4 収益認識会計基準の適用で廃止(または適用できなくなる会計処理)される会計基準等
収益認識会計基準の適用に伴って以下の会計基準等が廃止される。
・ 工事契約に関する会計基準
工事契約は、契約に基づいて収益を計上するため収益認識会計基準に含まれることになる。そのため工事契約に関する会計基準は廃止される。ただし、会計処理は、基本的には従来とおりである。この点に関しては、問題形式で後述する。
・ 工事契約に関する会計基準の適用指針
・ ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取り扱い
特に受注制作のソフトウェアについては「収益認識は工事契約に準ずる。」と規定しているため工事契約に関する会計基準と同時に廃止される。
・ 割賦基準の延払基準(回収基準)の廃止
所要の経過措置を講じた上で、2023年4月以降に開始される事業年度の取引から廃止される。すなわち、この処理に基づく税法上の課税所得計算は認められなくなる。
・ 返品調整引当金の廃止
返品調整引当金制度については、改正法(法人税法)の施行(2018年4月1日)の際、現在の同制度の対象事業を営む企業に対して2030年に開始する事業年度までは損金算入限度額の経過措置が手当てされている。
・ ポイント引当金の廃止
収益認識会計基準の適用に伴い2021年4月以降に開始される事業年度から廃止される。
収益認識会計基準の適用で廃止(または適用できなくなる会計処理)される会計基準等による出題可能性
5 収益認識会計基準の基本的理解
(1)収益認識の5つのステップ
収益認識会計基準における収益は、下記の5つのステップにより認識・測定する。
次の①から⑤のステップを適用する。
① 顧客との契約を識別する(契約の識別)
顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用する。
すなわち「契約がある」ことを前提とする。
② 契約における履行義務を識別する(履行義務の識別)
契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別する。
すなわち、「契約により財またはサービスが移転することが決定」することである。
③ 取引価格を算定する(取引価格の算定)
変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定する。
すなわち、「支払い条件、支払価格が決定」することである。
④ 契約における履行義務に取引価格を配分する(取引価格の配分)
契約において約束した別個の財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分する。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積る。
すなわち、「取引自体に経済的価値があり会計処理の取引価格を決定」することである。
⑤ 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する(収益の認識)
約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足される。
すなわち、「対価の回収可能性が高く、どの会計期間に収益を帰属させるかを決定」することである。
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