ようこそ!税理士事務所専門相談室『メンタル飯田』へー第1回 毎日領収書の貼り付け作業ばかりやらされてるんです・・・。


飯田先生のアドバイス

手にした1枚1枚の領収書の中に隠されているストーリーを思い描いてみよう!

単純作業も心がけ次第で仕事の中身が大きく変わるんです!

税理士事務所と一口にいっても、その仕事のやり方はさまざまです。
ITやAIなどのコンピューターが導入されるようになってからはますます多様化してきたといえるでしょう。
巷では領収書を写メするだけで仕訳は不要という触れ込みで税理士に頼まなくても確定申告書を作成できるシステムが発売されたりもしています。

そんな時代にあって、税理士試験に合格して税理士事務所に就職したのに、領収書の整理ばかりやらされているBさんの気持ちはわからないでもありません。

Bさんのお話を聞いて、調理師の免許を取って就職したのに、与えられる仕事は皿洗いばかりと嘆いているのと似ているなって思いました。

「私はお客さんが食べた後の汚れた皿を洗うために料理人になったわけではない!」 と思いながら、いやいやお皿を洗いながら日々過ごすのか、それとも、お皿に少し残ったソースを舐めることで料理長の秘伝の味を盗み、独自の味を研究する日々として積み重ねていくのか。それは、その料理人の心がけ次第だといえるのではないでしょうか。

領収書等の「原始記録」は“経営をうつす鏡”です!

税理士にとって仕事の種はお金が動くことです。誰がいつどんな理由でお金を払う必要が生じたのか? また、それは、税務上必要経費となりうる取引なのか?

今、Bさんが貼り付けようと手にした領収書は、Bさんが手にする前、必ず、お金を受け取った人からお金を支払った人に手渡されたもののはずであり、そこには、必ず、なんらかのストーリーがあるはずです。
逆にいうと、ストーリーが描けない領収書は必要経費に算入できる可能性がかなり低いといえるのです。

私は、かつて税務調査の仕事を26年間行っていたのですが、国税局や税務署の調査官たちは領収書や請求書など、取引をする際にかわされた書類のことを“原始記録”とよんでいました。
税務署に提出された申告書や決算書、あるいは、国税庁がKSKシステムによって収集されたデータと照らし合わせながら調査対象者を選定するのですが、実際に税務調査に赴いた際に重要となるのがこの“原始記録”なのです。

領収書を貼り付けるという作業を続けていると、そのお客さんが、納める税金を少しでも少なくしたい、税金で持って行かれるくれいなら何か物を買った方がいいという考えなのか、それとも、経費を少なくして、少しでも従業員の給料に還元したいという思いを持った経営者なのか。
そのことから、そのお客様はあなたの事務所にとって本当に利益を与える人なのかどうかということまで見えてくると思うのです。

今、与えられた仕事を単に領収書を貼り付けるだけの仕事と思うのか、その経営者の人となりを想像するピースを組み立て再現しているのだと思うのか。同じ作業をするのでも、取り組む姿勢が違うと、その先に見えるものは全く違ってきます。

経営のストーリーを原始記録からイメージできて、「領収書の整理の仕方」を指導できるのが“よい税理士”

さて、「この袋の中に入ってる領収書整理しといてくださいね!」と職員のおばさんから渡された袋の中には、どんな状態で領収書が入っていたでしょうか。
月ごとでもなく、ばらばらな状態で袋に入っていたとしたらどんなことが想定できるでしょうか。

お客様である経営者は、何をどの勘定科目で処理されたか知らないまま、申告書が作成され納税額が算出された可能性があるといえるのではないでしょうか。
Bさんは今すぐに直接お客様と契約して税理士業を営むことができる立場ではないと思います。
だとすれば、今与えられた仕事の中で、自分が理想とする税理士像を思い描きながら仕事をすることを考えてみてはいかがでしょうか。

領収書の整理を税理士がするのではなく、領収書の整理の仕方を指導できる税理士の方がお客様である経営者にとっては、よい税理士といえるのではないでしょうか。

いきなり、自分の意見をいうことは難しいと思います。
勤務年数の長いベテランのおばさん職員に口答えする前に、まずは、今、手にした領収書にも必ずストーリーがあり、その積み重ねが商売となっていくのだということを思いながら、原始記録と対峙してみましょう。するとそこから仕事のやりがいを見出せるかもしれません。

1枚の領収書から取引を復元させる。

どんな仕事も、やっておいて無駄なことはありません。これも経験、試練だと思って取り組みましょう。

探偵も唸る想像力を培うことで、あなたの税理士メンタルが強化されると思います。

<著者プロフィール>
飯田 真弓
(いいだ まゆみ)
元国税調査官”おかん税理士”
飯田真弓税理士事務所 代表税理士
一般社団法人日本マインドヘルス協会 代表理事

◆経歴
昭和57年3月 京都府立城陽高等学校普通科卒業
昭和57年4月 初級国家公務員試験採用(普通科女子一期生)
税務大学校大阪研修所に首席で入校
昭和58年7月~平成20年7月 大阪国税局管内の税務署で勤務
税務調査の最前線で延べ700人あまりの経営者の調査を行う。
平成14年4月~平成18年3月 放送大学教養学部に在籍、卒業
平成20年7月 国税を退職
平成20年9月 税理士として独立・開業
平成24年3月 内閣府の支援事業者に選ばれ一般社団法人を設立し代表理事に就任
国税調査で培ったノウハウと大学、その他で学んだ知識と持ち前の感性で、日本の中小企業とそれをサポートする税理士及び税理士事務所・税理士法人等の企業力(人間力・交渉力・コミュニケーション力・傾聴力)をアップさせるための業務を行う。

◆資格
税理士、産業カウンセラー、健康経営アドバイザー、日本芸術療法学会正会員

◆近況
全国の法人会、納税協会、税理士会、商工会議所、経営者団体で税務調査の講演やセミナーを行う傍ら、個別カウンセリングや傾聴トレーニング、企業に出向きコミュニケーションが活性化し離職率が低下する研修も実施。
2021年2月、NHKあさイチ「ことしの確定申告」を監修。週刊ダイヤモンド2021.5/1.8合併特大号に『持続化給付金、食事宅配、あと一つは?税務署が狙うコロナ禍「三つの急所」』、『元国税調査官が教える 要注意!「ダメ税理士」図鑑』を寄稿。
著書に『税務署は見ている。』、『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社・累計9万部を超えるロング&ベストセラー)、『B勘あり!』(日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむセーフ?アウト?税務調査』、『「顧客目線」「嗅覚」がカギ!選ばれる税理士の回答力』(ともに清文社)がある。


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