この春、会計士試験“はじめの一歩”を踏み出そう! 「ギャル会計士おりさ」が大学生に送るエール


公認会計士 栗林利紗

【編集部から】
4月、新しく何かを始めるのにピッタリな季節。
大学生のなかには、公認会計士試験に興味をもつ方もいると思われます。
しかし、試験の難易度や先行きの不透明さから、受験を足踏みしてしまう方も少なくありません。
そこで、皆さんが最初の一歩を踏み出すことができるように、マルチに活躍されている公認会計士の栗林利紗先生にアドバイスをいただきました。

はじめに

皆さんこんにちは! “ギャル会計士おりさ”こと栗林利紗です。

新年度って、気持ちが切り替わって何かを始めるのにはピッタリの季節ですよね。

皆さんのなかには、公認会計士試験の勉強を始めてみようかな、と思っている方もいるのではないでしょうか。

でも、「自分なんかが難関試験に合格できるのか」「合格できなかったときのことを考えると一歩目が踏み出せない」など、挑戦する前から悩んでしまうというご相談をよく受けます。

たしかに、“三大国家資格”と言われる、決して簡単ではない試験に挑戦することはリスクが高いと感じる方も多くいらっしゃるかもしれません。

私自身は「必死に勉強すればいつかは受かるでしょ!」と、わりと安易な気持ちで勉強を始めており、最初はあまり悩まなかったというのが正直なところ。しかし、本格的に勉強を進めるにつれ、先の見えない不安に私も何度も襲われました。

しかし、このハードな勉強期間を乗り越えて会計士となり、自分の好きなことにチャレンジができている今、あのときを振り返ってみると、この資格取得を目指したことは本当にいい決断だったな、と改めて思います。

この記事では、公認会計士試験に挑戦しようとしている方から寄せられるお悩みをいくつかピックアップし、私の実体験をもとにお答えしていきたいと思います!

まずは小さな一歩からスタートしてみよう

合格しなかったときのリスクを考えると、なかなか踏み出せません。

会計士になりたい気持ちが強いのなら、「受からなかったらどうしよう」ではなく「最短で受かるためにはどうすればよいか」を考えましょう。

誰でも合格できる試験であれば「会計士」という資格の価値も下がってしまいます。難関資格だからこそ、得られるメリットがとても大きい。だから挑戦する価値があるのです。

なかなか一歩目を踏み出せない場合、私の対策は2つあります。

1つ目。いま自分のなかで、なんとなく不安に思っていることに対して、それが起きたらどうするかを決めておくことです。

私の場合は大学4年生から勉強を始めたので、大学院に進学することをすでに決めていました。大学院在学中に合格することを目指していましたが、もし在学中に受からなかったとしても、合格するまで続けることは決めていました。

不安要素の1つに「既卒」になったら就職で不利になるのではないかという問題がありましたが、会計士の就職状況を調べたり、先輩の話を聞いたりするなかで、新卒・既卒を問わず大手監査法人に入れる、という事実に辿りつきました。

もし在学中に合格しなくても、既卒で監査法人を受けよう。そう決めておくことで、余計なことをあれこれ考えず勉強に集中できるようになりました。

実際に、私は在学中に論文試験まで合格できませんでしたが、既卒でも無事、大手監査法人の内定をいただくことができています。

2つ目。スモールステップで始めること。

いきなり会計士の勉強を始めるのではなく、まずは簿記の勉強から始めてみましょう。自分が本当に勉強できるか自信がないという方は、3級から始めて1級までチャレンジしてみてください。

合格できたら自分に自信がつき、これなら会計士の勉強も頑張れそう!と思えます。

「自分が合格まで頑張れるのか不安だ…」とずっと立ち止まっているよりも、小さな成功体験を積み重ねることで自信がついて、手の届かないところにあった目標への道筋が見えてきます。

◆大学院の修了式。短答式試験しか受かっていない状態だったので不安でした。顔が笑っていませんね(笑)

時間を「犠牲にする」ではなく「投資する」と考える

会計士に憧れますが、サークルやアルバイトといった大学生活も楽しみたいと思っています。大学生活を全て犠牲にしないと合格は難しいのでしょうか?

アルバイトやサークルなど大学生活を充実させながら合格した方もいれば、ずっと勉強に没頭していた方もいて、合格者同士で話しても、このエピソードはかなり分かれるところです。

私の場合は、勉強を始めて最初の頃はアルバイトもしていましたし、週末は友達と遊んだりもしていました。

ただ、なかなか成績が上がらないことに対する不安や、試験に一刻も早く合格したいという焦りを強く感じてきたので、完全にスイッチを切り替える必要があるな、と思うように。要領がいいタイプではなかったので、遊びも含めた全部を“こなす”ことが余計なストレスになってしまったのです。

本当はオシャレしたいからアルバイトで稼ぎたいし、友達と“映えランチ”もしたい……なんて思っていましたが、合格してからでもできることだととらえ、ある時期から「勉強に没頭」派になりました。

友人のなかには、定期的に飲み会の予定を入れて、その時間まで集中して勉強していた子や、週末は勉強以外のことを楽しんでいた子もいます。

何かを犠牲にすることから考えるのではなく、まずは自分の生活リズムに合わせて勉強のスケジュールを組んでみましょう。

私は前述のように20代前半の約2年間はずっと勉強していたので、それ以外の記憶がほとんどないのですが、遊ばなかったことを後悔したことは一度もありません!

遊んでいた記憶は時間とともに薄れていきますが、手に入れた資格は一生のものなので、時間を勉強に投資してよかったです。

自分で覚悟を決めたら、最後までブレずに一直線!

いま大学3年生で勉強を始めようと思っているのですが、4年生になったら就職活動も一応したほうがいいのでしょうか。

周りが“就活モード”になると不安になりますが、会計士を目指すと決めているのであればブレないことが大事です。就職活動のことは考えなくてもいいのではないかと思います。

ただ、こんな偉そうなことを言いながら、私も当時、周りで就職活動が一気にスタートしたときに不安を感じ、合同就職説明会に行ったこともありました。

いざ参加してみると、何の準備もせずにフラッと来た私と真剣に就職活動をしている方たちとの間に大きなギャップが。それに、企業の説明を聞いても全然ピンときませんでした。

この状況で就職活動をしてもいい結果にはつながらないだろうし、もし本気で内定がほしいなら、就職活動にも時間を割かなければいけないことを痛感しました。

自分の限られた時間をどう使うかを考えると、自分を安心させるためだけの就職活動は時間を無駄にしてしまいます。それに気づいてからは、勉強に専念することを決めました。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」。一度決めた信念は貫きましょう。

◆同級生が就職活動をしているなか、私は受験専念の道を選びました! 結果、1人だけ浮いています(笑)

会計士の勉強をしたいと親に相談したら、「就職しなさい」と反対されてしまいました。

私も父から反対されました。会計士試験は難しいから絶対受からない、と思われていたからです。

今では笑い話ですが、挑戦したいと言って、なぜ怒られるのかと、当時号泣したことを覚えています。

ただ、自分のことを本気で考えてくれている人から反対されたとしても、自分の人生は自分のもの。

自分で決めたことをやるだけやって、ダメだったら諦めもつくかなと考え、私は受験を決めました。

反対している父には迷惑をかけないように、そして借りもつくらないように(笑)、奨学金を借りての受験です。

納得してもらうには結果を出すことが一番だと思い、反骨精神で頑張りました。結果、短答式試験に受かってからは父も応援してくれるようになりました。

あのとき、父の言うとおりに諦めていたら、挑戦しなかった後悔が残り、父に一生ネチネチ文句を言っていたかもしれません(笑)。

自分がやりたいことを反対されるのは自分を否定されるようでつらいと思いますが、後悔しないためにも、最後は自分の意志で決めるのが一番です。

「女性会計士」のニーズはどんどん高まっている!

女性の受験生が少ないと聞きましたが、女性でも活躍できる業界なのでしょうか。

もちろん! 同じ資格を持っているうえで男女差はないため、女性の働きにくさを感じたことはありません。

また、監査法人時代には、子どもをもつ女性会計士も多く、小さいうちは時短勤務をしていました。出産を経ると仕事に復帰しにくい業界もあるのかもしれませんが、会計士業界でそう感じたことはありません。

監査法人でバリバリ働くのが苦手!という場合は、事業会社の経理部や税理士事務所など、自分のライフスタイルに合った仕事を選ぶこともできます。選択肢が多くあるのも会計士の大きな魅力のひとつです。

私も今年から日本公認会計士協会の女性会計士活躍促進協議会の委員に就任し、女性の会計士を増やすための施策に取り組んでいます。

どうしても男性社会というイメージが強いのですが、性別に関係なく自分の可能性を広げられる資格なので、その魅力を伝えていきたいです。

社会全体でダイバーシティが求められるなか、多方面から女性会計士のニーズは高く、チャンスもたくさんあります!

◆現在は独立して、主に会計事務所の経営と講師をしています。大好きなオシャレも楽しんでいます♪

さいごに

挑戦することはたしかに怖いし、弱気になってしまいますよね。

でも自分が会計士になったことを想像してください。ワクワクしてきませんか? 

世界を駆け巡るビジネスパーソンになっている姿や自分の会計事務所をもっている姿、キラキラした自分が頭に浮かぶのではないかと思います。

理想の自分へのはじめの一歩を踏み出しましょう!

〈執筆者紹介〉
栗林 利紗(くりばやし・りさ)
栗林利紗公認会計士事務所所長/株式会社Ri-speKt代表取締役/福島高専非常勤講師/CPA-leaning講師
2014年に公認会計士二次試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに入社。監査事業部、アドバイザリー事業部を経て独立。
インスタグラム(@cpa_risa)、Twitter(@cpa_risa)で会計士の魅力や勉強法について発信している。

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