会計人は「会計情報」にどう向き合うべきか?


浅野 敬志

信頼できる情報の必要性

このコラムを書いている今も、医療・介護従事者の方々は新型コロナに立ち向かい、日夜診療に追われています。また、確かな情報を伝えるべく、情報発信にも積極的です。京都大学の山中教授は、「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」なる独自サイトを立ち上げ、エビデンス(証拠)に基づく5つの提言を示してくれています。

目に見えないウイルスが相手なだけに、不安になったり油断したりしがちです。でも、信頼できる情報があれば、少しは心の落ち着きを取り戻せるのではないでしょうか。

フェイクニュースの拡散力

会計は情報を扱う学問です。会計を専門とする立場上、インフォデミックを見過ごすことはできません。
 
インフォデミックとは、インフォメーション(情報)とエピデミック(流行)を組み合わせた造語で、フェイクニュースなどが大量拡散される状況をいいます。

フェイクニュースは人を欺くため、あるいは注目を集めるためだけに作られた情報です。「新型コロナの影響でトイレットペーパーがなくなる」といった情報がインターネットやSNSを通じて拡散されましたが、これはフェイクニュースの典型でしょう。SNS普及を背景に、フェイクニュースが拡散されやすくなっています。情報拡散力は2003年(SARS流行時)から68倍に拡大したという分析結果もあります。

事実の追求を習慣づける

権威ある人の名前を悪用してフェイクニュースを信用させようとするケースも見られます。フェイクニュースに踊らされないためにも、「事実(fact)の追求」を習慣づけることが大切です。その際には、日頃から複数の情報を確認すること、そのなかでもファクトチェック(事実検証)の厳しい情報(たとえば、公的機関の情報)の確認を心がけたいものです。これらは、われわれ研究者が論文を執筆する際に日々気をつけていることでもあります。

会計人に求められるファクトチェック

信頼性は会計情報にも求められます。近年では、測定において見積りが必要となる会計項目が増えています。会計上の見積りは人の偏向(バイアス)に影響を受けやすく、それを悪用した会計不正が増えています。

公認会計士は資本市場の番人として、会計情報に信頼性を付与する役割を担っています。監査やレビューに際して健全な懐疑心を持ち、厳しくファクトチェックすることが強く求められます。与えられた情報を鵜呑みにせず、批判的に評価しようとする姿勢は、会計人にとって必須要件といえるでしょう

最後は自分の頭で考える

インフォデミックによる混乱を防ぐために、WHO(世界保健機関)や政府も情報発信をしていますが、瞬時に拡散されるフェイクニュースに対して、正しい情報の拡散が追いついていないように感じます。会計不正についても、公認会計士が十分に監査・レビューしたとしても、その根絶は不可能でしょう。専門家といえども、できることには限界があります。
 
このような状況の中で我々がすべきことは、一人ひとりが受け取った情報の真偽を自分の頭で考えることではないでしょうか。

「最後は自分の頭で考える。」

今はこの習慣をつける良い機会です。引き続き、今だからこそできることに粛々と取り組んでまいりましょう。

<執筆者紹介>
浅野 敬志
(あさの・たかし)
東京都立大学大学院経営学研究科教授、博士(商学・慶應義塾大学)
1973年生まれ。1995年横浜市立大学商学部卒業、2000年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。愛知淑徳大学講師、助教授、首都大学東京(現東京都立大学)准教授、教授を経て現職。日本銀行金融研究所客員研究員、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、日本経営分析学会常任理事を歴任。現在、日本経済会計学会常任理事、日本会計研究学会国際交流委員を務める。著書に『会計情報と資本市場―変容の分析と影響』(中央経済社)ほか多数。

日本公認会計士協会学術賞、日本会計研究学会太田・黒澤賞、日本経営分析学会学会賞、国際会計研究学会学会賞を受賞

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