脳科学とメンタル医学に学ぶ「合格脳」のつくり方


吉田たかよし
(本郷赤門前クリニック院長)

私は日本ではじめて受験生専門の心療内科クリニックを開設しました。脳科学とメンタル医学の両面から受験生を支え、合格を勝ち取るための勉強法の指導にも従事しています。

合格を勝ち取るために重要なのは、勉強を頑張り続けるための基本スタイルを定めることです。なかでも特に大切なのが「勉強の環境」「勉強のスケジュール」「メンタル管理」の三本柱です。

合格のために知っていただきたい勉強ノウハウを、脳科学とメンタル医学の観点からご紹介します。

勉強の環境〜まずは身の回りの整理から〜

勉強するにあたって真っ先に取り掛かってほしいのが、机や本棚といった身の回りの整理です。勉強中の環境が脳機能に与える影響は極めて大きく、成績アップの重要な鍵を握ることが明らかになってきました。いま環境を整備すれば、勉強がはかどりますので、ただちに見直しましょう。

散らかっているのは論外ですが、たとえ見た目がきれいでも、部屋に色々なものが置いてあるだけで意欲や集中力が低下してしまうことも解明されています。コーネル大学(米国)のグループが実験を行ったところ、視野に色々なものが入ると、それだけで誘惑に負けやすく集中力も高まらない脳になる、というデータが得られたのです。

人間の脳内では、「遊びたい」「怠けたい」といった欲望を生み出す大脳辺縁系という部分と、「真面目に勉強しよう」といった意志を生み出す前頭前野が常に戦っています。ところが、余計なものが視野に入ると、その情報処理に前頭前野の機能が使われるので、そのぶん大脳辺縁系の欲望が勝ってしまうのです。

スマホやテレビなど、誘惑の原因になるものは勉強部屋から排除するのが一番です。それが無理なら、布で覆って目に触れないようにすると、それだけで勉強の持続力はアップします。

ちなみに、参考書なども視野に入れないほうがいい場合もあります。色んな科目の参考書が視野に入ると、やはりその認識に前頭前野の機能の一部が割かれるため、勉強に集中する意志が弱くなって、記憶力や思考力の低下も招きます。

実際、クリニックで受験生に問診をすると、「他の科目が気になって目の前の勉強に集中できない…」という悩みをよく耳にします。余計なことを考えないためにも、勉強中は異なる科目の参考書を視野に入れないように、本棚にきちんと整理しておくべきです。

また、本棚に参考書や問題集を整理するときは、科目ごとに並べたほうが有利です。ラドバウド大学(オランダ)が実験を行ったところ、位置情報と結び付けられた記憶は脳内に定着しやすいというデータが得られました。つまり、参考書を読んで暗記するとき、それが本棚のどこにある参考書なのか、位置情報も意識しながら記憶すると脳内に定着しやすいのです。


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