【日商2級から税理士へ ステップアップ会計教室】第9回:特殊商品売買①


4 割賦販売

割賦販売とは、定型的に定めた約款にもとづいて、月賦、年賦その他の分割払方法によって顧客から対価を受け取る販売形態をいいます。
割賦販売は、通常の一般販売とは異なるため、一般販売のように商品などを顧客に引渡した時点で売上を計上しないで、代金を回収した時に売上(販売代金全額ではなく、回収された金額のみ)を計上することができます。

日本の企業会計原則注解6により、①代金回収期間が長期にわたるため、商品引渡後において代金回収費用あるいは、アフター・サービス費などの事後費用がかかること、②分割払いのため、代金回収の危険率(貸倒れが発生する可能性)が高いため、割賦販売は顧客に商品などを引渡した時点で全額を売上に計上するのではなく、代金回収時または代金回収期限日に回収額または回収可能見込額のみを売上に計上するという保守的な会計処理が認められています

また、保守的な会計処理を認める要因として、代金回収費やアフター・サービス費などの引当金計上など特別な配慮が必要と考えられますが、引当金計上は実際に将来の費用が発生するか否かが不確実である場合、見積額も煩雑となる可能性があることも企業会計原則注解6に挙げられています。

割賦販売のうち、代金を回収した時に売上を計上することを回収基準といい、代金の回収期限が到来した日に売上を計上することを回収期限到来基準または履行期日到来基準といいます。
割賦販売による回収基準と回収期限到来基準には、対照勘定法と未実現利益控除法による会計処理があります。

未実現利益控除法とは、期中で行われた割賦販売の総額とそれに対応する売上原価を損益計算書に表示し、期末における割賦代金未回収額を示す割賦売掛金に含まれた未実現利益部分を控除する方法です。
未実現利益控除法での割賦売掛金は、回収期限到来基準を採用している場合、期末までに支払期限が到来している割賦金は未実現利益の対象とならないため注意が必要です。
上述した会計処理以外にも、通常、現金販売価格より割賦販売価格の方が高く、この差額は時間の経過に伴う利息として考え、現金販売価格を割賦売上とし、利息部分は受取利息として会計処理を行う方法もあります。
この会計処理によれば受取利息は損益計算書の営業外収益に表示する科目のため、売上高に計上してはいけないという考え方を重視した会計処理といえます。

取戻し商品
割賦売上債権を保全するため、販売にあたり顧客が代金を支払うことができなくなった場合に、販売品を取戻すという条項を契約書に記載することがあります。
顧客が代金を支払えなくなり、販売品を取戻した場合には、対照勘定法は取立不能として代金未回収額についての備忘記録を消去する仕訳を行います。
前期に販売し取立不能となった債権に見合う商品原価は期首棚卸高の中に含まれているため、取戻した商品についての記帳は不要となりますが、期末には評価替えを行い取戻し品の評価損を計上します。
未実現利益控除法では、前期に販売し、取立不能となった場合は代金未回収額について割賦売掛金勘定の貸方に記帳するとともに、それに相当する繰延割賦売上利益勘定を借方に記帳し、取戻品の評価を行い、その評価額を戻り商品勘定または仕入勘定の借方に記帳するとともに、その原価額との差額を、戻り商品損失勘定の借方に記帳します。
戻り商品損失勘定は損益計算書の販売費及び一般管理費に表示をします。



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