昨日終了した今年の税理士試験。いよいよ次は夏の採用シーズン到来ですね!
しかし、ここまで本試験準備に集中してきた受験生は、就職活動・転職活動についてわからないことも多いと思われます。
そこで、多くの受験生の就職・転職をサポートされてきた株式会社大原キャリアスタッフの佐々木優子さん・宮崎愛子さんに、就職活動・転職活動の進め方についてお話を伺いました。
1回目の本記事では、まず何をすればよいのか、用意するべきもの、アピールすべきポイントなど、“はじめの一歩”として知りたい情報をお届けします。
2回目「自分に合った事務所の選び方とは?」はこちらから。
【プロフィール】
佐々木 優子(ささき ゆうこ)
キャリアコンサルタント
株式会社大原キャリアスタッフ コーディネーター
これまでに3,000名近くの就職・転職相談を行い、大手・準大手税理士法人を中心にコーディネーターとして人材紹介業務に携わる。的確なアドバイスと親身さに定評がある。
宮崎 愛子(みやざき あいこ)
キャリアコンサルタント
株式会社大原キャリアスタッフ コーディネーター/渉外
簿記の受験生から税理士官報合格者まで幅広い相談に対応。また、企業の窓口も担当しており、採用側の動向やニーズを踏まえたアドバイスが高い評価を受けている。
まずは就職イベントへ! スピード感をもって動きましょう
――税理士試験が終わった今、まだ就職活動や転職活動が手付かずの方に向けて、まずは何をすればよいのか教えてください。
佐々木 まずは就職イベントに参加しましょう。参加することで、求人状況や、どんな人が就職活動をしているのか肌で感じることができます。そうすると「何かしなければいけない」と奮い立ちますし、1社でも話が聞ければ情報が得られます。まずは就職に対するスイッチを入れるため、手ぶらでもいいのでイベントに行くのが一番です。採用する側も直前まで試験があるのはわかっているので、履歴書などを持っていかなくても、その場でアンケートなどに答えて、話ができることも多いです。受け入れ態勢は整っているので、あまり身構えず、まずは行動してみましょう。
宮崎 十分に準備したほうが安心感はありますが、準備に時間をかけすぎてしまい、志望先の募集が終わってしまう可能性もあります。採用する側としては、「まずは応募の意思表示をしてほしい」という気持ちもありますので、第1アクションとして勇気を出してイベントに飛び込んでみることをおすすめします。
――スピード感をもって動くことが大事なんですね。実際、一般的な就職活動より短期間で進んでいくと思いますが、選考フローやスピード感はどのようになるのでしょうか。
宮崎 いわゆる事業会社の選考より短期間で選考が進み、通常は書類選考に1週間、通過したら日程を調整して面接までに1週間、面接から結果が出るまで1週間、と3週間ほどで内定が出る方が多いです。事業会社の面接が2~3回と考えると、税理士業界の就職・転職活動は「一発勝負」という印象があるかもしれません。ただ、そもそも受験生は税理士の仕事がしたいと思って税理士法人や会計事務所に応募しているので、求職者も採用者も根底にある条件は一致しています。ですので、あとは相性が合うか合わないか、それを面接で見ていく流れですね。
用意するもの、服装で気をつけること
――就職活動を始めるにあたって、用意するべきものはありますか?
佐々木 まずはリクルートスーツ、そして必ずしもイベントに持っていかなくてもいいと話しましたが、応募時には履歴書や職務経歴書が必要になります。職歴がない方だと自己PR書を作る方もいます。サークル活動やアルバイトなど学生時代に頑張っていたものがあれば、自己PR書を1枚作ったほうが採用側にも人柄を伝えやすいと思います。もちろん勉強に専念してきた方は、履歴書だけで十分です。
――履歴書や職務経歴書を書く際に気をつけたほうがよいことはありますか?
宮崎 たとえば、大学を卒業した年月や資格を取得した年月など、数字の正確性には注意しましょう。数字を扱う仕事に就く以上、業界としても特に数字の正誤には敏感なので、きちんと確認することが大事です。また、和暦と西暦が混ざってしまう方もいるので、必ず統一するようにしてください。
――服装で気をつけることはありますか?
佐々木 最近は特に暑いので、クールビズにしたいところだと思いますが、そこは事務所によりけりです。オンライン面接の場合は、男性も女性も上着はしっかり着る必要がありますし、対面の場合は先方からの指示に従うのが無難です。「クールビズでかまいません」と指示がある場合は、クールビズにしましょう。ただ、指示がない場合も想定し、上着と男性ならネクタイを常備しておくと安心ですね。なお、大原で開催する就職面談会は「クールビズ」でご参加ください。
夏のほうが就職・転職のチャンスは大きい!
――そもそも夏に就職活動をしたほうがよいのか、合格発表後にするべきなのか迷っている方も多いと思います。夏の採用活動の特徴はありますか?
佐々木 夏の場合、まだ結果が出ていないので、応募する側も採用する側も「合格している体」で動くことになります。たとえば、募集要項で「2科目以上に合格」とあったとき、すでに2科目に合格している必要があるのか、それとも今年の試験で2科目に合格すればよいのかは事務所によって違いますが、夏のほうが「曖昧でも」「ダメもとでも」応募できる場合が多いです。さらに夏のほうが求人数も圧倒的に多いので、チャンスが大きいと思います。
宮崎 実際に夏は、「できれば○科目に合格してから就職活動を始めたいけれど、まだ結果が出ていなくてどうすればよいかわからない」という相談がとても多いです。これに関しては、厳密に科目数を制限として設定しているところもあれば、目安として考えているところもあり、意向が様々なので「合格するつもりで頑張りました」と自己アピールをしてチャレンジしてみてください。
佐々木 夏に活動するか冬に活動するかは、ご本人の経済状況も大事な判断ポイントです。たとえば、「大学卒業後すぐに働かなければいけない」とか「奨学金を返済しなければいけない」といった理由で、なるべく早く正社員で働きたい方もいると思います。その場合、「冬の求人数が少ないときに活動するリスクを負えるかどうか」という問題があります。単純に夏のほうが求人数は多いので、今応募できるところに応募するほうが就職の確実性は高まります。
宮崎 すぐ就職しなければいけないのか、合格科目をある程度増やしてから就職したいのか、「自分自身が何を一番に考えるか」で、夏に動くか冬に動くかは決まってくると思います。単純に「就職・転職活動のしやすさ」というよりは、「何を第一に優先したいか」で考えるといいですね。
――合格科目数によって、働き方や与えられる仕事に違いはありますか。
佐々木 基本的に違いはありません。ただ、合格するまでの道のりは残り1科目なのか残り3科目なのか、そこは違ってきますよね。残り科目数が多いほうが勉強の時間が必要となります。しかし、残り3科目でも残り1科目でも仕事量は同じなので、「あとどれくらい勉強と仕事を両立しなければならないのか」という大変さは、ご本人の感覚によって変わってくると思います。
宮崎 採用側が「合格科目が多い人がいい」と言うのはなぜなのかというと、「仕事に集中できるようになるまでの道のりが短い人がいい」からです。わかりやすくいうと、受験科目が残っている人は、試験直前に早めに帰ったり休暇を取得したりして、仕事に充てる時間が必然的に減ると思います。ただ、雇う側としては、「仕事に集中してほしい」という思いがあるので、なるべくそのゴールに近い人が来てくれたほうがいいということですね。
――新型コロナウイルスの感染がなかなか収まりませんが、求人状況や選考スタイルに変化はありますか?
宮崎 新型コロナウイルスの感染が始まった2020年は、事務所も様子を見て採用を抑えていた印象はあります。ただ、ここ最近は徐々に緩和されてきて、抑えていたぶんの反動が出ています。もともと人手不足の業界なので、それを改善するため、求人数も増えてきました。選考スタイルとしては、オンラインで面接を終わらせる事務所もあれば、採用がある程度確定した段階で直接会って面談を行う事務所もあります。やはり準大手~中小は「実際に会って人となりを知りたい」という意向が強いです。Big4(デロイト トーマツ、EY、KPMG、PwC)でも、「法人の雰囲気を知りたい」という声に応えて、オフィスツアーや実際に会って面談する機会を設けているところもあります。
自分をどうアピールする?
――業界未経験の場合、どのようにアピールしていくとよいでしょうか。
宮崎 経験がないのは仕方ないことですし、最初は誰しも未経験なので、経験がないことをマイナスに思う必要はありません。経験がないのであれば、「他の部分で何ができるのか」を見つけていきましょう。税理士の仕事というと、書類を作成したり整理したり“事務仕事が多い”というイメージがあるかもしれませんが、お客様と対話し、そのお客様の悩みに寄り添うことが一番大事なスキルだったりします。いわゆる「コミュニケーション力」といわれるものですね。経験のない方は、この「話す力」「聞く力」をアピールするのがよいと思います。
佐々木 若い方であれば、将来性があることはアピールポイントになります。まったくの異業種から転職する方も、これまでの仕事で得たスキルや税理士の仕事に活かせそうな経験をアピールしてください。「経験がないから」と不安になってしまう方も多いですが、どんな仕事であっても全部つながっているので、今までの経験からアピールポイントを見つけていけば大丈夫です。
――経験者の方は、どのようにアピールしていくとよいでしょうか。
佐々木 経験者の方は、「何をしたいか」が明確になっているからこそ転職されるはずです。たとえば「小さい事務所から大きい事務所に移りたい」「事業承継に携わりたい」など、目的が明確になっている方だと転職活動はうまくいきます。単に今の職場に不満があって、それを解消するために転職活動をしても、他の事務所にもそれなりに大変なことがあるので、期待するほど環境は変わらないことが多いです。経験してきたからさらに経験を積みたいのか、経験していないからやってみたいのか、それによってもアピールポイントは変わってきますが、目的さえしっかりもっていれば、転職活動はスムーズになると思います。
宮崎 やはり1つの事務所でできることは、その規模感にもよりますが限られてくるので、何がしたいか、目的意識を明確に伝えることが大切です。また、経験者の方の場合、自分自身のやり方や今の事務所のやり方など、仕事のスタイルがある程度確立していると思いますが、同じ業務でも、その事務所のやり方があるので、それに柔軟に対応できるかどうかをアピールすることも大切です。
――現在、大学院に進学する方も増えていますが、就職・転職活動ではどのように受け取られるのでしょうか。
佐々木 今は事務所側も推奨しています。税理士試験は年に1回しかないので、なかなか合格できずに仕事に集中できないのであれば、「大学院に通い、余裕をもって業務に必要な知識を勉強していく」というのも1つの選択肢だと思います。ただ、大学院では深く突き詰める勉強をするので、広く全般的な知識は自分で補充していかなければいけません。5科目合格でも、自己啓発として試験合格後に勉強される方もいると聞きます。「試験に合格するための知識」と「実務で使う知識」を別に考えて学習を続けていく、その姿勢はアピールする必要があると思います。
――ありがとうございました!
2回目「自分に合った事務所の選び方とは?」はこちらから。
【イベント情報】
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日時:2022年8月6日(土)13:00~16:00
会場:ベルサール渋谷ファースト(渋谷駅徒歩8分)
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