税法科目における過去問活用術
最後に、税法科目における過去問演習についても触れておきます。会計科目(簿財)における過去問の使い方は税法科目にも当てはまります。違いはというと、税法科目は試験委員が変われば問題もガラッと変わることがあります。また、同じ試験委員の間はその試験委員の過去問は有用な資料になりますが、それでも同じ試験委員がまったく同じ問題を繰り返し出す確率は低いです。
あくまでも私見にはなりますが、税法科目については、過度に過去問の傾向分析を行ってもあまり効果はないです。去年出た論点はの重要度を多少下げるというのはいいかもしれませんが、それ以上にヤマを張った勉強は避けるべきです。
私の失敗談
私が受けた事業税は、過去ずっと理論:計算の配点比率が7:3とか6:4という具合に理論重視でした。専門学校にも理論重視とたたきこまれていたので、普段の過去問演習では、理論から解き始めて理論の時間配分を多くしていました。しかし、私が受けた年から理論:計算が5:5と計算の配点比率が急に上がりました。それでも、理論重視で勉強していたため理論から解くクセがついており,理論から解き始めた結果,理論に時間を使いすぎて計算が終わりませんでした。結果はもちろん不合格です。改めて計算から解いてみたら、本試験よりも+10点くらいは取れました。計算に苦手意識がなかったので,本番で思い切って計算から解き始めていれば受かったと思います。2回目は、敗因分析を踏まえて理論・計算のどちらからでも解き始められるように訓練しました。
これは,過去問の傾向を過度に分析したあまり,それが悪いほうに働いてしまった失敗例です。 会計科目と税法科目で過去問を使った勉強法がまったく違うということはないですが、税法科目のほうが試験委員のクセが強かったりします。また、稀だと思いますが、理論と計算の配点比率が変わったりと変化球が多いです。受験生は、そのことを十分注意してください。
おわりに
最後に、税理士試験が終わった今やってほしいことをお伝えします。
来年から簿財を受験する方、次の科目に進む方は、来年受験する科目の問題と模範解答を、時間をあまりかけないで一読してみてください。まだ全然解けないと思いますが、最終ゴール(本試験)がどのようなものかを早めに認識しておきましょう。そうすることで、これから1年間の方向性を誤らずにすみます。また、勉強の進度に合わせて、ちょくちょく過去問を見て勉強の方向性を適宜修正することも大切です。
来年も同じ科目にリベンジする方は、いくつかの模範解答をチェックしてみてください。税理士試験は模範解答が公表されないので、特に記述問題のあたりで模範解答が異なってきます。どの模範解答が一番再現しやすいか検討してみてください。1つの問題に対して複数の解答方法を確認することは、複数の問題を解くより勉強にプラスになります。
税理士試験は長く苦しい側面が強いですが、合格したら人生を変える力がつきます。ぜひ人生をかけて官報合格を勝ち取ってください!
〈執筆者紹介〉
井上 幹康(いのうえ・みきやす)
天気予報もできる理系税理士
大学在学中に独学で気象予報士試験に一発合格。社会人となった後,働きながら4年で税理士試験に官報合格を果たす。開業税理士として税務に従事するかたわら,不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験・不動産鑑定士試験の受験生向け相談サービス,会計学のゼミ(Zoom等での対応可)も開催
▶井上幹康税理士事務所HP(主に実務家向けの記事を掲載)
▶note(主に税理士試験・不動産鑑定士試験に特化した記事(一部有料)を掲載)
※ 本記事は,会計人コース2018年10月号「今日から使える過去問活用術」を編集部で再構成したものです。