【私の独立開業日誌】税理士 伊藤江梨


地元・地方都市での突然の開業

 修行中もまめに地元には帰っておりましたが、何の事業の下地もないところで突然開業したので、まずはいろんなところに顔を出すことにしました。税理士会の会合に参加すると、当時は郡山では最年少で、突然帰ってきて開業した女性はやはりレアキャラで、たくさんの先輩が「だ,大丈夫?」と心配してくれて、いろんな集まりに呼んでくれたり、税理士の役回りを振ってくれたりしました。「時間の余裕があるならこの仕事やらない?」と仕事を手伝わせてくださる先生もいました。税理士会からも「こんな相談があるんですが、対応できますか?」とお話を回していただきました。危なっかしくピヨピヨしていたので、多くの先生が「わからないことや不安なことがあったら、大事になる前に何でも聞きなね」と言って快く教えてくれました。

 地元の事業者の方々も「よく帰ってきたね」と歓迎してくれて、顧問を変えるまでには至らなくても、スポットの仕事を依頼してくださったり、個人でしている小さな事業を一部任せて下さったり、大変暖かく仕事をくださいました。

 おかげさまで無謀に近かった「残り1年で独立して食べていけるようになる」という目標も、かなりの粗食という前提ですがギリギリ達成! と言えなくもない水準にもっていくことができました。

会計の専門家として独立するという働き方

 独立をしてから、力不足や勉強不足を感じることはたくさんあり、謝罪して歩いたり、しょんぼりすることも起こりますが、納得のいかないことを仕方なくやるような仕事はなくなりました。ミスをしても変な言い訳をせずに謝罪して責任を取るという選択肢が取れることは、私にとってはストレスが少なく、良い環境で働けているなと感じます。目の前の人が自分を頼ってくれて、自分が身につけた専門性を生かしてお役に立てることはとてもやりがいを感じます。

 世間では、税理士はAIに取って代わられて「10年後にはなくなる仕事」と言われておりますが、会計の専門知識や経験を生かした仕事の幅は広く、現場を見る限りニーズはまだまだ減らないと感じています。

 地方都市ではむしろ、高齢化と若手の担い手の少なさもあり、もっと多くの会計の専門家が必要であるように感じます。過疎地域に行くほど、専門家が減少し高齢化しているため、新しい事案や特殊な事案に対応できる専門家がおらず、少数の現役世代が一手に引き受けて奮闘しているように見受けられます。

地方での生き方

 郡山は事業者コミュニティがいくつかあり、ネットワークを作りやすい、認知してもらいやすいという利点があります。さらに、コミュニティはいくつかの層に分かれているので、ちょっと合わないなあと思ったら別のコミュニティに、なんてことも可能なところが気楽でよいです。 地方は、古臭いことや遅々として進まないこともたくさんありますが、私にとってバランスのよいところに居場所を見つけられたかなと感じています。

 私もまだまだ学ぶべきことは多いですが、コツコツと勉強と経験を積んで、困難な事案にも対応できる力を身につけて、地域の役に立てる人材になっていきたいなと考えています。誠実な働きに対して地域は温かいですし、郡山に戻ってきてよかったな~と感じています。

 会計の専門家が役に立てるフィールドは広いです。資格取得を達成したみなさまのひとりでも多くが、地方で専門家として腰を下ろしてくださることを心から願ってお待ちしております!

私の事務所
暁経営会計(伊藤江梨税理士事務所)
所在地:〒963-0206 福島県郡山市中野二丁目138番地
HP:http://akatsuki-ma.jp/

私の略歴
1984年 福島県郡山市生まれ
2016年 税理士試験合格
2017年 暁経営会計(伊藤江梨税理士事務所)開業

本稿は、『会計人コース』2019年10月号に掲載したコラムです。

【編集部からのオススメ関連記事】
私の独立開業日誌~税理士 伊藤江梨
私の独立開業日誌~税理士 渡邉朝生
私の独立開業日誌~税理士 金子尚弘
私の独立開業日誌~税理士 峯松麻衣子
私の独立開業日誌~税理士 伊東修平
私の独立開業日誌~税理士 板倉圭吾
私の独立開業日誌~税理士 前川秀和
私の独立開業日誌~税理士 猪田昭一
私の独立開業日誌~税理士 酒井 基
私の独立開業日誌~税理士 小林友博


固定ページ:
1

2

関連記事

ページ上部へ戻る