【新春特別インタビュー】日税連・石原健次専務理事、髙橋俊行専務理事にきく 令和4年度税制改正大綱に示された税理士試験・制度改革と税理士の未来


2 税理士法改正で税理士の仕事はどう変わる?

――今回、受験資格要件の見直し以外にも、税理士制度・業務に大きく影響する改正項目が盛り込まれていますね。特に重要かつ影響が大きいものは何でしょうか?

髙橋 現在、経済社会全体でデジタル化が加速しています。

税理士制度は来年で80周年になるのですが、税理士の業務はもともと手書き・ソロバン等の手計算で行われてきました。それが電卓→コンピュータ→ネットワーク化→DX化と、イノベーションに対応してきました。今回の税理士法改正にはデジタル化に対応するさまざまな項目が含まれていますが、この意義は、以前から現在まであらゆる士業の中で税理士が最もデジタル化に対応しているという自負と、これからも最も対応している士業であり続けたいとの決意の表れです。これが、中小企業の活性化や税理士の業務の改善、ひいては日本経済の発展につながると考えています。

また、今回のコロナ禍でデジタル化は国力を左右することがよくわかりましたが、このデジタル化にさらに対応していくために、紙を前提としていた税理士法を、デジタルが中心となる社会に対応させるための改正も盛り込まれています。

たとえば、「税理士事務所の該当性の判定基準の見直し」が示されています。これは現行の税理士法40条で「税理士業務を行うための事務所を設けなければならない」、そして「税理士事務所を二以上設けてはならない」と規定されていますが、税理士の業務のICT化や働き方の多様化に対応する観点から、今回「税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないこととする等の運用上の対応を行う」ことが示されました。

今、税理士は、事務所という場所にとらわれず、どこでも仕事を行っています。特に、コロナ禍で在宅テレワークという働き方が浸透してきた状況において、従来の事務所概念と整合性がとれなくなってきたため、今回、現状の社会状況に合わせた形にしようということです。多くの税理士にとっては、現状の働き方を追認する見直しになるのではと考えており、また、これから新しく税理士になる方々には、至極当然のスタイルとして受け止められるのではないでしょうか。

石原 髙橋専務が申し上げたように、実は国家資格の中でもっともデジタル化が進んでいるのは税理士なんです。確定申告は当たり前のように電子申告で行いますし、申告業務はほぼ100%電子化されています。

申告業務は税理士の無償独占業務(有償・無償を問わず非税理士により行うことが禁止されている業務)ですが、今回の大綱では「税理士の業務における電子化等の推進」が示されています。つまり、無償独占業務以外の会計業務についても推進していきましょう、ということが示されたんですね。

髙橋 このように、税理士は常にイノベーションに対応し続けてきているんですよ。この点はぜひ強調しておきたい点ですね。

――また、今回の大綱で複式簿記の普及・一般化などの記帳水準の向上に向けた施策が目につきますが、これはどのような背景・意義があるのでしょうか?

髙橋 日本は大福帳の時代から独自の簿記文化がありました。そうした背景から明治に入って西洋の複式簿記が伝わり、いち早く根づきました。

それがデジタル化の進展により、むしろ不透明になってしまった感があります。つまり、複式簿記のしくみなどがわからなくても帳簿や決算書などができてしまうのが現状です。

これでは帳簿や決算書が読めるようにはなりません。会社の数字を把握することは、企業の趨勢を左右、さらには国力をも左右することにつながりますので、今回このように示されたのは、その危機感の表れともいえると思います。

(髙橋俊行先生)

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