Ⅴ 【実務家の声】Excelに関するアンケート結果
それでは実際のアンケート結果の詳細をご紹介します。太字箇所は、注目してほしい部分です。
Q1 Microsoft Excel(以下、Excel)は、経理/財務業務全般においてどの程度の重要性がありますか。
・おおいに重要(5社:A、B、D、E、F)
・やや重要(1社:C)
・あまり重要でない(ゼロ)
・重要でない(ゼロ)
Q2 Excelは、会計監査業務(監査法人とのやりとりを含む)においてどの程度の重要性がありますか。
・おおいに重要(3社:D、E、F)
・やや重要(3社:A、B、C)
・あまり重要でない(ゼロ)
・重要でない(ゼロ)
Q3 Excelは、税務業務(税理士とのやりとりを含む)においてどの程度の重要性がありますか。
・おおいに重要(3社:A、D、E)
・やや重要(2社:B、C)
・あまり重要でない(ゼロ)
・重要でない(ゼロ)
Q4 経理/財務部署の一般社員が、平均的に1日においてExcelを使用している時間の割合はおおよそ何%程度ですか。
・0~20%(1社:D)
・20~40%(1社:C)
・40~60%(3社:A、B、E)
・60%以上(1社:F)
Q5 Excelと経理/財務専用ソフトの使い分けは、どのようになっていますか。
A: 経理や財務は専用ソフトを全社的に利用しているため、基本的にExcelはそのための下準備作業。
B: 会計処理は、全て当社システム。Excelは会計処理の事前集計や決算報告書等の作成。
C: 税務会計業務全般でシステムを利用し、エクセルは基礎データの作成に使用。
D: 主要簿は専用ソフト、補助簿はExcel。
E: 固定資産台帳も含めて主要簿は会計ソフト。以下はExcelで作成しています。
売掛金台帳、退職給与引当金の明細、前払費用の償却明細、税効果会計の計算明細、会計ソフトの仕訳帳や試算表から英文財務諸表への変換、予算書、キャッシュフロー計算書
(参考)クライアントから入手するEXCEL(CSV)データ。給与台帳、売上一覧、マネーフォワードや銀行取引のCSVデータなど。
F:(設問なし)
Q6 経理および財務業務で、Excelで作成するデータ(書類)は、いかなるものが多いですか。重要性の高い順にご記入ください。
A: 経理:下準備作業、財務:下準備作業
B: -
C:会計データに直接使用される基礎資料
D: ①月次の勘定科目の内訳明細(損益科目)、②月次の各勘定科目の金額移動明細(貸借対照表科目)、③勘定科目元帳からデータ切出しによる分析、④簡易な現金出納帳作成、⑤棚卸集計表
E: どの書類というわけではなく、クライアントが持っているデータをいかに効率よく自分の会計ソフトに取り込めるか、逆に会計ソフトのデータをクライアントの基幹システムにアップロードするためにExcelで提供するということが重要。
F:レポート作成および格付委員会用分析資料の作成
Q7 Excelの機能で重要性が高いものを、重要性の高い順に下記より選択のうえご記入ください。重要性が乏しいものは記入しなくてけっこうです。
【基本関数(四則演算など) IF関数 VLOOKUP関数 ROUND系関数 SUMIF・SUMIFS関数 COUNT系関数 ピボットテーブル グラフ】
A: ①基本関数(四則演算など)、②ピボットテーブル
B: ①基本関数(四則演算など)、②ROUND系関数、③VLOOKUP関数、④SUMIF・SUMIFS関数、⑤ピボットテーブル、⑥グラフ
C: ①基本関数(四則演算など)、②ROUND系関数、③ピボットテーブル 、④SUMIF・SUMIFS関数
D: ①基本関数(四則演算など)、②ROUND系関数、③IF関数、④VLOOKUP関数、⑤COUNT系関数、⑥SUMIF・SUMIFS関数、⑦グラフ
E: 基本関数(四則演算など)、IF関数が大半を占めて、それ以外も必ず必要な場面がある。グラフはあまり使わない。その他としては、住所一覧から宛名ラベルを印刷するなど手作業を軽減できるテクニックは重要。ExcelデータをWordに貼り付け。ファイルやシート間の連繋で修正があっても迅速かつ正確に対応。
F: ①基本関数(四則演算など)、②IF関数、③SUMIF・SUMIFS関数、④グラフ
Q8 大学卒入社(経理/財務、職業会計人)の際、備えているべきExcelスキルはどの程度のものですか。
A: まったく使えないのでは困るが、簡単な計算式を埋め込めるくらいの能力は欲しい。あとは、社内で教育する。
B: 中程度。
C: 使えるにこしたことはないが弊社では必須ではない。基礎的なスキルがあればよい。
D: 最低限の知識。集計表における月々の縦横の集計ができる。関数は業務に伴って習得。
E: 質問7の基本関数(四則演算など)とIF関数は必須ですし、経理・会計事務所向けのExcel教本はひととおり実際に触ってやっておいた方がよいですが、あとは実務に合わせて覚えていけばよい。私はできませんがマクロができるとよいけどExcel力が高いとその手の仕事が多くなるので要注意。
F: データ入力、データ加工、グラフ作成。
Q9 Excelスキルについて、会計職(経理/財務、職業会計人)を目指す大学生にアドバイスがあればお願いいたします。
A: Excelに限らず、PCに慣れ親しんでいることが重要。ただし、会計職(経理/財務)で早期の昇級・昇進を目指すのであれば、Excel能力はきわめて重要。
B: CSVデータ加工や集計作業や作表ができるとよい。
C: 使えるにこしたことはないので、エクセルスキル向上に興味がある方はぜひ取り組んでほしい。
D: 市販されているExcelを使った各種集計、表作成の本を購入して実例を基に練習をしておくと役に立つ。
E: Excelを触ったこともないという方は、まずは家計簿をExcelで作ってみるのもよいですね。所得税の申告書の流れをExcelで再現するとか。(BIG4など外資系会計事務所はExcelで英文の課税所得計算の明細を作成して提供しています。独自の申告システムから自動作成ではありますが、自分でやってみるとExcelも英語も勉強できます。私もやりました。)
F: データ分析といってもすべての関数を使いこなせる必要は全くありません。グラフ化は必須です。
アンケート結果は以上です。
後編では、「英語」について、同様にアンケート結果をふまえてアドバイスしますので、ぜひ参考にしてください。
後編(明日公開予定)へ続く
【執筆者紹介】
石山 宏(いしやま・ひろし)
大学卒業後 専門学校(税理士・公認会計士受験)専任講師、上場会社(経理・IR)勤務を経て,松本大学松商短期大学部准教授,東京国際大学商学部准教授,山梨県立大学国際政策学部准教授,現在,同大学教授。
著書に『検定簿記講義/2級商業簿記〈2022年度版〉』(分担執筆,中央経済社,2022年),『27業種別 簿記・会計の処理と表示』(分担執筆,中央経済社,2021年),『スタートアップ会計学(第3版)』(分担執筆,同文舘出版,2022年)ほか。