税理士になったからわかった! 科目免除大学院のメリット・デメリット


税理士 はらすけ

【編集部から】
税理士になる方法の1つとして、大学院で修士論文を執筆して科目免除を受けるという選択肢があります。
「大学院ルート」を考えている方にとっては、そのメリットやデメリットは気になるところではないでしょうか。
そこで今回、ご自身も大学院を修了して税法科目免除を受け、そのブログ「おじ部」が受験生から人気の税理士“はらすけ”さんに、大学院進学のメリット・デメリットを教えていただきました。

こんにちは、税理士の「はらすけ」です。

税理士試験も終わり、試験の手ごたえによっては大学院への進学を検討されている方もいらっしゃると思います。

今回は、私が感じた大学院へ進学するメリット・デメリットを、実体験を踏まえてご紹介します。大学院進学に興味がある方は参考にしてみてください。

税理士試験の科目免除制度とは?

はじめに税理士試験の科目免除制度について簡単に説明します。

税理士試験の科目免除制度とは、大学院において「会計」又は「税法」に属する科目を一定単位修得し、かつ修士論文が認められることにより、税理士試験の試験科目の一部が免除される制度です。

「会計」の場合:会計科目1科目が免除
「税法」の場合:税法科目2科目が免除

私の周りで大学院に進学した税理士を見ると、「税法2科目の免除」のみ利用するケースが圧倒的に多い印象です。

◆実際の「免除決定通知書」

大学院に進学するメリット

家族を安心させられる!

私が感じた1番のメリットは「家族を安心させられたこと」です。

税理士を目指すと決意したとき、税理士になれるのかどうか不安でしたが、家族は私以上に不安を感じていたようです。

当時は30歳。両親からは「資格取得よりも早く結婚して落ち着いてほしい」と、ときどき言われていました。ですので、私の税理士試験は家族からの反対を半ば押し切るかたちでスタートしました。

勉強開始から2年後、私は財務諸表論と大学院に合格しました。

ちなみに、税理士試験での戦績は以下の通りです。

3年目以降は簿記論と消費税法で予想以上に苦戦したものの、2年目で5科目のうち3科目に目処がついたことで、そばで見守る両親に大きな安心感を与えることができたと思います。

大学院に進学し、目に見える成果を早期に示せたことは、私自身にとっても家族にとっても大きなメリットでした。

コミュニケーション能力が向上する!

コミュニケーション能力が向上したこともメリットの1つです。

コミュニケーションとは「会話や文章で意思・思考を伝達すること」。専門性が高い会計や税務の世界では、情報を素人の方に間違いなく伝えることが非常に難しいです。

私は、大学院で修士論文を作成する過程で、物事をわかりやすく正確に伝える技術を学ぶことができたと感じています。

修士論文では、自分の主張を根拠となった文献を引用しながら、読者に論理的にわかりやすく説明する必要があります。

指導教授から「意味がわからん」「論理が飛躍している」などの指摘を受けながら、何十回も修正を繰り返し、なんとか修士論文を完成させました。

大学院に入るまで、作文くらいしか書いたことがなかった私にとって、貴重な勉強でした。

それは、補助金申請業務でも活きました。申請書の作成で重要なことは「申請者のプロジェクトを審査員にわかりやすく伝えること」です。

大学院で勉強した甲斐もあり、「事業再構築補助金」の申請書作成業務において3件の採択をいただきました。その他にも十数件のコロナ関連補助金で採択されています。コロナの影響で経営が苦しい飲食店・ホテル関係のお客様からはとても喜んでいただけました。

会話であれ文章であれ、「情報を相手に間違いなく伝える」というコミュニケーション能力は実務において非常に重要です。それを大学院で学べたことはメリットだと思います。

大学院に進学するデメリット

学費の工面に苦労することも……

私が通っていた大学院は2年で約200万円の学費が必要でした。

奨学金を借りるという手段もありましたが、できるかぎり借入はしたくなかったので、所有していた自動車を売却し、なんとかお金を作りました。

また、当時の私は「独身・実家暮らし」という非常に恵まれた環境にあり、それもあってなんとかしのぐことができました。

大金が必要になるということは、大学院進学の大きなデメリットだと思います。

時には会社を辞める必要も……

私が住んでいる地域はどちらかというと田舎で、進学できる大学院の選択肢も限られていました。

唯一の大学院が「平日昼間の開講」だったため、やむを得ず会社を辞めることに……。会社に勤めながら大学院に通うことができれば、金銭的な負担や家族に与える不安も少なく済んだと思います。

ただ、私は異業種から税理士への転身を考えていたので、遅かれ早かれ会社を辞める運命にありました。

アルバイトをしながらの通学でしたが、2年間しっかり税理士試験の勉強もできたことを考えると、それほど大きなデメリットではなかったかもしれません。

大学院進学を迷っている皆様へ

人にはそれぞれの立場や事情があるので、「官報合格」がいいのか「科目免除」がいいのか、明確な答えを出すことはできません。

私が最後に1つお伝えしたいことは、今から5年後、10年後に自分がどうなっていたいのかを具体的にイメージしていただきたいということです。

将来の具体的なイメージがあれば、自分に合ったベストな選択ができるはずです。

次回は、ブログで「【2021年全国一覧】税理士試験の税法免除・会計免除が可能な大学院」を作成した経験を踏まえ、大学院選びのポイントをお伝えします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【執筆者情報】

限りなくブラックに近い中小企業を30歳で退職後、税理士試験の勉強を開始。約6年かけて税理士になる。現在は地方にある会計事務所に勤務中。

運営ブログ:おじ部(社会人が税理士になるためのブログ)

ツイッター:@ojibu2020

インスタグラム:ojibu2020


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