【論述に強くなる!財表理論講座】第8回:収益認識会計



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

企業は約束した財又はサービスを顧客に( ① )ことにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて,(  ② )を認識する。資産が移転するのは, 顧客が当該資産に対する( ③ )を獲得した時又は獲得するにつれてである。
履行義務を充足した時に又は充足するにつれて,( ④ )のうち,当該履行義務に配分した額について( ② )を認識する。

問題1  
文中の空欄( ① )から( ④ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2  
工事契約について,説明しなさい。

解答

問題1

① 移転する
② 収益
③ 支配
④ 取引価格

問題2

「工事契約」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。

基本的な考え方

・「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう。

・「顧客」とは、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者をいう。

・「受注制作のソフトウェア」とは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制作され、提供されるソフトウェアをいう。

・「原価回収基準」とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいう。

論述問題にチャレンジ!

工事進行基準・工事完成基準とは?

工事進行基準
「工事進行基準」とは,工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。ここに「工事収益総額」とは、工事契約において定められた、施工者が受け取る対価の総額をいう。 また、「工事原価総額」とは、工事契約において定められた、施工者の義務を果たすための支出の総額をいう。工事原価は、原価計算基準に従って適正に算定する。

工事完成基準
「工事完成基準」とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。

工事完成基準の期間損益計算の観点からの問題点とは?

工事完成基準は、工事が完成し引渡した期間に工事収益と費用を認識計上するものであるから、計算は確実であるが、企業の経営努力とその成果を表す費用と収益とが工事引渡時の会計期間に偏在し、各期の経営活動(工事水準)を正しく反映せず、期間損益計算の適正性を欠いている。

履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合は?

履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務について原価回収基準により処理する。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②


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