税理士業界への就職・転職〈2022 夏〉 ②自分に合った事務所の選び方とは?


税理士試験が終わり、先週末に就職・転職イベントに参加された方も多いのではないでしょうか。

これから本格的に就職・転職活動が進むと、「どの事務所に応募すればよいのか」と悩む方も増えると思われます。

そこで、多くの受験生の就職・転職をサポートしてきた株式会社大原キャリアスタッフの佐々木優子さん・宮崎愛子さんに、事務所を選ぶ際のポイントについてお話を伺いました。

※1回目の記事はこちらから。まず何をすればよいのか、用意するべきもの、アピールすべきポイントなど、“はじめの一歩”として知りたい情報をお届けしています。

【プロフィール】

佐々木 優子(ささき ゆうこ)
キャリアコンサルタント
株式会社大原キャリアスタッフ コーディネーター
これまでに3,000名近くの就職・転職相談を行い、大手・準大手税理士法人を中心にコーディネーターとして人材紹介業務に携わる。的確なアドバイスと親身さに定評がある。

宮崎 愛子(みやざき あいこ)
キャリアコンサルタント
株式会社大原キャリアスタッフ コーディネーター/渉外
簿記の受験生から税理士官報合格者まで幅広い相談に対応。また、企業の窓口も担当しており、採用側の動向やニーズを踏まえたアドバイスが高い評価を受けている。

ミスマッチを防ぐには? 受け身ではなく積極的な姿勢で!

――事務所を選ぶ際のポイントを教えてください。

宮崎 まずは求人票だけではなく、その法人や事務所のホームページまでしっかり読み込みましょう。そこには「代表や所長の先生がどのような考えをもっているのか」が書かれていると思いますので、その考えや意見に共感できるのかがポイントです。求人票や採用ページから読み取れない場合は、面接で自分から聞くのも1つの手です。「向こうから質問されて終わり」ではなく、自分も知りたいこと、聞きたいことをあらかじめ用意しておきましょう。それにより、ミスマッチは防ぐことができます。

佐々木 質問も「自分が何を重視しているのか」によって変わってきます。たとえば、アルバイトがいいのか、正社員として働きたいのか、それによって聞くことは変わるはずです。「早く試験に合格したいので勉強に集中できるようにアルバイトがいい」という方は、同じような方がどのように工夫して働いているのかを質問されるとよいと思います。正社員として働きたい方は、正社員で合格した方はどれくらいいるのか、繁忙期はどのようにやりくりしているのかなど、自分が事務所に求めるものを自分本位にならないように伝えられるように、準備したほうがよいですね。

――自分に合った事務所かどうか見極めるための情報源やツールがあれば教えてください。

佐々木 今の話にもつながりますが、まずは求人票や採用ページをたくさん見ることです。そうすると、基本的な応募条件のほかに、一生懸命メッセージを書いている先生と書いていない先生がいて、採用に対する熱意や事務所の雰囲気などもわかると思います。好き嫌いの話になってしまいますが、そこで「いいな」と思えるなら、自分に合った事務所だと思います。わからない単語も多く出てくると思いますが、求人票や採用ページをしっかり見ることで、志望動機の作成にもつながっていきます。

求人票や採用ページで事務所の強みをつかむ

――たとえば、大きな仕事をしたい方、いち早く合格したい方、大学院や家事育児などと両立されている方にはどのような事務所が合っているのか、指標があれば教えてください。

佐々木 大きな仕事をしたい方であれば規模が大きい法人、また小さい事務所でもクライアントが多ければ経験を積むことができると思います。早く試験に合格したい方であれば、規模感や業務内容よりは雇用形態を重視しましょう。経験を積みたいのであれば正社員のほうがよいですが、より勉強に集中したいのならアルバイトという選択肢もあります。大学院や家事育児などと両立されている方も、そういった方に向けたメッセージが強みとして書かれているので、まずは求人票や採用ページを参考にするといいでしょう。

――実際に、正社員の経験がある方でアルバイトで応募される方はいるのでしょうか。

宮崎 「正社員で働きながらだとなかなか合格できない、でも絶対に合格して税理士になりたい」という方が、正社員からアルバイトに雇用形態を変えたというケースもあります。その後、合格したら正社員にも戻りやすいので、決して「ブランクができた」と捉えられるわけではありません。このように、柔軟に雇用形態を変えられる業界ではあると思います。

佐々木 このとき、「正社員でもアルバイトでもどちらでもいい」というのは避けたいですね。しっかり働きたいから正社員、勉強したいからアルバイト、ときちんと明確に意思表示することが大切です。そうしないと、採用する側としても、どのような仕事をさせればよいのかわかりません。そこは応募するときに、しっかり線引きしましょう。

「応募しすぎない」ことも大事なポイント

――今は売り手市場なので、複数の事務所に内定をもらうこともあると思います。このような状況を想定し、就職・転職活動で気をつけることはありますか。

佐々木 まずは「他にも受けている」と正直に伝えることです。事務所からも聞かれると思います。第1希望から先に結果が出るともかぎりません。仮に第2希望や第3希望から先に結果が出たとき、「きちんと考えたうえで決めてください」と返事を待ってくれる事務所はいい事務所だと思います。

宮崎 このとき、いつまで返事をすればよいのかは確認したほうがよいですね。期日を特に言われなかったからとほったらかしにして、時間が経ってから返事したときには「連絡がないので内定を取り消しました」となってはもったいないので、コミュニケーションはとるようにしましょう。逆に、他のところも受けていて、そこの結果がいつ出るかわかっているのであれば、それを踏まえて期日を聞くのもいいと思います。

佐々木 事務所としても、返事を待っている間にもっといい人がいたらその人を優先するかもしれませんし、ここはお互い様なんですよね。並行して選考は進めるものなので、長くても1週間くらいが返事の目安ですね。

宮崎 だからこそ、志望度が高いところに絞って活動したほうがよいですね。目安としては3社くらいで、様子を見ながら進めていくのがちょうどいいと思います。それ以上増えると、応募書類を作るのも面接の日程を調整するのも大変ですし、1つひとつの印象も薄れてしまいます。3社のうち1社がダメなら、また1社を追加する、というように3社を並行するのがよいのかなと思います。

――転職するにあたって、今勤めている会社・事務所を辞めるまでにしておくべきことはありますか。

佐々木 退職の意思を伝えて、辞める日を決めておくことが大事です。今勤めている会社の繁忙期の前に辞めるのか、繁忙期が終わったら辞めるのかなど、調整したうえで、まずは早めに伝えるようにしましょう。

宮崎 転職先がある程度規模の大きな法人だと入社まで半年~1年は待ってくれるところもありますが、受け入れる側もいつから来られるのかは知りたいところなので、退職届けはいつ出さなければいけないのかなどもきちんと調べたうえで、いつくらいに入社できるかを早めに伝える必要があります。辞める側にも入社する側にも、自分が今どのような状況にあるのかをこまめに伝えることが大事ですね。

――ありがとうございました!


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