税理士試験 でるトコ理論にチャレンジ―その2


この記事は、『会計人コース』5月号別冊付録「簿・財 でるトコ問題集2020」より、編集部が再構成したものです。本誌のご購入はこちらから。

4月8日にアップした記事に引き続き、本誌5月号付録から選りすぐりの理論問題(会計基準編)を出題します。

問1 次の利益観に関して,会計目的及び期間利益の計算式を答えなさい。

⑴ 資産負債アプローチ

⑵ 収益費用アプローチ

問2 割引現在価値について,次の問に答えなさい。

⑴ 割引現在価値の計算方法を説明しなさい。

⑵ 割引現在価値によって測定される項目の例を3つ挙げよ。

問3 棚卸資産の評価に関する会計基準(抜粋)について,空欄を埋めなさい。

( ① )(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は,( ② ) をもって貸借対照表価額とし,期末における(  ③  )が(  ②  )よりも下落している場合には,当該(  ③  )をもって貸借対照表価額とする。

 …棚卸資産についても(  ④  )の低下により(  ⑤  )の回収が見込めなくなった場合には,品質低下や陳腐化が生じた場合に限らず,帳簿価額を切り下げることが考えられる。( ④  )が低下した場合における簿価切下げは,( ⑥ ) の下で(  ⑦ )を反映させるように,過大な帳簿価額を減額し,将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理である。棚卸資産の(  ④  )が当初の予想よりも低下した場合において,( ⑧  )まで帳簿価額を切り下げることにより,( ⑨  )に的確な情報を提供することができるものと考えられる。

問4 金融資産を時価評価する必要性について,金融商品に関する会計基準に基づいて3つ挙げなさい。

問5 ①売買目的有価証券の評価差額が当期損益とされる理由,②その他有価証券の評価差額が純資産に直入される理由を説明しなさい。

<解答>

問1

資産負債アプローチでは企業の富の測定が重視され,資産・負債を鍵概念として,その差額である純資産(企業価値)を測定することを主目的とする。そのために,期末純資産から期首純資産を差し引いた額が期間利益とされる。

収益費用アプローチでは企業活動の効率性の測定が重視され,収益・費用を鍵概念として,その差額である当期純利益を測定することを主目的とする。そのため, 収益から費用を差し引いた額が期間利益とされる。

問2

将来の現金収入(純額)を一定の利子率で割り引いた現在価値の総和を求める。

・リース資産
・貸倒見積高(CF見積法)
・回収可能価額(減損)
*他にも資産除去債務,退職給付債務などが測定されている。

問3
①通常の販売目的 ②取得原価 ③正味売却価額
④収益性 ⑤投資額 ⑥取得原価基準
⑦回収可能性 ⑧回収可能な額 ⑨財務諸表利用者
*棚卸資産の評価に関する会計基準第7項,第36項の内容である。

問4
①金融資産の多様化,価格変動リスクの増大,取引の国際化等の状況の下で,投資者が自己責任に基づいて投資判断を行うために,金融資産の時価評価を導入して企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ,投資者に対して的確な財務情報を提供する必要があること。
②金融資産に係る取引の実態を反映させる会計処理は,企業の側においても,取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要であること。
③我が国企業の国際的な事業活動の進展,国際市場での資金調達及び海外投資者の我が国証券市場での投資の活発化という状況の下で,財務諸表等の企業情報は,国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められていること。
*金融商品に関する会計基準第64項の内容である。

問5
①売買目的有価証券は,売却することについて事業遂行上等の制約がなく,時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての財務活動の成果と考えられるため。
②その他有価証券については,事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり, 評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切ではないと考えられるため。
*金融商品に関する会計基準第70項,第77項の内容である。


【会計人コース5月号別冊付録 著者紹介】
千葉経済大学教授・小野正芳
千葉経済大学短期大学部教授・並木秀明


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