう。
既に大学受験を通じて自力で分析・対策を立てる力が身に付いており、全く相談をせずに合格するという方も稀にいらっしゃいますが、周りの同期や合格された受講生さんを見ていると、質問・相談をうまく活用して軌道修正を図っており、その結果として自習時に迷いなく全力投球できているという方が多いです。
体調不良や諸事情により当初の計画からずれたという場合も、ぜひ講師など周囲を頼って進めていただければと思います。
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以上、受験勉強をやり遂げるためのポイント3つ《①ゴールを知り、逆算すること②学習環境を整えること③定期的な問題演習・分析・相談を行うこと》でした。スタートダッシュの参考となれば幸いです。
これから始まる皆さんの受験生活が、実りあるものとなるよう願っています。体に気を付けて、頑張ってくださいね。健闘を祈ります!
<執筆者プロフィール>
平林 黎(ひらばやし れい)
TAC会計士講座講師(財務会計論-理論、個別成績/学習方法相談、質問対応、各種ホームルーム担当)。
1986年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。体調を崩し、会計士受験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得。
2016年公認会計士2次試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
Twitter(@hirabayashi_tac)やLINEで受講生向けの情報発信を行っている。