【日商2級から税理士へ ステップアップ会計教室】第17回:債権債務②


渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)


この連載講座では、「日商簿記では学ばないけれど、税理士試験の簿記論・財務諸表論では必要になる論点」を学習します。
簿記論・財務諸表論の学習は広範囲にわたるため、日商簿記では深く学んでいない論点も対策しなければなりません。
税理士を目指して簿記論・財務諸表論の学習を始めた方、「いずれは税理士に」と考えている方は、この連載講座を使って効率的に学習を進めていきましょう。


前回は、「債権債務」について、日商簿記3級レベルの復習を行いました。

今回は、日商簿記検定試験での未学習項目である「為替手形」について解説していきます。

為替手形

為替手形とは、手形の振出人(発行者)が、第三者の支払人(名宛人)に支払いを委託し、手形の受取人(指図人)は第三者から一定の金額を受け取る形式の手形です。約束手形は「振出人=支払人」となりますが、為替手形は「振出人≠支払人」となります。次の設例を使って、為替手形の仕訳例を示します。

【設例】

次の取引について、当社と相手先の各商店の仕訳を答えなさい。なお、仕訳が不要の場合は、借方科目に「仕訳不要」と記入すること。

① 当社は、S商店に商品3,000円を販売し、代金は掛けとした。
② 当社は、U商店から商品1,000円を仕入れ、代金はS商店の引受けを得て為替手形を振り出した。S商店は当社のから為替手形の呈示があったため、これに応じて引受けを行い、U商店は為替手形を受け取った。

【解答】

(単位:円)

① 当社の仕訳
(借) 売掛金 3,000 (貸) 売上 3,000

① S商店の仕訳
(借) 仕入 3,000 (貸) 買掛金 3,000

① U商店の仕訳
仕訳不要

② 当社の仕訳
(借) 仕入 1,000 (貸) 売掛金 1,000

② S商店の仕訳
(借) 買掛金 1,000 (貸) 支払手形 1,000

② U商店の仕訳
(借) 受取手形 1,000 (貸) 売上 1,000

【解説】

まず、為替手形を使う場合は、3人の人物が登場します。為替手形を使う前に、【設例】の①では、当社とS商店で掛け取引を行っています。当社の立場から、S商店に対して3,000円の売掛金を保有しており、その状態からU商店と仕入取引を行い、代金の支払いは為替手形を振り出して決済を行っています。これは、S商店の承諾を得たうえで、S社の売掛代金を受け取らない代わりに、S商店がU商店に当社の仕入代金を手形により支払う取引となります。

当社は、S商店から回収できる売掛金1,000円を受け取らない代わりに、U商店から仕入れた仕入代金をS商店に手形で支払い可能か承諾を得ます。S商店がこれに応じれば、当社が振り出した為替手形をU商店に渡して取引が成立します。為替手形の作成には収入印紙も必要ですが、印紙代金の負担を場合によっては支払人が負うこともあります。

練習問題にチャレンジ

練習問題にチャレンジ

【問題1】

次の取引について、当社と相手先の各商店の仕訳を答えなさい。なお、仕訳が不要の場合は、借方科目に「仕訳不要」と記入すること。

当社は、U商店から商品2,000円を仕入れ、代金は掛け代金のある得意先S商店の引受けを得て為替手形を振出した。S商店は当社のから為替手形の呈示があったため、これに応じて引受けを行い、U商店は為替手形を受け取った。

【解答1】

(単位:円)

・当社の仕訳
(借) 仕入 2,000 (貸) 売掛金 2,000

・S商店の仕訳
(借) 買掛金 2,000 (貸) 支払手形 2,000

・U商店の仕訳
(借) 受取手形 2,000 (貸) 売上 2,000

【問題2】

次の取引について仕訳しなさい。

① 当社は、仕入先から商品300,000円を仕入れ、代金のうち200,0000円は同店受取り、得意先引受けの為替手形を振出し、残額は掛けとした。なお、仕入れに要した諸掛6,000円は現金で支払った。

② 得意先に商品120,000円を売上げ、代金を得意先振出し、AA商店を名宛人とする為替手形を受取った。

③ 仕入先に対する買掛金につき、仕入先振出し、BB商店受取りの為替手形70,000円の引受けをした。

④ 商品90,000円を売上げ、代金は自己(当店)振り出しの約束手形を裏書譲渡された。

⑤ 得意先の売掛代金60,000円の回収として、自己(当店)振り出しの為替手形を裏書譲渡された。

【解答2】

(単位:円)

①の仕訳
(借) 仕入 306,000 
 (貸) 売掛金 200,000
 買掛金 100,000
 現金 6,000

②の仕訳
(借) 受取手形 120,000 (貸) 売上 120,000

③の仕訳
(借) 買掛金 70,000 (貸) 支払手形 70,000

④の仕訳
(借) 支払手形 90,000 (貸) 売上 90,000

⑤の仕訳
(借) 受取手形 60,000 (貸) 売掛金 60,000

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)
千葉商科大学基盤教育機構で准教授を務める傍ら、会計教育研究所「瑞穂会」で税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)と日商簿記検定1級~3級講座を開講し、ともに多数の合格者を輩出している。


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