【税理士試験】資格の大原に聞いた 直前期の「できない」をどう克服する?【会計科目編】


税理士試験も、とうとう直前期に突入ですね! 答練や模試など、より実戦的に問題を解いている頃だと思います。

そんな今は、成長を実感する一方で、苦手な部分や自分に足りないところも見えてくる時期。編集部にも、学習方法や問題の解き方などについて、たくさんのお悩みが寄せられます。

そこで今回は、多くの合格者を輩出してきた資格の大原に、直前期の受験生のお悩みについてインタビューを実施。この記事のアドバイスを参考に、直前期の「できない」を克服していきましょう!

まずは、会計科目編! 大井 健太郎先生(担当科目:財務諸表論)にお話を伺いました。

目 次
【悩み1】問題を解く時間が足りない
【悩み2】計算がすばやく解けない
【悩み3】理論が覚えられない
【悩み4】複数科目を両立できない
【悩み5】試験の雰囲気に慣れない

【悩み1】問題を解く時間が足りない

⇒「終わらない」ことが大前提! 簿記論は個別問題から、財務諸表論は理論から

――本日はよろしくお願いします。直前期になると、「問題を解く時間が足りない」と悩む受験生が多くいます。どのように解答順序や時間配分を見直すとよいでしょうか? まずは、解答順序について教えてください。

大井先生 財務諸表論の場合は、計算と理論のどちらから解いてもかまいません。

ただ、圧倒的に理論から解く方が多いです。覚えてきた内容を忘れないうちに、ということですね。

そのため、計算から解くと、自分が理論を一生懸命に思い出そうとしているとき、周りが計算に移って電卓を叩いている、という状況になり、集中できない可能性があります。計算が得意であれば計算から解いても問題はないのですが、そのような全体の雰囲気には注意が必要かもしれません。

簿記論に関しては、担当講師に聞いてみたところ、総合問題より個別問題から解くとよいそうです。

簿記論の場合、はじめての税理士試験となる方も多く、緊張して試験の雰囲気にのみ込まれてしまう方は少なくありません。そのため、簿記論では、第一問・第二問(個別問題)を先に解き、試験の雰囲気に慣れてから第三問(総合問題)にあたるのがオススメです。

これは、財務諸表論の計算にも言えることで、比較的短い時間で解ける個別問題から取り掛かるほうが、戦略的にも精神衛生的にも安定します。

ちなみに、最近の簿記論は、第一問と第二問のどちらかは簡単でどちらかは難しいという傾向があります。そのため、最初から決めてかからず、それぞれの問題を見て、難易度が低いほうから当たっていくとよいと思います。

――時間配分はいかがでしょうか

大井先生 時間配分を見直す際、まず意識してほしいのですが、簿記論・財務諸表論ともに、時間は基本的に足りません。

最近の財務諸表論だとボリュームがそこまで多くないため、最初から最後まで解けたという方もいますが、基本的には「終わらない」ことが前提になっていると思ってください。

そのため、時間が足りないことに対して悲観的にならず、むしろそれを前提に問題を解いていくことが大切です。

そのうえで時間配分を考えると、財務諸表論の場合、理論に40分はとってもらえればと思います。

というのも、基本的に計算は時間をかければかけるほどできてしまうものです。特に財務諸表論の計算は、難しい専門用語が2~3つ登場したりはしますが、絶対に解けないというほどではありません。

そのため、理論にどれくらいの時間を使うか意識しておかないと、いつまでも計算を解いてしまい、結果として理論にかける時間がなくなります。これは、計算の得意な方が陥りがちですね。

――解けないわけではないので、一度手をつけてしまうと終われない……気持ちはわかります。

大井先生 そうですよね。理論と違って「知らないから解けない」というわけではないので、いつまでもやってしまう。それが危険です。

ちなみに、最近の財務諸表論は理論のボリュームがそんなに多くはないので、理論に40分とっておいたとしても、思ったより早く終わることもあります。その場合は、計算に時間をかければよいのです。

まずは、先ほど述べたように、すべての問題は解き終わらないものと考え、バランスよく解いていくことが大切です。

【悩み2】計算がすばやく解けない

⇒“捨て資料”をつくらず、丁寧に問題を解いて計算力をアップ!

――計算が苦手な方にアドバイスをいただければと思います。「計算がすばやく解けない」と悩む方は多いですが、直前期に計算力を上げるコツはありますか?

大井先生 計算が苦手というのは、言ってしまえば”雑に“問題を解いているということです。基本的に問題は焦って解くものではありません。焦ることがないように、問題の解き方を定着させておく必要があります。機械的に解けるようにしておく、ということですね。普段から丁寧に問題を解くことを心がければ、自然と計算力は上がっていくと思います。

――先ほど「すべての問題は解き終わらない」とおっしゃっていましたが、計算問題はどのように取捨選択していけばよいのでしょうか?

大井先生 まず前提として簿記論・財務諸表論に共通していえるのですが、飛ばしていい(捨てていい)資料は基本的にありません。財務諸表論でいえば、資料が1番から15番まであるなら、15個すべてに目を通す必要があります。

そのうえで取捨選択するのであれば、たとえば「有形固定資産」のような費用対効果が小さい項目、つまり一生懸命解いたところでなかなか正解にたどりつかない項目に関する資料です。

ただ、そのような複雑な資料のなかにも、探せば解ける問題はあります。これは、探す訓練をすることで自然とわかるようになるので、普段の学習から意識しておくとよいでしょう。

――1つひとつの資料に時間をかけず、それでも冷静に目を通すことが大切ですね。

大井先生 そうですね。また、これも簿記論・財務諸表論に共通していえるのですが、最近は資料間に相互関連性がなくなってきています。すべての資料に目を通す必要はありますが、複数の資料を読まないと1つの正解を出せないというわけではありません。

たとえば、Aの金額を求めるため、絶対に資料1・資料3・資料5を関連づけて読まないとダメ、ということではなく、資料1から順々に読んでいったらAの金額がわかる、ということが多くなっています。

そもそも、1つの正解を出すために複数の資料をまたがなければいけない問題というのは、合否に影響しません。一つひとつの資料を淡々と読み、解ける問題を拾っていくことが大切です。

【悩み3】理論が覚えられない

⇒回転数を増やし、一言一句ではなく、広く浅く覚える!

――理論が苦手な方にもアドバイスをいただければと思います。理論に関する悩みといえば、「理論を覚えられない」という方は多いですよね。直前期に理論を暗記するコツはありますか?

大井先生 理論暗記が苦手な方は、広く浅く覚えるようにしましょう。そのためには、回転数が大事です。

たとえば、1週間で7つの項目を覚えるとしたら、1日に1項目を覚えるのではなく、1日目に7項目、2日目も7項目、3日目も7項目……と進めていきます。

1日に1項目を完璧に覚えようとすると疲れますし、覚えたところで次の日には忘れてしまいます。それだと、いつまで経っても暗記が進まないですよね。いちいち振り返らず、まずは先に進むことが大切です。

――なるほど。そのやり方のほうが気持ちも楽ですよね。

大井先生 そうですね。また、専門学校を利用している方だと、出題予定表のある答練は解けるけれど、それ以外の範囲は覚えていないという方もいます。これに関しては、まったく気にしなくて大丈夫です。範囲指定のある答練を解いているのであれば、まずは狭い範囲に絞って暗記を進めましょう。

不思議なのですが、本試験までには、どこを問われても答えられるようになっているものです。今は、目の前のものに集中して暗記を進めてください。

――理論問題はどのように取捨選択していけばよいのでしょうか?

大井先生 財務諸表論の理論の場合、最初から捨ててもいいような問題は基本的にありません。難しい項目でも知っていれば解けますし、簡単な項目でも知らなければ解けないからです。

ただ、最近の流れとしては、空欄をつくらない、これが大前提となっています。いくら考えてもわからないものは、適当にサッと解答を書いて次に進みましょう。そのためにも、不安にならず、自分の知識に自信をもつことが大切です。まったくわからない問題が出されたら、むしろ「時間をかけなくてよくてラッキー」くらいに思ってください。

――「理論を一言一句覚えるべきか」と悩む方も多いですが、どうすればよいのでしょうか?

大井先生 財務諸表論の理論は、一言一句すべて正確に答える必要はありません。

答案作成の何が難しいのかというと、「知っているけれど、どこをどうアウトプットすればよいかわからない」ということだと思います。ただ、何を答えるべきかわからなかったけれど、模範解答を見たら、自分が覚えていた文章だった、ということはよくあることです。

そのため、財務諸表論の理論では、一言一句を完璧に覚えるより、自分が覚えた文章のどこをどうアウトプットすればよいのか判断する力を養ってください。

【悩み4】複数科目を両立できない

⇒会計科目には相乗効果アリ! 「簿記論×財務諸表論」の場合は、続けるのが吉

――複数科目を受験しようとしている方で、どれかがうまくいかず、「複数科目を両立できない」と悩んでいる方もいると思います。このような場合、どうするべきなのでしょうか? 

大井先生 簿記論と財務諸表論を同時に学習しているのであれば、基本的には2科目をやり続けたほうがよいです。簿記論と財務諸表論には相互関連性があるため、同時に学習することで相乗効果が生まれます。たとえ「どちらか1科目しか合格できなそう」「どちらか1科目だけ合格すればいい」という状況であっても、できるかぎり続けることがオススメです。

ただ、切羽詰まってくると、優先順位をつける必要があります。そのためには、答練や模試の点数、順位を見て、自分の位置を把握することが大切です。

たとえば、「簿記論と財務諸表論を受験するつもりだけれど、今年絶対に財務諸表論には合格しないといけない」という方。模試の成績が財務諸表論は上位4割(確実なのは3割)に入っていれば合格できるので、それをキープしているのであれば簿記論に集中、キープしていなければ財務諸表論に集中、と自分の中に基準を決めておくとよいでしょう。

これは、会計科目と税法科目という組み合わせでも同じです。

【悩み5】試験の雰囲気に慣れない

⇒教室でも自宅でも普段から「本番を意識」した学習を!

――答練や模試を受けるなかで、「試験の雰囲気に慣れない」という悩む方もいると思います。このような方は、どのように対応していけばよいでしょうか?

大井先生 たしかに緊張する方は多いと思いますが、それは当然のことです。おおいに緊張してください。

そのうえで試験の雰囲気に慣れるためには、やはり答練や模試を受けて、その独特の雰囲気を体感することが大切です。ただ、これが会場受験であれば試験の雰囲気に慣れることができますが、通信講座を利用している方や自宅受験する方は、なかなか難しいかと思います。

これは、メリットでもありデメリットでもあるのですが、自宅の場合、答練や模試を好きな時間に受験できてしまいます。つまり、万全の態勢で受験できます。喉が渇いているから水を飲んでから始めようとか、トイレに行きたくなったから行ってから始めようとか、「よーし、やるぞ」が可能なわけです。それに慣れてしまうと、本試験で緊張してしまってうまくいきません。

そのため、自宅で受験するとしても、曜日や時間をあらかじめ決めておくのがオススメです。火曜9時から簿記論、12時半から財務諸表論というように、本試験どおりにできればベストかもしれませんね。

――普段から本番を意識した学習が大切ですね。本日は、ありがとうございました!

〈お話を伺った専門学校〉
資格の大原 税理士講座

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