税理士・会計士・日商1級 絶対落とせない財表理論45ー総復習編⑥:税効果会計


村上翔一(敬愛大学准教授)

*総復習編では9回にわたり、本連載の復習を行います。

Q1 税効果会計は、企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他の利益に関連する金額を課税標準とする税金(法人税等)の額を適切に( ア )することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に( イ )させることを目的とする手続である。

A
ア 期間配分
イ 対応

税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書、一
税効果会計の当初の目的は、当期純利益と法人税等の対応である。

Q2 法人税等の課税所得の計算に当たっては企業会計上の利益の額が基礎となるが、企業会計と課税所得とはその目的を異にするため、収益・費用(益金・損金)の認識時点や、資産又は負債の額に相違がみられるのが一般的である。税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が( ア )として計上され、法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得とに差異があるときは、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に( イ )せず、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことになる。

A
ア 費用
イ 対応

税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書、二・1
課税所得から算定される法人税等と当期純利益が対応しない原因は、その計算基礎となる収益・費用と益金・損金の範囲が異なるからである。

Q3 税効果会計を適用すると、( ア )及び( イ )が貸借対照表に計上されるとともに、当期の法人税等として納付すべき額及び税効果会計適用による法人税等の調整額が損益計算書に計上される。このうち、( ア )は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の( ウ )に相当し、( イ )は、将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、法人税等の( エ )に相当する。

A
ア 繰延税金資産
イ 繰延税金負債
ウ 前払額
エ 未払額

税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書、二・2
当期純利益と課税所得の差異が解消されるとした場合、会計上の税金費用以上の税金の支払いは税金の前払いとなり、会計上の税金費用以下の税金の支払いは税金の未払いとなる。前者を繰延税金資産、後者を繰延税金負債と呼ぶ。

Q4 税効果会計の方法には、( ア )と( イ )が存在し、( ア )が採用されている。( ア )とは、会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額との間に差異が生じており、当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額又は増額する効果を有する場合の差異である( ウ )が生じた年度にそれに係る( エ )又は( オ )を計上する方法であり、計算に用いる税率は、( ウ )の解消見込年度に適用される税率である。

A
ア 資産負債法
イ 繰延法
ウ 一時差異
エ 繰延税金資産
オ 繰延税金負債

税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書、三
繰延法と資産負債法の違いは、把握される差異と適用される税率の違いである。繰延法は期間差異を把握し差異発生時の税率を用い、資産負債法は一時差異を把握し差異解消時の税率を用いる。

Q5 ( ア )とは、会計上の収益又は費用の額と税務上の益金又は損金の額との間に差異が生じており、当該差異のうち損益の期間帰属の相違に基づくものである( イ )について、当該差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額又は軽減額を当該差異が解消する年度まで、( ウ )又は( エ )として計上する方法であり、計算に用いる税率は、( イ )が生じた年度の課税所得計算に適用された税率である。

A
ア 繰延法
イ 期間差異
ウ 繰延税金資産
エ 繰延税金負債

繰延法によって把握された差異は差異発生時の税率により繰越税金資産や繰延税金負債として処理される。当該差異の資産性や負債性を考えると、税率が変更された場合には、適切な金額とはならない。そのため、差異解消時の税率を用いる資産負債法が適用される。

Q6 ( ア )には、当該( ア )が解消するときに税務申告上その期の課税所得を減額させる効果をもつ( イ )と、増額させる効果をもつ( ウ )があり、前者を( エ )、後者を( オ )として処理する。また、将来の課税所得と相殺可能な( カ )等については、一時差異と同様に取り扱う。なお、( エ )については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならず、その( キ )の判断が重要となる。

A
ア 一時差異
イ 将来減算一時差異
ウ 将来加算一時差異
エ 繰延税金資産
オ 繰延税金負債
カ 繰越欠損金
キ 回収可能性

税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書、三
繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)、par.8
繰延税金資産の回収可能性は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得、将来加算一時差異に基づいて、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを判断する(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針、par.6)。

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【執筆者紹介】
村上 翔一
(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他

*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。


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