【税理士試験 簿記論】合格発表を受けて令和4年に合格するためにすべきことは?


12月17日に第71回(令和3年度)税理士試験結果が公表されました。

簿記論は、受験者数11,166人、合格者数1,841人、合格率は16.5%(昨年は22.6%)と、昨年から大きく合格率が下がりました。

ただ、受験者数は昨年よりも増えており、来年度の試験にチャレンジされる方も多いと思われます。

そこで、資格の大原の野田朋代先生に、当面の勉強のヒントを伺いました。

第71回(令和3年度)の合格率をみて

――今年の合格率について、先生はどのような印象をもたれていますか?

4~5年前までは15%を超える合格率は稀でしたが、過去2回の試験で15%を超えていたため、今回も15~20%を想定しておりました。

今後も15~20%の合格率で推移すると思われます。

合格のためには、試験の難易度にかかわらず、基本的な所でしっかりと点数を取ることが重要といえます。

次に向けて、どのように勉強すべき?

――では、これから当面どのように過ごしていけばよいでしょうか?

今回残念な結果となった方も、次回はじめて受験する方も、まずは「振り返り」を行ってください。振り返る際には、「学習計画」を意識しましょう。

たとえば、今回残念な結果となった方は、「何がダメで、この結果になったのか」を知るために、社会人であれば繁忙期、学生であればテスト期間など、忙しいときにどう過ごしていたかを振り返ってください。

税理士試験に合格できる人は、忙しくても勉強を継続できる人です。合格するためには、繁忙期をどう乗り切るかが重要です。

忙しいから勉強を「しない」ではなく、忙しくても勉強を「する」という方向にもっていきましょう。そのためには、スケジュール帳やアプリを使って、あらかじめ勉強する時間を「見える化」させることが効果的です。

とはいえ、いざ繁忙期になると、勉強すると決めていたのに勉強できないこともあります。しかし、そんな場合、たった5分でもよいので勉強することが大切です。

具体的には、5分で問題をガッツリ解くことはないと思いますので、アウトプットよりはインプットや忘れ止めに細切れの時間を使うとよいでしょう。

特に、今回残念な結果となった方にとっては、「振り返る」という作業はつらいかもしれません。しかし、結果を受けた今だからこそ、より冷静に自分を見つめることができます。

ぜひ今のうちから振り返りやスケジューリングを行っていきましょう。

――「簿記論」という科目に関していえば、どうしていけばよいでしょうか?

今回残念な結果となった方は、基本的な項目から少しずつ復習してください。

基本的な項目というのは、たとえば「有価証券」や「固定資産」、「現金預金」など、比較的簡単な総合問題で毎回出題されるようなものです。

「特殊商品売買」や「組織再編」などの難しい項目も、本試験までには押さえる必要がありますが、まずは基本的な項目から入り、少しずつ特殊な項目の勉強時間を増やしていきましょう。

ただ、タイプが大きく2つに分かれ、本試験後から復習を始めている方もいれば、ここまで勉強を休んできた方もいると思います。

すでに復習を始めている方は、当面は個別問題と総合問題を並行してください。もし、この年内で見つかった苦手項目があれば、それをとことん勉強しましょう。

受験生が次に腰を据えて勉強できるのはゴールデンウィークです。できれば、早いうちに苦手項目を解決したいですね。

本試験後からまったく勉強していないようであれば、ウォーミングアップとして個別問題を中心に解いていきましょう。そして、少しずつ総合問題に移っていってください。

――まずは、基本的な項目や個別問題が大切なのですね。

そうですね。たしかに、総合問題を解くと「やった感」が出て、実際に成績も伸びます。そのため、総合問題をたくさん解くことも大切です。ただ、それだと知識が偏ってしまう可能性があるんですね。

たとえば、有価証券の償却原価法には「利息法」と「定額法」があります。以前、本試験でこの2つを比較するという個別問題が出されました。簿記論の受験生は、こういった“比較モノ”が苦手です。

総合問題では、利息法を使うなら「利息法」という指示、定額法を使うなら「定額法」という指示しかされません。

そのため、項目に関する広い意味での理解力をつけるには、個別問題を解いていく必要があるのです。

税理士試験が競争試験である以上、周りから頭ひとつ抜けるためには、人が解けるところはもちろん、人が間違えるところでも得点しないといけません。めったに見ない項目や出題形式でも、それを練習しないと差はつかないんですよね。

そういった意味で、個別問題でさまざまな出題形式に触れ、項目に関する理解を深めることが大切になってきます。

――春先(3月~4月)までの勉強で意識することはありますか?

これは、受験経験者と初学者で分かれてきます。

まず、受験経験者には「波」がある方が多いので、それを克服しましょう。

「波」というのは、得意と苦手が明確に分かれているということです。合格するためには、苦手な項目をいかにカバーしていくかが大切です。

ただ、苦手な項目に自分では気づけないこともあります。そのため、ひととおり網羅的に問題集を解いてみましょう。資格の大原の教材でいえば、総合問題集の基礎編と応用編をそれぞれ最初から解く、といったイメージです。

1冊の問題集を解くことで、全体的に復習ができるので、そこから「苦手」が見えてきます。

得意な項目があればあるほど、無意識にそればかり解いてしまいがちになるので、そうならないためにも、問題集を一度解いてみることがオススメです。

これは初学者にも同じことがいえるのですが、初学者の場合はさらに、いろんな問題にチャレンジすることも大切です。そのなかで、いろんな解き方を身につけてください。

間違えた問題があれば、なぜ間違えたかを追究し、1回目と同じ解き方でよいのか、別の解き方がないか確認しながら、1題1題を丁寧に解いていきましょう。

仮に問題がスッと解けた場合も、時間が経つと解けなくなることもあります。1回目はそんなに深く考えずにアウトプットできるのですが、2回目だと知識の量が増えているので、本当に1回目の解き方でいいのか、と悩んでしまうんですね。

しかし、それは理解を深めるチャンスです! 「解ければいい」「解けたから次」ではなく、その問題から何を得るかを考えて学習を進めましょう。

――参考となるお話をありがとうございました!

【お話を聞いた人】
野田 朋代(のだ・ともよ)
資格の大原 税理士講座講師
税理士の先生と一緒に仕事をしたことをきっかけに、税理士試験の勉強を開始。働きながらの勉強で挫折しそうになったときに、熱心に励ましてアドバイスしてくれた先生のおかげで合格。自分と同じように困っている方に、合格の喜びを感じていただきたいとの思いから、簿記論・財務諸表論の講座を担当。「解けるようになったよ!」「合格したよ!」の笑顔が見たくて、現在も大原簿記学校で勤務中。

資格の大原 税理士講座ホームページ


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