加藤大吾
(公認会計士・税理士)
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
【問い】
次の〔資料〕に基づき、当期末(X2年3月31日)の貸借対照表の固定負債・投資その他の資産に表示される繰延税金資産はいくらか、求めなさい。
〔資料〕
1.会計上と税務上の差異の状況は、次のとおりである。
(1)会計上、減価償却費100,000円を計上したが、税務上の減価償却限度額は80,000円であり、減価償却超過額20,000円が損金不算入となった。
(2)会計上、交際接待費50,000円を計上したが、税務上は全額、損金不算入となった。
(3)その他有価証券として保有する株式(取得価額200,000円)の当期末の時価は、210,000円である。
2.法定実効税率は30%であり、繰延税金資産の回収可能性は問題ない。
3.繰延税金資産および繰延税金負債の貸借対照表表示は、会計基準に定める原則的な方法による。
【解説】 ※誤りを含みます!
1.決算整理仕訳
(1) 繰延税金資産
(借) 繰延税金資産 21,000
(貸) 法人税等調整額 21,000
{20,000円(減価償却費)+50,000円(交際接待費)}×30%=21,000円
(2) 繰延税金負債
(借) 投資有価証券 10,000
(貸) 繰延税金負債 3,000
その他有価証券評価差額金 7,000
繰延税金負債:
10,000円(評価差益)×30%=3,000円
2.B/S固定資産・投資その他の資産の繰延税金資産(解答の金額)
21,000円(繰延税金資産)-3,000円(繰延税金負債)=18,000円