和田 龍馬
(令和2年公認会計士試験合格者)
平均勉強時間3,000~4,000時間。合格者の大半は学生か専念生。
いずれも公認会計士協会や予備校が公表しているデータです。それならば、社会人が公認会計士試験に合格することは不可能なのでしょうか?
私はそうは思いません。正社員であっても、公認会計士試験に合格することは十分に可能と考えます。私は正社員として働きながら、日商簿記3級から1級までの勉強を約1年間、その後、公認会計士試験の勉強を開始し、約1年間で一発合格を果たしました。
この【働きながら公認会計士試験に一発合格した3つのポイント】では、3回に分けて、公認会計士試験の合格に直結したと考えるポイントをご紹介します。
第1回のテーマは、「まずは日商簿記で土台づくり」です。
「会計士に興味がある」「これから勉強してみようかな」という社会人の方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
【私のプロフィール】 ・2020年8月短答、2020年11月論文に合格 ・官公庁系機関に事務職として勤務する20代独身男性 ・試験勉強は平日2時間、休日8時間 ・公認会計士試験、日商簿記1級ではTACの通信講座を利用 ・日商簿記3級、2級は独学(TACの教材を使用) |
まずは日商簿記からチャレンジ!
もし、あなたが「会計士に興味はあるけれど、会計を学ぶのははじめて」という状態であるならば、日商簿記3級から始め、1級までひととおり勉強してみることを強くオススメします。理由は、以下のとおりです。
一つひとつをみていきましょう。
1.財務会計の基礎をじっくりと養える
日商簿記は、大きく「商業簿記」と「工業簿記」に分かれ(3級は商業簿記のみを勉強します)、その内容の大部分は、会計士試験の科目の1つである「財務会計論」と重複します。
会計士試験において、財務会計論は得点比重が最も大きく、「財務会計論を制する者は会計士試験を制する」ともいわれているほどです。そのため、会計士試験に合格するには、財務会計の基礎を身につけていることが必須といえます。
しかし、会計士試験は、財務会計論だけではなく複数科目を並行して勉強することが求められる試験。時間のない社会人にとって、他の科目も勉強しながら、財務会計の基礎力を養うことは、大きなハードルです。
そこで、日商簿記を通じて集中的に財務会計を勉強し、その下地を作っておくとよいでしょう。そうすれば、会計士試験の勉強を始めた後も、他の科目に手を回せる時間的余裕が生まれますし、「財務会計の勉強をある程度は終えている」という精神的余裕をもって勉強を進めることができます。
日商簿記は年に3回あります(2、3級はネット試験を随時実施)。3級から1級までを順に受験する場合、約1年間、勉強を続けることになります。この1年間で、財務会計の基礎をじっくりと養い、会計士試験のための土台を作りこんでおくことをオススメします。
2.会計士に向いているかどうかがわかる
日商簿記の勉強を通じて、「会計士というものに自分が向いているのか」という適性も測ることができます。会計士は、試験合格後も、専門家として会計を生涯学び続けます。その「会計」に対して、自分が少しでも興味をもてるのか、日商簿記を通じて把握することができます。
社会人に限らず、会計士試験への挑戦には、時間と金銭、ともに大きな投資を伴います。日商簿記を通じて会計士の適性を知っておけば、無駄な投資を避けることができますし、また、「自分には会計の道が合っている」という受験の動機づけにもつながります。
私自身、日商簿記3級から勉強を始め、約1年かけて1級までひととおり学習し、そこから会計士試験に挑むことを決意しました。日商簿記の勉強を通じて、会計に対して興味がわいていたこと、勉強の手ごたえを感じていたことが、会計士を目指した理由でもあります。
3.勉強を習慣化させることができる
約1年間の日商簿記の学習は、勉強の習慣化にも役立ちます。
試験直前に集中して勉強するのではなく、毎日コツコツと進めていきましょう。「試験日までに完成度を高めていこう」という意識が、勉強時間を少しずつ増やすことにつながります。
会計士試験では、継続的な勉強が必要となるため、日商簿記を通じて、勉強を習慣化させておくとよいでしょう。
最終目標は“公認会計士試験”の合格
なお、日商簿記の受験は、「合格」を目標としなくてもかまいません。というのも、2級は難化の傾向にありますし、1級は試験回によって難易度がばらつくため、実力があっても不合格となることがしばしばあります。
参考までに、私も日商簿記1級には不合格でした。しかし、1級までの勉強を通じて、財務会計の基礎を養うことができ、また、自分が会計に関心があることもわかったので、会計士試験に挑むことにしました。
日商簿記の合格に固執する必要はありません。あくまでも、財務会計の基礎を養うこと、会計への関心度を測ることが目的であり、最終目標は公認会計士試験の合格であることを忘れないようにしてください。
第2回では、この記事でも少し触れた「勉強を習慣化させる」コツについて、より詳しくご紹介します。ぜひ、続けてご覧いただければ幸いです。