加藤大吾
(公認会計士・税理士)
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
【問い】
次の〔資料Ⅰ〕および〔資料Ⅱ〕に基づき、当期末(X2年3月31日)の貸借対照表の新株予約権はいくらか、求めなさい。
〔資料Ⅰ〕 決算整理前残高試算表
〔資料Ⅱ〕 決算整理事項
1.残高試算表の新株予約権は、当期に発行した新株予約権10個を処理したものであり、1個当たりの払込価額は1,000円である。
なお、当期末に1個が失効したが、未処理となっている。
2.残高試算表の自己新株予約権は、上記の新株予約権のうち2個を、1個当たり2,400円で取得したものである。
なお、当期末現在の新株予約権の時価は1個当たり800円であり、時価の回復の見込みはないと判断する。
【解説】 ※誤りを含みます!
1.決算整理仕訳
(1) 新株予約権の失効
(借) 新株予約権 1,000
(貸) 新株予約権戻入益 1,000
(2) 自己新株予約権の減損処理
(借) 自己新株予約権評価損 3,200
(貸) 自己新株予約権 3,200
(注) 2個×{2,400円(取得価額)-800円(時価)}=3,200円
2.B/S新株予約権(解答の金額)
{10,000円(整理前T/Bの新株予約権)-1,000円(失効)}-{4,800円(整理前T/Bの自己新株予約権)-3,200円(評価損)}=7,400円