みなさん、こんにちは! 「会計人コースWeb」編集部です。
来たる12月18日は、いよいよ税理士試験の合格発表。
いろんな気持ちで合格発表を待っている頃だと思いますが、合格発表が近づいてくると気になるのが、そう、「来年どうしよう?」ということですよね。
今年の結果に自信があってもなくても、まだ科目が残っている方は、「来年どの科目を受けよう?」とか「来年も同じ科目を受けていいのかな?」など、さまざまな疑問や不安を抱えているのではないでしょうか。
そこで、そんなお悩みに応えるべく、「科目選択」をテーマに、普段から受験指導にあたっている先生方にお話を聞いてみました!
「税法科目編」は、税理士&税法講師の梨井 俊先生です。
Q&A形式とし、合格発表後のさまざまなタイプの受験生を想定し、お悩みに答えていただきました。
記事は全3回。
この1回目では、「新しく税法を始めたい受験生」に向けたアドバイスをご紹介いたします。
合格発表後の自分を思い浮かべながら、ぜひ参考にしてみてください♪
会計科目がまだ残っていますが、税法科目を始めても大丈夫でしょうか?
税法を始めること自体は大丈夫です。
むしろ場面や場合によっては「そのほうがいい」です。
とはいえ、ご不安もあるかと思いますので、会計科目を残した状態で税法を始めるメリットとデメリットを簡単にまとめます。
【税法を始めるメリット】
① 会計事務所での仕事内容により近い!
税法上の調整や課税の仕組みを学ぶことは、会計事務所での仕事にそのまま役立ちます。
就職や転職の際も、「ちゃんと勉強している」ことを1つのアピールポイントとして考えてくれる事務所もあります。
② 税理士業務について視野が広がり、興味関心や必要性からモチベーションが上がる!
税理士試験の勉強を始めたばかりの場合、会計科目に対して興味関心が薄い方も一定数いらっしゃるかと思います。
そのような場合、いったん税法を学習し、会計科目の重要度を再認識してから会計科目の受験に戻るのも1つの選択肢です。
③ 講義時間の短い科目もある!
予備校の主なスケジュールとして、会計科目は週2コマ(約6時間)の授業日程が組まれていますが、税法は科目によっては週1コマ(約3時間)の授業日程というもののあります。
そのため、複数科目を受験したり、仕事や子育てをしながらの授業参加・講義視聴もしやすいかと思います。
【税法を始めるデメリット】
① 必修科目がまだ残っているという心理的な不安がある
会計科目を最後に残してしまった場合の心理的負担は大きいです。
スピード勝負の毛色も強いため、最後まで会計科目が残った場合、そのスピード感に追いついていく感覚を取り戻すのに少し苦労するかもしれません。
② 会計科目の成熟した知識が役立つ税法科目が多い
税法のあてはめには、「仕訳」「取引」「利益」など、会計科目の知識が役に立つ場面も多いです。
そのため、会計科目をないがしろにしたまま税法に移ると、会計科目の合格後に税法に移った方に比べて、概要の把握や項目の理解に時間がかかることもあるかもしれません。
③ いわゆる「税法の壁」にぶつかってしまう可能性がある
暗記が多い税法科目の自宅学習は、会計科目とは少し毛色が違います。
また、やはり税法科目は、会計科目に合格してから勉強を始める方が多いのも事実です。
「あの大変だった簿記論・財務諸表論に合格した人がたくさんいるなかで、さらに上位10〜15%に入る(合格する)」ことが本当に大変なことは、現時点である程度想像できるかと思います。
新しく税法を始めます。どの科目からがよいですか?
税理士試験は複数年かけて官報合格までたどり着く方が多い試験なので、いちばんは「合格したい科目」「合格するまで続けられる自信のある科目」です。
ただ、それとは別に、テンプレートの選択類型を挙げますので、参考になれば幸いです。
【受験母数が多いため、予備校のカリキュラムに従って戦略が立てやすい科目】
→消費税法・法人税法
おおむね予備校の成績上位者から順当に合格していきやすい科目です。本試験独特の緊張感と時間配分のミスに対応できるように準備すれば、直前の戦略も立てやすいです。
【だいたいの会計事務所や税理士事務所の業務として使う実務に役立ちやすい科目】
→法人税法・消費税法・所得税法
会計事務所の大きな業務の1つである記帳代行や定期監査は、会計ソフトの入力やその内容確認が肝要です。
仕訳ごとに消費税法の知識は役に立ち、この仕訳の後に作成する法人税や所得税の決算書・確定申告書は、法人税法や所得税法の知識がないと完成させるのが難しいです。
【特徴的な知識を学ぶため場面や場合によっては就職や転職に有利な科目】
→相続税法・酒税法
この2つの申告については、事務所の規模によっては、知識や経験がないとして受けない場合や他に回してしまう場合も多いです。
実際に私は、酒税の含蓄が不足しているため、万が一お付き合いの延長で酒類製造者の申告をお願いされても、責任をもって仕事を受けられないです。
これら特徴的な税法は、法人・消費・所得に比べて「使う場面は多くないぶん、いざ使う必要が出た場合に強い科目」かと思います。
〈お話を聞いた人〉
梨井 俊(なしい・しゅん)
税理士
大手有名専門学校で相続税法の講師を務めるかたわら、月次顧問を主な業務とする開業税理士。大学受験の学習塾で英語講師を8年間務めた経験から、学習法や覚える仕組みを資格試験の勉強にもあてはめ、活用法や座学と実務の違いなど、積極的に情報発信も行っている。
▼梨井先生のブログはこちら!
次回は、「税法を受験した方」に向けたアドバイスをご紹介いたします。