つぶ問11-2(財務諸表論)―企業結合、事業分離


【解答】

(問1)「取得」とは,ある企業が他の企業に対する支配を獲得する企業結合をいう。他方,「持分の結合」とは,いずれの企業の株主も他の企業を支配したとは認められない企業結合をいう。(85字)

(問2)まず「取得」には,パーチェス法が適用されるべきと考えられる。パーチェス法では被取得企業の資産および負債を企業結合日の時価で受け入れ,取得企業が対価として交付した財産の企業結合日における時価との差額を,のれんまたは負ののれんとして処理する。他方,「持分の結合」には,持分プーリング法が適用されるべきと考えられる。持分ポーリング法では,すべての結合当事企業の資産および負債を,それらの帳簿価額のまま結合後企業が引き継ぐことになる。(213字)


【解説】

 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下,企業結合基準)から,取得と持分の結合,パーチェス法と持分プーリング法に関する基本的な問題を出題しました。持分プーリング法は,現行の企業結合基準では採用されていません(ごく一部の取引にのみ,適用されます)が,企業結合の経済的実態と密接に関連する論点なので,基本事項は理解しておくようにしましょう。

(問1)

「取得」は,通常の資産取得と同様の経済的実態を,企業結合にあてはめる考え方です。資産の取得=当該資産に対する支配の獲得という実態があることから,他の企業に対する支配の獲得=取得のように位置づけます。他方で「持分の結合」は,2つ以上の結合当事企業が単純に1つにまとまるに過ぎない企業結合です。どの企業の株主も他の企業に対する支配を獲得していないことから,資産の取得と整合的に処理することも適当でないと考えます。

(問2)

「取得」には「パーチェス法」が適用されます。「パーチェス」(purchase)とは,「購入する」という意味ですから,文字通り企業を購入したかのように処理をするわけです。企業結合の結果として獲得される収益が,企業の取得原価を上回るなら,当該超過額が利益と考えられます。他方,「持分の結合」では,単純に企業同士の資産および負債を合算するだけの,「持分プーリング法」が適用されるべきと考えられます(「べき」とあるのは,現行制度とは異なる点を考慮した言い回しです)。  

「取得」と「持分の結合」は,持分の継続・非継続という観点から判断されますが,この持分の継続・非継続は非貨幣財同士の交換取引や事業分離でも用いられる,投資の継続・非継続同様の考え方であるという点も,押さえておきましょう。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
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つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
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