早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師・公認会計士 加藤大吾
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。
難易度 | ★☆☆☆☆ |
【問題6】商品売買①
【問】 次の〔資料Ⅰ〕および〔資料Ⅱ〕に基づき,損益計算書の売上原価はいくらか,求めなさい。
〔資料Ⅰ〕 決算整理前残高試算表
〔資料Ⅱ〕 決算整理事項
1.期末帳簿棚卸数量は500個(取得価額@1,200円)であるが,決算日に実地棚卸を行った結果,実地棚卸数量は495個であった。棚卸減耗は,売上原価に表示すること。
2.実地棚卸数量のうち,300個について品質の低下により,収益性の低下が認められた。1個当たりの見積売却価額は210円であり,1個当たりの見積販売直接経費は10円であるが,当該品質低下は,自然災害により被災したものであり,多額であると判断する。
【間違いを含む解説】
1.決算整理仕訳
(1) 売上原価の算定(売上原価の集計場所は売上原価勘定とする)
(借) 売上原価 500,000
(貸) 繰越商品 500,000
(借) 売上原価 7,000,000
(貸) 仕入 7,000,000
(借) 繰越商品 600,000
(貸) 売上原価 600,000
(注) 期末商品棚卸高:500個×1,200円=600,000円
(2) 棚卸減耗損
(借) 棚卸減耗損 6,000
(貸) 繰越商品 6,000
(注) (500個-495個)×1,200円=6,000円
(3) 商品評価損
(借) 商品評価損 300,000
(貸) 繰越商品 300,000
(注) {1,200円-(210円-10円)}×300個=300,000円
2.P/L売上原価(解答の金額)
500,000円(期首)+7,000,000円(仕入)-600,000円(期末)+6,000円(棚卸減耗損)+300,000円(商品評価損)=7,206,000円
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