昨日、第161回日商簿記検定試験(3級・2級・1級)が施行されました。受験された方は、手ごたえはいかがですか?
本記事では、資格の大原で簿記検定の指導にあたっている先生に、受験者数の多い3級・2級で“手ごたえ別”に今後の学習プランを伺いました。
また、2021年度から始まったネット試験の向き不向きやおすすめ教材、合格するために大切な勉強のポイントについても、ご紹介いただいております。
ぜひこれからの学習のヒントを見つけてください!
“手ごたえ別”今後の学習プラン
――昨日の統一試験を受けた方に向け、3級・2級のそれぞれで手ごたえ別に今後の学習プランを教えてください。まず3級は、どのような学習プランが考えられますか。
【手ごたえが十分な場合】
手ごたえが十分だという方は、11月の統一試験またはネット試験に向けて2級の学習をスタートするのが一番よいと思います。まだ試験結果はわかりませんが、万が一合格点に届かなくても、今はネット試験がすぐ受けられます。変に結果を気にせず、2級など別の目標に向かうのがよいですね。2級を目指す場合、6月に学習を始めて11月に受験するくらいが、学習ボリュームとしてはちょうどよいと思います。
【半分くらいしか解けなかった場合】
半分くらいしか解けなかった方は、しっかり仕訳の練習をしてください。第1問は期中取引という日々の取引の仕訳問題ですが、そこに時間がかかった方は、自分がどのような問題を解けないのかしっかり見直しましょう。第3問が解けなかった方は、決算が苦手だと思うので、決算整理仕訳を中心に、同じく仕訳を練習してください。
3級の学習ボリュームであれば、何ヵ月もかけて復習する必要はありませんので、ネット試験で再挑戦し、その後から2級を学習し始めても11月の受験を目指すことが十分可能だと思います。
ただ、3級に合格していなければ2級を学習できないわけではありません。2級は2級で新しい仕訳を学習するので、3級の仕訳がうろ覚えでも2級で挽回できるチャンスはあります。特に決算の仕組みをある程度理解できている方で、なるべく早く2級に合格されたい方は、すぐに2級の学習を始めるのも1つの手だと思います。
【手も足も出なかった場合】
手も足も出なかった方は、腰を据えて勉強し、11月の統一試験に再挑戦しましょう。ただ、11月の統一試験まで5ヵ月近くあります。せっかく勉強した内容も期間が空くと忘れてしまうので、適切なインプット、アウトプットを行い、実力がついたところで、なるべく早くにネット試験を受験することをオススメします。
3級・2級ともに言えることですが、アウトプットの時間をしっかり確保することが大事です。時間の確保が難しい場合は、スクールに通うのも1つの手だと思います。学校を使うとなると必ず勉強する日ができ、それを最低ラインとして、「じゃあ、別の日は復習しよう」といった学習のペースが生まれます。1人で学習することが難しい方は、ぜひスクールの利用も検討してみてください。
――2級の学習プランはいかがですか。
【手ごたえが十分な場合】
手ごたえが十分だという方は、3級と同じく11月の統一試験に向けて1級の学習をすぐ始めましょう。仮に合格していなくても、今はネット試験ですぐに再挑戦できます。知識が100残っている状態で次の級を受験したほうが合格可能性は高まります。
【半分くらいしか解けなかった場合】
半分くらいしか解けなかった方は、第2問以外を優先的に見直してください。2級の特に第2問は何が出るかわからず、出題バリエーションが豊富なため対応が難しいという特徴があります。まったく解けなかった項目をしっかり復習し、「今度こそ」と思って再挑戦しても、別の項目や形式で出題されることもよくあることです。
第2問を除けば80点満点ですが、だいたい60点を安定して取れるようになれば、本番では第2問で半分しか正解できなくても合格点に届きます。特に工業簿記は、出題傾向がかなり安定しています。第2問以外である程度の点数が取れるようになるまで、アウトプットを繰り返してください。
ネット試験か、統一試験か? ポイントは「計画性」
――ネット試験の話がありましたが、貴校でもネット試験を受ける受講生は増えていますか?
増えています。ネット試験が始まった去年は、まだ「簿記=紙の試験」のイメージが強く、お問い合わせがあったときに「実はネット試験もあるんですよ」と伝えたら驚かれることもありました。最近は、あらかじめ知っていて、お問い合わせをくださる方も多いです。
また、統一試験を目標に学習していたけれども、自信がついたので力試しにネット試験を受けたら、統一試験の前に合格できた、という方もいます。以前に比べると、ネット試験はかなり浸透してきていると思いますよ。
――ネット試験と統一試験で向き不向きはありますか?
ネット試験がいつでも受験できる一方で、統一試験は6月・11月・2月に試験日が設定されています(1級は6月・11月のみ)。
ネット試験が向いている方は、ある程度自分で計画を立て、その計画通りに学習を進められる方です。淡々と勉強を進めて、十分に実力がついた段階で受験を申し込むことになるので、計画通りに勉強できないと、いつまで経っても「試験日」がやってきません。
逆に統一試験に向いている方は、計画を立てて勉強することが苦手な方です。統一試験の場合、受験を申し込むと1ヵ月前くらいが「直前期」となります。明確な「試験日」があることで、締め切り効果が生まれ、この直前期に点数を一気に伸ばす方も多くいます。統一試験だと自然に「直前期」が設定されるので、計画を立てるのが苦手だったり難しい状況にある方は、統一試験の方が向いていると思います。
「簿記」は「体育」!? アウトプットが何より基本
――ネット試験か統一試験かを問わず、3級に合格するために大切なことは何ですか?
前提として、どの級でもアウトプットが重要です。簿記は正確な会計報告をするための記録の技術です。よく大学生などに話すのですが、高校の学習科目でどれが簿記に一番近いか・・・、「体育」だと思うんですね。
たとえば野球で、「こういうルールですよ」「こうすると上手くなりますよ」とアドバイスがあったとします。簿記で言うと、「この順番で仕訳するといいですよ」といったものですね。
しかし、野球も簿記も、実際に上達するかどうかは、自分がどれだけ練習したかにかかっています。野球の分厚いルールブックを読んでも上手くはなりませんよね。簿記も同じで、テキストを読むのも大事ですが、それはあくまでルールを勉強するのが目的です。上達するためには、練習がまず基本になります。
そのうえで3級ですが、仕訳のルールを体に染みつかせることが大事です。試験時間が60分しかありませんので、「これが借方だっけ? 貸方だっけ?」などと考えていると、まず解き終わりません。問題を読んで仕訳を頭に思い浮かべ、それを解答欄に落とし込むことを迅速に行っていく必要があります。
実際、第1問の仕訳だけで45点です。第3問も結局は仕訳ができるかどうかです。仕訳のルールが書かれたページを100回読むのではなく、何度も練習することが重要です。
――2級はいかがですか。
2級は、工業簿記が追加されて単純に学習ボリュームが増えます。そのため、まずは2級全体の学習を一通り終わらせることが大事です。
というのも、1つひとつを完璧に理解しようとすると、「連結会計」などの項目でつまずいたときに、先に進めなくなるんですね。それが嫌になって学習自体をやめることもあるので、もったいないです。
まずは2級の全体像を知るために、商業簿記・工業簿記を一通り学習してください。「連結会計」など理解があやふやなままの項目もあるかもしれません。それでも、とりあえず次に進みましょう。
そうすると徐々に全体像が自分の中でできあがり、「商業簿記のほうが好きだな」とか「連結会計が苦手だな」とか、得意不得意がわかってきます。また、「この項目とこの項目は実は似ているな」と繋がりが見えてきたりします。
そのなかで、何をどう勉強すればよいのかわかってくるので、まずは一通り学習して2級の全体像をつかみましょう。
効率的な学習ができる! 資格の大原“イチオシ”教材
――これから簿記を勉強する方におすすめの教材はありますか?
『大原で合格る日商簿記』シリーズ(中央経済社)です。特に2級をはじめて学習する方におすすめです。2級の学習範囲が広いということは、どうしてもテキストも分厚くなってしまいます。しかし、この『大原で合格る日商簿記』は、「最後までやり遂げられる教材」をコンセプトに開発したものなので、解説をわかりやすくコンパクトに収録しています。2級の全体像を把握する意味では、最適な教材だと思います。
また、少し前に簿記を勉強していて久しぶりに勉強を再開する方にもおすすめです。2級を勉強したいけれど3級を忘れてしまった方は、『大原で合格る日商簿記』を使えば、短時間で効率的に復習できると思います。
■『大原で合格る日商簿記』(中央経済社)
3級
2級(商業簿記)
2級(工業簿記)
さらに本書では、仕訳の説明にもこだわっています。頭で理解するより手が動くようになることが大事なので、「借方と貸方のどちらから仕訳したほうがよいか」「どういう手順で仕訳が構成されているのか」を丁寧に示しています。
文章だけではつまずきやすいところには解説動画もついているので、それを見ながら学習することも可能です。
――アウトプットにも効果的ですか。
付録として「オリジナル模擬問題」と「ネット試験体験プログラム」1回分がついているので、基本を学んだ後に試験の感覚をつかんでいただけると思います。ネット試験が不安な方もこれ1冊あれば、不安を解消できるのではないでしょうか。
また、項目ごとに演習問題がついているのも本書のポイントです。「読んで終わり」ではなく、基本の理解から練習までスムーズに学習することができます。たとえば、移動の電車内で問題を読んで仕訳をイメージするだけでもよい練習になると思いますよ。
本書で足りない場合は、資格の大原の「模擬試験プログラム」がおすすめです。3回分あり、何回でも挑戦できます。また、問題のシャッフル機能があるので、何度も解いた方も、新鮮な気持ちで練習できるのではないかと思います。本番の試験は解答が出ないのですが、「模擬試験プログラム」の場合は、解答・解説と間違えた箇所がわかるようになっています。
また、資格の大原では「でるもん」という問題集も提供しています。『過去問分析より徹底予想! 試験に出る問題集』を略してそう呼んでいるのですが、統一試験・ネット試験の出題傾向を踏まえたうえでの各問対策・本番シミュレーション問題2回分が収録されており、さらにネット試験体験プログラムが1回分ついています。
新しい級の勉強を始める方も、手ごたえを感じられず再挑戦する方も、ぜひ「アウトプット」を第一に、自分に合った教材を見つけて合格を勝ち取ってください。
――ありがとうございました!
〈お話を伺った専門学校〉
資格の大原
簿記、公認会計士、税理士、社労士など会計・法律分野の資格試験から医療・介護福祉、情報処理、公務員試験まで様々な分野で受験指導を行う。難関資格試験でも多数の合格者を輩出し、特に公認会計士と税理士の合格実績には定評がある。また、近年では地方公会計や農業簿記の分野にも力を入れている。「就職の大原」としても著名であり、資格取得後の就職を見据えた受験指導を行っている。
お問い合わせ:https://www.o-hara.ac.jp
Twitter:https://twitter.com/o_hara_boki