最後は自分の頭で考える


コロナに負けない!
会計人への応援メッセージ㉕
浅野 敬志(東京都立大学大学院教授)

1 信頼できる情報の必要性

 このコラムを書いている今も、医療・介護従事者の方々は新型コロナに立ち向かい、日夜診療に追われています。
 また、確かな情報を伝えるべく、情報発信にも積極的です。
 京都大学の山中教授は、「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」なる独自サイトを立ち上げ、エビデンス(証拠)に基づく5つの提言を示してくれています。
 目に見えないウイルスが相手なだけに、不安になったり油断したりしがちです。
 でも、信頼できる情報があれば、少しは心の落ち着きを取り戻せるのではないでしょうか。

2 フェイクニュースの拡散力

 会計は情報を扱う学問です。
 会計を専門とする立場上、インフォデミックを見過ごすことはできません。
 
 インフォデミックとは、インフォメーション(情報)とエピデミック(流行)を組み合わせた造語で、フェイクニュースなどが大量拡散される状況をいいます。
 フェイクニュースは人を欺くため、あるいは注目を集めるためだけに作られた情報です。
 「新型コロナの影響でトイレットペーパーがなくなる」といった情報がインターネットやSNSを通じて拡散されましたが、これはフェイクニュースの典型でしょう。
 SNS普及を背景に、フェイクニュースが拡散されやすくなっています。情報拡散力は2003年(SARS流行時)から68倍に拡大したという分析結果もあります。

3 事実の追求を習慣づける

 権威ある人の名前を悪用してフェイクニュースを信用させようとするケースも見られます。
 フェイクニュースに踊らされないためにも、「事実(fact)の追求」を習慣づけることが大切です。
 その際には、日頃から複数の情報を確認すること、そのなかでもファクトチェック(事実検証)の厳しい情報(例えば、公的機関の情報)の確認を心がけたいものです
 これらは、我々研究者が論文を執筆する際に日々気をつけていることでもあります。

4 会計人に求められるファクトチェック

 信頼性は会計情報にも求められます。
 近年では、測定において見積りが必要となる会計項目が増えています。
 会計上の見積りは人の偏向(バイアス)に影響を受けやすく、それを悪用した会計不正が増えています。
 公認会計士は資本市場の番人として、会計情報に信頼性を付与する役割を担っています。
 監査やレビューに際して健全な懐疑心を持ち、厳しくファクトチェックすることが強く求められます。
 与えられた情報を鵜呑みにせず、批判的に評価しようとする姿勢は、会計人にとって必須要件といえるでしょう

5 最後は自分の頭で考える

 インフォデミックによる混乱を防ぐために、WHO(世界保健機関)や政府も情報発信をしていますが、瞬時に拡散されるフェイクニュースに対して、正しい情報の拡散が追いついていないように感じます。
 会計不正についても、公認会計士が十分に監査・レビューしたとしても、その根絶は不可能でしょう。
 専門家といえども、できることには限界があります。
 
 このような状況の中で我々がすべきことは、一人ひとりが受け取った情報の真偽を自分の頭で考えることではないでしょうか。

 「最後は自分の頭で考える。」

 今はこの習慣をつける良い機会です。
 引き続き、今だからこそできることに粛々と取り組んでまいりましょう。

<執筆者紹介>
浅野 敬志
(あさの たかし)
東京都立大学大学院経営学研究科教授、博士(商学・慶應義塾大学)
1973年生まれ。1995年横浜市立大学商学部卒業、2000年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。愛知淑徳大学講師、助教授、首都大学東京(現東京都立大学)准教授、教授を経て現職。日本銀行金融研究所客員研究員、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、日本経営分析学会常任理事を歴任。現在、日本経済会計学会常任理事、日本会計研究学会国際交流委員を務める。
<著書>
『会計情報と資本市場』中央経済社、2018年
(日本公認会計士協会学術賞、日本会計研究学会太田・黒澤賞、日本経営分析学会学会賞、国際会計研究学会学会賞を受賞)
他多数

4つの賞を受賞した浅野先生の研究書!

<バックナンバー>

中国から見たコロナウィルスの進展 (望月 一央・MAZARS パートナー、公認会計士)

税理士・会計士受験生へ:不安に打ち勝って、昨日の自分より今日の自分が一歩でも成長できるように努力しよう!(並木秀明・千葉経済大学短期大学部教授)

会計学からの視点(佐藤信彦・熊本学園大学大学院教授)

新型コロナウイルスの影響で、経営者の打つべき手と緊急融資先(寺嶋 直史・株式会社レヴィング・パートナー代表取締役、 事業再生コンサルタント、中小企業診断士)

公認会計士の資格に内包されていること(百合野正博・同志社大学名誉教授)

受験生へ:効率がアップする自宅学習のヒント(暮木孝司先生)

感染終息の将来を見据えて「認定経営改革等支援機関」としての役割を果たそう!(河﨑照行・甲南大学名誉教授)

有事の今だからこそ心がけたいこと(木山泰嗣・青山学院大学教授、弁護士)

「耐雪梅花麗(冷たい雪に耐えて梅の花は麗しく咲く)」 茂垣 志乙里(税理士)

会計の専門家としての矜恃を持とう!(高橋 賢・横浜国立大学大学院教授)

⑪人の何倍も努力する(弥永真生・筑波大学教授)

現役の公認会計士と公認会計士を目指す諸君へ! (千代田邦夫、公認会計士・監査審査会元会長、立命館アジア太平洋大学客員教授) 

楽しむ「テレワーク」(山本守之・税理士)

自分が理想とする会計人の姿と、税理士試験受験の事前準備(渡邉圭・千葉商科大学基盤教育機構専任講師)

MBA教員が推薦するオススメ書籍3冊―企業内の経理・会計専門家へ向けてのGWの自宅学習の道標!(新井康平・大阪府立大学経済学研究科准教授)

今日の状況は社会の在り方を問う機会ともなっている(安酸建二・近畿大学教授)

新型コロナウイルスとオンライン化(太田康広・慶應義塾大学ビジネススクール教授)

非常時にこそ真価の問われるプロフェッショナル(鈴木一水・神戸大学大学院教授)

言葉を友人に持とう。書を持って、自宅にいよう。(杉本徳栄・関西学院大学大学院教授)

正しくリスク評価ができる会計士になろう!(坂上学・法政大学教授)

6月の日商簿記検定中止をチャンスに変えるためのアドバイス(並木秀明・千葉経済大学短期大学部教授)

変化する者が会計を制す(川野克典・日本大学教授)

㉓ 公認会計士短答式試験3ヵ月延期を前向きにとらえよう!(井ノ川博行先生・公認会計士)

危機の今こそ,経営をより良くする管理会計システムとは何かを問う絶好の時期(飛田努・福岡大学准教授)


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