公認会計士・税理士 加藤大吾
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。
難易度 | ★★☆☆☆ |
問題10 固定資産の減損①
【問】 次の〔資料〕に基づき,当期(X1年4月1日~X2年3月31日)の損益計算書の減損損失はいくらか,求めなさい。
〔資料〕
1.当期末において,保有する機械装置(取得価額2,000,000円,耐用年数5年,減価償却方法は200%定率法,残存価額ゼロ,当期末現在2年経過)について,減損の兆候があると判断された。
2.機械装置の残存耐用年数の3年について,割引前将来キャッシュ・フローを見積もったところ,各年につき250,000円のキャッシュ・フローが見込まれ,耐用年数到来時の正味売却価額はゼロと見積もられた。
3.機械装置の当期末の正味売却価額は500,000円である。また,使用価値の算定にあたり,割引率は年8%であり,8%・3年の年金現価係数は2.577を使用する。
【間違いを含む解説】
1.減損損失を認識するかどうかの判定と測定
(1) 機械装置の帳簿価額
① 5年の200%定率法償却率:1÷5年×200%=0.4
② 帳簿価額:2,000,000円×(1-0.4)×(1-0.4)=720,000円
(2) 割引前将来キャッシュ・フローの合計額
250,000円×3年=750,000円
よって,帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを下回るので,減損損失を認識する。
(3) 回収可能価額
使用価値は250,000円×2.577(8%・3年の年金現価係数)=644,250円となるので,正味売却価額500,000円と比較して,大きい方である使用価値644,250円が回収可能価額となる。
2.P/L減損損失(解答の金額)
(借) 減損損失 75,750
(貸) 機械装置 75,750
(注) 720,000円(帳簿価額)-644,250円(回収可能価額)=75,750円
次ページ→ココが間違い!